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【完結】妖精と呼ばれた転生令嬢は今度こそ恋をしたい  作者: ごんちゃん


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18/19

(18)本当のエタ

更新遅くなりました。

エタちゃん、ようやく成長しました!

ただ、一つだけ不安はある。


だってきっとエリーは、私が先祖である妖精姫の魔法が使える、大きくなれると信じて私を選んでくれたはずだ。


それなのに、もしも大きくなれなかったら?


前世より更に幼く見える今の私は、130センチほどしかない。




「でもエリー、私は本当にその魔法が使えるのかしら……もし出来なかったら……?」




共に歩く未来を諦めることになってしまうのではないのだろうか。


せっかく見えた希望が、この手をすり抜けて行ってしまったらと思うと、どうしても一歩踏み出すことに躊躇いを感じてしまうなんて。


恋すると強くなったり臆病になったりするらしい。


少し小さく震えていた私の手を、エリーはその温かい手でそっと包むと、まるで幼い子供に言い聞かせるように、穏やかに囁いた。




「大丈夫、一度長に少しだけ見せてもらったんだ。その時の感覚をちゃんと覚えているから、私がサポートしてあげる。精霊魔法は使えないけど、これでも私は魔力操作は得意だから、ね?」



間近に迫ったエリーの顔を見上げれば、その瞳は少しだけからかうような色が浮かんでいる。


学園でもトップクラスの魔法技術を誇るエリーが、唯一苦労したのが元々はエリーに素養がないと言われていたという治癒魔法だった。


治癒魔法で欠かせないのは、自分自身だけでなく治療する対象者の魔力を操作することであった。


攻撃や防御、身体強化魔法は非常に得意なエリーだったけれど、正にその『魔力操作』にこそ苦労していたことは、本人を除けば私が誰より知っていた。


私を安堵させるためにワザとそんな言い方をしたのだと、鈍い私でも分かってしまった。


生まれつきの素養の少ない系統の魔法を覚える苦労をするより、得意なものを伸ばすほうが遥かに有益だと言われているのに、何故この1年近くエリーがあれほど治癒魔法の習得をしようとしたのか。


まさか、この為だったのだろうか。


ああ、こんな所も好きで、大好きで……せっかくお化粧してもらったのに涙がまたポロリと零れた。


ここまでエリーがしてくれたのに、私が怖気づいてなんていられるわけがないじゃない。




「これでもって……ふふっ、そうね、エリーがそういうなら……私、大きくなってみたい」


「じゃあ……」


「うん…って、あああっ!で、でも!!せっかくエリーにこんな素敵なドレスを贈ってもらったのに、今大きくなったら着れなくなっちゃう!!破れちゃったら破廉恥な惨状にっ!!」




嬉しそうに微笑んだエリーに、コクリと頷こうとした私は、突然とても大切なことに気付いて叫んでしまった。


いやむしろ、気付かなかったらとんでもないことになるところだったに違いない。


大きくなるのは嬉しいけど、今ドレス着てなんならコルセットも締めてますよ、私!!


せっかくエリーに贈ってもらったドレスが破れるから!


大きくなるんなら、せめて帰ってからじゃダメですか。


だって、だって!


初めて貰ったドレスなのに、馬車の中で破れたり、ましてや大好きな人の前で、そんなセクシーハプニングとか一体どんな羞恥プレイですか!?


私の焦った顔がよほど面白かったのだろう。


叫んだ途端に一瞬目を丸くしたエリーは、次の瞬間弾けるように声をあげて笑い出し、目尻に涙まで浮かべている。


笑いすぎじゃないですか?というか、そんな爆笑するエリーを初めてみたかもしれない。




「あはは、エタってば可愛いなぁ。ごめん言ってなかったら心配するよね。大丈夫だよ。そのドレスも靴も君が今身につけているもの全て、実は長たちのところで仕立ててもらったんだ」


「そ、そうなの?破れない?それともやっぱり私、そんなに大きくならないってこと?」


「心配しないで。エタが身につけているものは特別な魔法糸で出来ていて、獣人や妖精みたいに姿が変化してもそれに合せて変化してくれる優れものなんだ」


「えええ!?」




破れないことには安心したけど、そんな不思議な糸があるなんて知らなかった。


でも言われてみれば、妖精や獣人は身体が変化する度に服が破れたりしていては、いくら服が沢山あっても足りないだろうなとは思う。


以前、エリーの家で採寸したけれど、あくまでも着付けした時の寸法を知るためのものだったらしい。


私が知らないだけで、この世界には不思議なものがまだまだ沢山あるのだろう。


いやぁさすが異世界、すごいね!!




