第101話「父としての日々」
柊は——父親になった。
◇
毎日が——新しい発見だった。
陽向の——小さな変化を、見逃さないように。
「今日——笑った気がする」
柊が言った。
「まだ——早いんじゃない?」
玲が笑った。
「でも——笑ったように、見えた」
「親バカね——」
「そうかもしれない——」
柊は照れくさそうに笑った。
◇
仕事と育児の両立は——大変だった。
玲は——育児休暇を取っていた。
柊も——できる限り、早く帰るようにしていた。
「水無瀬さん——お先に失礼します」
「ああ。ゆっくり——」
田所が笑顔で見送った。
「赤ちゃん——元気ですか」
「元気だよ——」
「よかったです——」
◇
帰宅すると——陽向が待っていた。
「ただいま——」
柊は陽向を抱き上げた。
「今日は——どうだった?」
玲が言った。
「仕事は——順調。陽向は——?」
「よく寝てた。ミルクも——たくさん飲んだ」
「よかった——」
柊は陽向を見つめた。
「大きくなれよ——」
◇
夜中——陽向が泣いた。
柊が——起き上がった。
「俺が——行くよ」
「ありがとう——」
玲は疲れていた。
柊は——陽向を抱いて、あやした。
「どうした——お腹すいたか」
ミルクを作って——飲ませた。
陽向は——満足そうに、また眠った。
「よしよし——」
柊は——しばらく、陽向を抱いていた。
◇
ある夜——柊は考え込んでいた。
父親として——何を、伝えられるのか。
自分の父は——柊が子どもの頃、あまり家にいなかった。
研究に——没頭していた。
「俺は——違う父親になりたい」
柊は呟いた。
「陽向と——たくさん時間を過ごしたい」
玲が——隣で言った。
「そうしようね——」
「玲——」
「柊は——いいお父さんになってるわよ」
「そうかな——」
「そうよ。陽向も——柊が大好きみたい」
柊は——少し、安心した。
◇
週末——柊は陽向と散歩に出かけた。
ベビーカーを押しながら——公園を歩いた。
「いい天気だな——」
陽向は——周りをキョロキョロ見ていた。
「何を——見てるんだ」
木々、空、鳥。
すべてが——新鮮なのだろう。
「お前には——世界が、どう見えてるんだろうな」
柊は微笑んだ。
「教えてくれよ——いつか」
陽向は——小さな声を上げた。
それは——答えのように、聞こえた。




