第102話「美優の決意」
美優が——柊に、話があると言った。
◇
「柊おじさん——相談があるの」
美優の表情は——真剣だった。
「どうした——」
「私——成仏しようと、思ってるの」
柊は——言葉を失った。
「成仏——」
「うん——」
「なぜ——」
美優は——少し黙った。
「色々——考えたの」
◇
「私——ここで、七年過ごした」
美優が話し始めた。
「お父さんに——会えて、嬉しかった。柊おじさんにも——たくさん話を聞いてもらった」
「美優——」
「でも——最近、思うの。私——いつまで、ここにいればいいんだろうって」
「……」
「お父さんには——新しい家族ができた。弟も——大きくなってる」
美優の目に——涙が浮かんだ。
「私——お父さんの邪魔に、なってるんじゃないかって」
「そんなことは——」
「わかってる。お父さんは——毎週、会いに来てくれる。私のこと——忘れてない」
「……」
「でも——私がいなくなれば、お父さんは——もっと、前に進めるんじゃないかって」
◇
柊は——美優の話を、ゆっくり聞いた。
「それは——美優が、決めることだ」
柊が言った。
「でも——一つ、聞いていいか」
「何——」
「お前は——幸せか」
美優は考え込んだ。
「幸せ——だと思う」
「じゃあ——なぜ、成仏したいんだ」
「お父さんのため——」
「本当に——それだけか」
美優は——黙った。
「美優——お前は、どうしたいんだ。本当は」
長い沈黙が流れた。
「わからない——」
美優は涙を流した。
「わからないの。どうすればいいか」
◇
柊は——美優を抱きしめた。
「焦らなくていい——」
「柊おじさん——」
「ゆっくり——考えればいい」
「でも——」
「お前が——どうしたいか。それが——一番大切だ」
美優は——しばらく、泣いていた。
◇
翌日——柊は美優の父親に連絡を取った。
「美優のことで——お話があります」
「何かありましたか——」
「美優が——成仏を考えているようです」
電話の向こうで——息を呑む音が聞こえた。
「成仏——」
「あなたに——会いたいと言っています」
「わかりました。すぐに——行きます」
◇
美優と父親が——対面した。
「美優——」
「お父さん——」
「成仏を——考えてるって、聞いた」
「うん——」
父親は——美優を見つめた。
「なぜ——」
「お父さんの——邪魔に、なってると思って」
「邪魔なんかじゃない——」
父親の声が震えた。
「お前は——俺の、大切な娘だ」
「お父さん——」
「新しい家族ができても——お前への愛は、変わらない」
父親は涙を流した。
「だから——焦らなくていい。お前が——望む時まで、俺は会いに来る」
美優は——父親の腕の中で、泣いた。
「お父さん——ありがとう」
柊は——その光景を、静かに見守っていた。




