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【完結】妖精と呼ばれた転生令嬢は今度こそ恋をしたい  作者: ごんちゃん


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(17)妖精姫の魔法

少しは糖度が増してきました。

私の先祖である妖精姫が使った、妖精族の秘術である魔法があるというエリー。


でも、そこで出た魔法の名前は、当然といえば当然、意外といえばこれほど意外なものはないというもので。




「成長魔法…?それって…」


「そう。彼らも、そして君も得意としている植物魔法の中の成長魔法だよ」


「え?でも…私、今まで何度も成長魔法は使ったことがあるけど……小さいままで…」




成長魔法ならこれまで何度だって使ってきた。


自領で領民に請われるままに、果樹園や畑でそれはもう気軽に何度でも。


私にとっては、むしろ品種改良などに比べても特に繊細な魔力操作も必要としなかった為、もっとも得意な魔法だと言っても良いぐらいだ。


けれど、成長魔法は基本的に人体には影響しないことは知られているし、実際今まで私が急激に成長したりすることなど一度もなかった。


だいだい、『成長魔法で成長します』なんてエリーが言ったのでなければ、なんの冗談かなと思ってしまうレベルの安直さなのだが…。




「通常の土魔法に属する成長は、もちろん植物にしか効果はないよ。エタが今まで成長魔法を使った時も、成長させたいと思った植物に魔法をかけていただろう?」


「確かに…だって人体に効果なんて『あるはずない』って思ってたから」


「うん、そうだと思う。ただ、妖精が人の姿になるには、通常外へ放出している魔力を内側に向かって循環するようにゆっくり放出するんだって長は言ってたよ」


「それで……大きく、なれる、の?」




まさか、長年悩んできたことを解決する力を、自分自身が持っていたなんて思いもしなかった。


言われてみれば、家族が得意とする自然魔法と呼ばれる土魔法や水魔法に比べ、私が使う精霊魔法は本来であれば精霊と契約した者しか使うことの出来ない魔法だ。


この世界にもはるか昔には多くいた言われる精霊や妖精だったが、現在ではほとんど出会うことのない存在で、妖精はともかく精霊と契約できるものなどその時代に1人出れば良いといわれている。


だからこそ、使える魔法は強力でなくとも精霊と契約することなく精霊魔法を使うことの出来るものが稀に生まれる我が家は、大きな功績がなくとも爵位を保ち続けていた。


現在でも、この国で精霊魔法を使えるのは私のほかには片手で足りる程だと聞いていた。


その使い手も、国内の何処かに隠れ住む大賢者と呼ばれる風の精霊と契約しているというハーフエルフの魔法使い以外は、私と同じく妖精姫の血をひく遠縁の長老たちで、今は国の魔法研究所に所属しているらしい。


彼らにも会ったことは記憶にある限りは一度もないので、私の精霊魔法は自己流であったり土魔法や水魔法を模倣したものであった。


だからこそ私は、『成長魔法は植物にしか効果がない』と思い込んでこれまで疑うこともなかったのだ。


それに記憶を思い返してみれば、両親からは『魔法を使うときは()()()使()()()()()()()()()()模倣するように』『習っていない魔法を使()()()()()()()()()()()()』と幼い頃から言い聞かせられていた気がする。




「おそらくそのはずだろうと聞いている。長に君の話をしたら、おそらく先祖がえりしてしまった影響で人としての本来の成長が中途半端に停まっているはずだから、一度内側に向かって成長魔法を使ってみると良いって」


「魔力を…内側に循環させる?」


「身体の中に小さく芽を出した種をイメージして、それを魔力で包んで全身に伸ばしてあげれば成長すると。ただその代わり、彼らの種族は寿命こそ長いけどあまり強い力を持たない妖精だから、一時的な変化でなく人として成長した姿で過ごすことは、妖精としての力を常に使い続けるようなものらしい。そのせいで寿命も人と同じぐらいになるんだって。……ごめん、もっと早く伝えなきゃとは思ってたんだけど…」