「先日の夏季休暇中にも一度長に会ってきたのだけど、長にとっては妹姫の特徴を持って生まれて来たエタのことは、やはり姪のように思っているらしいよ。お願いしたら張り切って準備してくれたんだよ」


「長が?そうだったのね」




妖精姫は、妖精族の長にとって大切な妹さんだったはずだ。


自分の大切な家族が、自分達の元を離れて嫁いで行くだけでなく、自分達とあまりに違う短い時を駆け抜けて逝ってしまったことを、彼らはどう思っているのだろう。


夫となった初代ツヴェルグ当主を恨んだりしなかったのだろうか。


それとも大切な家族だからこそ、幸せに生きる姿を喜んで見守って来たのだろうか。


長にいつか聞いてみたい気もするけれど、きっと答えてはもらえないだろう。


ただ、私が大切な人たちと同じ時間を生きていけるよう、秘術を伝え特別なドレスを仕立ててくれたことを、いつか直接感謝の気持ちを伝えられたらいいなと思った。




「じゃあ、質問はとりあえず終わりかな?パーティーまであまり時間も距離もないからね。このまま手を繋いでやってみようか。いいかな?」


「え……は、はいっ!!」



馬車の窓からチラリと見える景色は、確かにもう少し行けば学園の門が見えてくるであろう場所で、私は少し焦ってしまったのか、令嬢らしからぬやたら元気の良い返事をしてしまった。


まあ、記憶が戻ってからどうにも令嬢っぽい言葉使いが崩れがちなことも自覚しているから今更なんだけども。


エリーの膝に乗せられたまま、腰に回されていた左手が私の左手に添えられて、私はエリーにすっぽりと後ろから包み込まれるようにして両手を繋がれていた。


密着度が高すぎて、エリーの柑橘系のいい匂いに包まれて、心臓が耳の近くに移動して来た気がするんですが…。




「目を閉じて。エタ、自分の中に小さな芽を出している種があるとイメージしてごらん。ふかふかの柔らかい土に守られて少しずつゆっくり育った可愛い若葉だよ」


「芽の出た種……」


「その芽が育つように、ゆっくり呼吸をしながら魔力を少しずつ与えていって?」


「やってみます……ゆっくり、少しずつ」




煩いぐらい高鳴っている鼓動をなんとか落ち着かせるように、ゆっくりと深く呼吸しながら、目を閉じて言われたイメージをなんとか掴もうと集中力を高めていく。


鼓動がゆっくりになるにつれて、お腹の下あたり…子宮のあたりがポワリと温かくなるのを感じた。


不思議と前世で何度か友人に誘われてやったことのある、丹田呼吸法をなんとなく思い出して何度か繰り返してやってみる。


身体の真ん中にあった小さな熱が、体中にツタが葉を伸ばすようにゆっくりと広がっていくのを感じて、肌も日焼けをする時のようなチリチリとした熱を覚えている。




「ああ、いいね。あともう少しだけ、外に漏れている魔力を内側に……そう、それでいい」




肌に感じていた熱が、エリーの心地よく大きな魔力で包まれて私の魔力が身体の内側に収まって行くのが分かる。


本当にエリーはこのために魔力操作を練習して、長から教わったことをきっと何度も繰り返し練習してくれたのだろう。


違和感を感じないスムーズな魔力操作だった。


体中に魔力が満ちて行くのを心地よく感じていると、耳元でエリーがゆっくりと息を吐いたのが分かった。




「エタ、魔法をとめていいよ。ゆっくり目を開いてみて」



呼吸法を通常の呼吸にもどしながら、目をゆっくりと開くと、目を閉じていたせいか窓から差し込む夕日がやけに眩しく感じた。


繋がれた両手に目を落とせば、しっかりと繋がれたエリーの掌に包まれているのは、見たことが無い細い女性の手だ。


軽く左足を持ち上げれば、すらりと伸びた足の先にある靴がさっきまでとは明らかに距離が違う。




「思ったとおりだ。可愛らしい妖精姫が、すっかり美しい令嬢になったね」


「……視界が、高い?」




そう何より、さっきまでとは目線の高さが違っている。


おそらく座った状態ですら10センチ以上は違うだろうと思う。


本当に、大きくなれた……大人の女性になれるんだ。


喜びでいっぱいになりながら、自分の身体を見ていた私が、ある一点を見つめて表情が固まったことに気付いたらしいエリーが、不安げに声をかけてきた。




「どう?気分悪くなったり、どこか苦しかったりしない?」


「大丈夫……だけど、大丈夫じゃない、かも」


「ええ!?どこか痛い?大丈夫?」



横から覗き込みながら尋ねられるけど、別に痛いわけじゃない。


あ、いや……違う意味では痛いといえば痛いけど、心配してもらう類のものではないって分かっている。


分かってるけど、分かりたくなかっただけで。




「エリー、どうしよう…………せっかく成長したのに」


「うん?」


「胸が……」


「胸?胸が苦しいの?!」


「違うの。胸が……残念なレベルでしか成長してない」




前世から念願の大人の女性に成長できたことは、踊りだしたい程に嬉しいことは間違いない。


でも、でもですよ?


どうせ成長するならって思ってしまうのは贅沢なことでしょうか、神様!!




「え?!……あはははっ、エタってば!もう、心配したでしょう?」


「えええ、だって令嬢としては大事な問題でっ!」


「そうかもしれないけど、一番に気にする所がそこなんだ?」




まさか、身長はどうやら30センチほど伸びたらしいのに、胸はほとんど成長しないなんて!


丸ぼうろが甘食レベルになったって、これは育ったって言えるの?!


転生してまで貧乳はないでしょう……。


エリーが胸の大きさで差別したりはしないだろうと思いたいけど、男性の胸の好みはハッキリ分かれると前世で従兄や友人たちから聞いて知っている分、やはり不安になってしまう。




「だってせっかく成長出来たのなら、体形も大人っぽくなりたかったの。エリーもきっと胸だって成長するって思ってたんだよね?……こんな私でもエスコートしてもらえる?」


「当たり前でしょう?大好きな婚約者をエスコート出来る日をずっと待っていたんだから」


「胸が小さくても?」


「胸の大きさなんて、大きくても小さくてもどっちでもいいよ。私にとって大事なのは『エタの胸』だってことだけだからね」




大丈夫だよって言って欲しくて聞いたのは私だったけど、返ってきたのが予想外に『男』な回答と艶っぽい笑みだったせいで、思わずヒュッと息をのんでしまった。


私だって、エリーがエリーだってだけでどうしようもなく好きなのだ。


同性だと思っていた時ですら、ドキドキするほどに好きで、一生一緒にいたいと思っていたのだから。


ジワジワと頬が熱を持ってくるのが分かっていても、自分ではどうすることもできない。


女装を辞めたエリーの攻勢が激しすぎて、経験不足な私では太刀打ちできそうもないので、せめてもの抵抗にぷいっと顔を背けた。




「……エリーは意外と破廉恥でしたのね」


「うーん、男なんて大抵こんなものだよ?」




なんてクスクス笑いながら耳元で『だからこっち向いて、耳の赤いお姫様』とか言う人だなんて、3年の付き合いなのに初めて知った。


私の知らないエリーが沢山見られて嬉しいと思うけれど、正直私の心臓が持たないかもしれない。


同性だと思っていた時でさえ、フェロモン増し増しだと思っていたのに、あれでも抑えられていたのだと今になって気付かされた。


本気で怒っているわけではないけれど、なんだか無性に悔しい。




「もうっ!ずっと美少女の親友だと思ってたのに、すっかり騙されてたわ」


「ふふ、そのおかげで、私は可愛いエタと手を繋いだり抱きしめたりできたわけだ」


「っ!?そ、そうだった……」




あああ……エリーの性別を知っていた学園の皆さんに一体どう見られていたのかと思うと、今からのパーティーがちょっと怖い。


これまでは幼すぎてライバルだと思われていなかったのだろうけれど、年相応の姿に成長した私がエリーにエスコートされているのを見たら……。




「さて、そろそろ着く。美しい君を皆に見せるのは変に虫が寄って来そうで気は進まないんだけど、少しでも早くエタは私の婚約者だと、公にしておかなければね?」


「えええ、むしろエリーの方がこんなに素敵な令息だって知った令嬢から猛アタックされる気がするんだけど……」




確かに身体は成長したのだろうけど、所詮は地味な顔立ちのコロボックル系幼女が地味な令嬢にランクアップしただけだろう。


願わくば、何もトラブルが起きずに今日が終わってくれますようにと祈りつつ、嬉しそうに抱きしめてくるエリーの胸元に、あと少しだけならいいかとポフンと身体を預けたのだった。

作中に出てくる胸のサイズの比喩について。

丸ぼうろは、幼児が良く食べる黄色っぽいコロコロ丸いお菓子の方ではなく、形は丸く平らで真ん中が厚くなった大き目のクッキーのような見た目で、周りはサクッと中はふっくらした九州のお菓子です。

甘食あましょくはスポンジケーキとビスケットの中間のような食感で、形は似ていますが丸ぼうろよりも厚みがある関東のお菓子です。

味は似ていますが、甘食の方にはバターが入っていて

九州では甘食は馴染みが無く、関東では丸ぼうろというとコロコロした黄色いお菓子だと思われるぐらいには馴染みがないので一応解説入れてみました(笑)

気になる方は画像検索でもして頂けるとイメージ沸くかもしれません。


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