エリーは本当に申し訳なさそうに小さく溜息をついて、私を窺うように見つめて来た。


まるで私の反応を恐れているみたいに見えて、おそらくそれは当たっているのだろうと感じた。


きっとこの3年間、近くで私がこの幼い容姿に悩んでいたことを知っていたからこそ、私に責められ拒否されるのではないかと思っているのだろう。


そんなこと思うはずないのに。


だってエリーがいなければ、私はずっとこの姿のまま過ごしていただろうから。




「どうして、黙ってたの?」


「悩んでいるエタを助けたい気持ちもあったのだけれど、もしも年相応の姿に成長してしまったらエタは絶対美しい令嬢になってしまうから。女性のふりをしてる私ではエタを守れないかもしれないし、独り占めする時間が減るのも嫌だった。エタの一番傍で、エタを守るのは私でありたかったんだ」


「独り占めって……あっ」




蕩けるような瞳で甘い言葉を囁かれて、頬どころか首まで赤く染まっているだろうと容易に想像できるほど、身体が熱くなってしまう。


前世でも今世でも免疫ないので、これほど猛攻されると経験不足の私のキャパシティでは到底受け止めきれない。


頬を掌で押さえようとした私は、繋がれたままだった両手を離してもらうことは叶わず、逆に前に倒れそうになったところをエリーに抱きとめられてしまった。




「危なっかしいね、エタ……危ないから、こうしていようか」


「ひゃっ?!これはあのっ!」


「エタ、静かに。御者に聞かれちゃうよ?それに話はまだ途中だから、その可愛い唇は質問だけにしようか」




抱きとめられたそのままに、何故かフワリと抱き上げられて収まったのはエリーの膝の上で。


子供みたいに横抱きにされて、腰にはエリーの左腕がゆるく巻きついてしまっていた。


その上、右手の綺麗な長い人さし指が『しー』なんて言いながら私の唇に軽く押し当てられたら……うん、もう抵抗なんて出来よう筈がありません。


フニャフニャになった頭をコクコクと頷かせる私の髪を、『良い子だね』って目を細めて撫でるのも追い討ちかけてるのが分からないのかしら。


それとも分かっていてやっているのか……ああ、なんか後者な気がしてきた。




「君の家族が何故、精霊魔法を使う長老達に君の指導を請わなかったか、王家に保護を求めなかったか分かる?」


「もしかして、王家に知られたくなかった……?」




あの暢気な両親が、まさかそんな風に考えていたなんて思えないけれど、それ以外に答えがないような気がする。


今思えば、両親から言い聞かされてたことも、全て私の魔法を普通の自然魔法だと周囲に思わせるためのものだったのだろう。


貧乏伯爵家なのだから、私と引き換えに王家に何らかの見返りを求めることもできただろうに、それをしなかった家族を思うと胸が温かくなる。


もしかしてこれまで沢山の縁談を断り続けてきたことも、そうやって私を守っていたのかもしれないと思い当たる。




「その通りだ。長老達のように精霊魔法を操るというだけでも、国は過剰なほどに保護をしてきた。ご両親もまさか君の力が通常の精霊魔法の域すら超えた力だとは思っていなかったみたいだけれどね。王家に保護されるということは、同時に君が自由に生きることは出来なくなる、ということだ」


「保護されていたら、どうなっていたの?」


「もしも、エタが幼い頃に国が君が妖精姫の力を持っていると気付いていたら、おそらく家族の元から離されて王宮内で守られながら長老達から精霊魔法の師事をうけていたはずだ」


「王宮で?まさか…え、本当に?!」




エリーの話からおおよそは予想していたものの、予想していたよりも重い内容に一瞬ゾクリとしてしまう。


私の知る王家の方々はどなたも素晴らしい人格者だけれど、治世者として厳しく冷酷な一面があることも知っている。


確かに私の力が国の食料生産の成否を分ける存在だとすれば、何としても国内に留め置く必要があることも分かるし、その能力を伸ばせばより国の為になるだろうことも理解できる。


それらの大義名分の前には、私個人の意思など無いも同然だろう。


まして私は貴族令嬢なのだから、国のため、家のために尽くすことを生まれながらに求められている存在なのだから。




「驚かせちゃった?でも、きっとそうなっていただろうね。そしておそらく、3人いる王子殿下何れかの婚約者になっていたと思うよ」


「……それは流石に…だって私はこんなに幼い姿で、殿下方にはあんなに素敵な妃殿下や婚約者様がいらっしゃるわ」


「うん、今はそうだね。王家はおそらく妖精姫が使った魔法の詳細は知らなくとも、彼女がなんらかの方法で人と同じように成長して騎士と結ばれたことを知っているから。君の一族を保護するより、妖精姫の血を王家に入れたほうが都合が良いと考えても不思議ではないよ」


「ああ……そういうことなのね……」



言われたことを否定しながらも、頭の端では理解していた。


国に縛り付けるならば、王家に取り込むのが最も確実なのだから。


しかも、将来王家に精霊魔法や妖精姫の力を持つ王族が生まれてくる可能性まであるのであれば、王家がそれを避ける理由などないだろう。


理解はできても今の私には納得はできないけれど、前世の記憶が戻る前の私であれば、きっと王家の命令ならば抗うことすら考えられなかっただろうと思う。


もしかしたらあったかもしれない人生を思って、不安から唇をギュッと引き結んで両手を胸元で硬く握り込んだ。


そんな私の唇をエリーの指がゆるくなぞる様に2度3度と撫でていく。


腰に回された手も軽くトントンとリズムをとり、澄んだブルーの瞳は甘さを隠すことなく私を射抜いている。


猛烈な恥ずかしさと同時にひどく安心感を覚えた私は、ふっと強張っていた口元から力を抜いた。


すると良くできましたと褒めるかのように、こめかみに小さくキスを落とされて、私の頬はますます熱を持ってしまった。




「君の家族は君を普通の令嬢として、自分達の家族として育ててあげたかったんだと思うよ。休暇中にエタが領民達と楽しそうに笑い合っている姿を見れば、君の家族の判断が正しかったのだと良く分かる。なにより、そのおかげでエタを私の最愛とすることが叶うのだから、君のご家族には感謝しかない」


「……私、お父様とお母様の娘で、本当に良かった……」




休暇中の私の姿をどこかからか見ていたらしいエリーに少しばかり驚いたけれど、そうやってこの3年私を守ってくれていたのだろう。


彼の言うとおり、私は家族と温かい使用人や気の良い領民たちと過ごせたからこそ、今の私がある。


そしてエリーと過ごした3年の日々や今日からの未来も、そうやって守られて来たからこそ実現したのだと改めて感じた。




「素晴らしいご家族だね」


「っ……はいっ!」




ジワリと目頭が熱くなって一粒ポロリと頬を伝った涙は、当たり前のようにエリーの唇で受け止められた。


ああああああ……どうしよう、エリーのフェロモンが天井知らずなんですが!!


私本当に、この色気振りまいてる美青年の隣に立たないといけないのでしょうか?


ダメって言われたら、それはそれで立ち直れないと思うけれど、心の準備とか覚悟とか……!!




「でも、もう私達の婚約は王家によって認められたからね。王城で囲われる恐れもなくなった。それに……このままその姿で生きていけば、おそらく君の時間は周囲の人々とは違うものになってしまうだろう」


「あ……」




そうか。


妖精姫のお兄さんが今も存命だということは、やはり私もこのままでは同じようにかなりの長寿になってしまうのか。


家族も友人も、知っている人が全て死んだ後もずっとこの世界で生きていく……?


国や国民にとっては幸福なことなのだろうけど、そんなこときっと私には耐えられない。


辛くて寂しくて、きっと心を病んでしまうだろう。




「エタの気持ちを再確認しなかったばっかりに、不意打ちになってしまったみたいで申し訳ないと思っているけど……私も今日からは元の姿に戻るから、エタを守ってあげられる。だから、エタ。君の本当の姿に変わろうか」



まるで、ティータイムにでも誘うかのように軽い口調で告げながら、朗らかに笑うエリーの表情には曇りひとつ見当たらない。


こんな私を独占したいと、自分で守りたいと思ってくれるその気持ちが、なにより嬉しい。


エリーと共に歩く未来には、きっと沢山の幸せが待っていると信じることができた。

傍目には幼女を膝に乗せて口説くイケメン……絵面は犯罪臭漂っております。

次こそようやく、エタちゃん成長します(笑)


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