(12)本当の理由
久しぶりの更新になり申し訳ないです。
今日から更新再開します。
卒業後はエリーの家で雇ってもらえるのだと、安心して今日の日を迎えたはずだった。
だって確かにエリーはあの日のうちに、私を辺境伯家へ連れて行けるように各種の許可を取ったのだと教えてくれた。
それなのに、雇うつもりがないってどういうことなのだろう。
エリーが男性だったことは驚きこそすれ大きなショックは受けなかった。
けれど、『雇うつもりがない』という言葉はまるで登ろうとした梯子を目の前で外されてしまったかのように、私の心に大きなダメージを与えてしまっている。
「え………そんな…だって、連れて行ってくれるって。ご両親や私の両親の許可も得たって言ってたのに……」
「エタ、何を言ってるの?雇うなんてとんでもない!誤解もいいところだ!」
少しばかり不貞腐れたようなエリーの表情に、イジケたいのはこちらなのだけどと思ってしまう。
あの時約束してくれたと思っていたのは私だけだったのだろうか。
色々と手続きしてくれていたはずだけど、あれは雇用契約ではなかったのか。
考えてみればあの時、私はきちんと「雇って欲しい」と言葉にしていなかった。
そもそも、メルカッツ家は高位貴族なのだ。
子供の学生時代の友人だからって、当主や執事の面接も無しに雇用されるだろうと思った私が非常識だったのだ。
まして、エリーは男性だったのだから。
いくらか仲が良かったとはいえ、異性の友人を連れて帰っては、今後彼の妻になる女性からしたら面白くない存在になってしまうだろう。
きっとあの手続きだって、私が1人で勘違いしていただけで、卒業旅行みたいな短期の滞在手続きだったのかもしれない。
「エタ、エタ?……こっちを見て?顔を見せて?ね、私の話を聞いてくれるかな?」
この3年で聞きなれた、エリーの優しい声が耳元で聞こえる。
女性にしては少し低いと思っていた声も、男性だと思って聞けば素敵なテナーなのだ。
怒った時の声なんて、ドラマティックテナーだもの。
なんで気付かなかったかなぁ、私。
なんだか泣きたい気持ちになって俯けていた顔を、私は細く息を吐いてから勇気を振り絞ってそっとあげてみた。
優しいエリーが私に何を言いたいのか、落ち着いてきちんと聞かなければ。
焦ってうっかりな私がまた変な勘違いをしてしまってはいけないから。
せっかくこんなに素敵なドレスを用意してもらったのだ。
大好きなエリーと一緒に過ごせる最後の日になるかもしれない今日は、笑顔で過ごさないともったいない。
「ついエリーに甘えちゃって、雇って欲しいなんて言っちゃった!気にしないで?あはは、ごめんなさい!……エリーの話、聞かせて?」
下手糞な笑顔だっただろうけど辛うじて笑顔を浮かべた私は、青空のようなエリーの瞳をジッと見上げた。
少し怒っているようなその表情とは裏腹に、その目にはフワリと包みこむような優しさが溢れていた。
大きくて温かな手は私の両手を包んだまま、ゆっくりエリーの口元まで引き寄せられていく。
「エタ、私はね。エタを婚約者として連れて行くつもりなんだよ?これ以上ホイス男爵みたいなのが増えちゃたまらないから」
だから雇うわけないでしょう?と軽く肩を竦めるエリーの言葉が、耳から入って私が頭で理解するまでの一瞬。
馬車の中の時間が止まった気がした。
あれ?聞き間違いかな。
こんやくしゃ……紺役者?今夜クシャ……違う、こんやくしゃ……婚約者か。
んんんん?!!
「へ?……ええええええ?!婚約者って、あの婚約者!?」
「あははっ!うん多分、その婚約者だね」
「え……冗談…じゃなくて?」
「エタ?私は今まで何度もエタに大好きって、言葉でも態度でも伝えて来たつもりだよ?まさか、3年間ずっと男性だと気付かないとは思わなかったけど……それでも少なくとも好意は持ってくれていると思っていたんだけど。違う?」
少し迫力のある笑顔で真っ直ぐに私を見つめたまま、指先にそっと唇が触れた。
エリーの唇が!私の指にっ!!!
色気!エリー、なんかフェロモンっていうか色気が駄々漏れになってますけど!?
確かに男性だと気付かなかったものの、今までも時々エリーにドキッとしたりしていた。
時々…あれ、時々じゃなかったかも。
毎日なにかしらドキっとする場面があったような無かったような……?
どちらにしても好意を持っている、なんて軽い気持ちではないつもりだ。
なにしろこれからの人生をエリーの傍で生きていこうと決意するほど、エリーは私にとって大切な存在なのだから。
「ふぇ!?ち、ちが……わないです」
「この前、エタが『離れたくない』『連れて行って』『ずっと一緒にいたい』って言ってくれたから、てっきり私の性別にもようやく気付いて、逆プロポーズしてくれたんだと思ってすごく嬉しくて、張り切って婚約手続き進めたのに………蓋をあけてみたら就職の斡旋を頼んでた、なんて知った時の私のショックが分かる?」
あ……これは怒ってるときのエリーの笑顔だ。
私も自分の鈍感さを全力で吊るし上げたい気分なので、気持ちは分かりますよ?
でも私にだって言い分はあるというか、仕方ないというか。
「うっ……いや、でも………エリーは女の子だと思ってたし、それに相手は私、だよ?」
「エタだから、だよ。言っておくけど、私はエタ以外の子からあんなこと言われても断るからね?」
「こんなにチビッコなのに?」
友人としても本来なら家柄的にも見た目的にも吊りあわないと思っていたのに、婚約者とかプロポーズとか、私はそこまでポジティブになれない。
だって私はチビッコな上に、植物魔法ぐらいしか取得のない貧乏伯爵家の3女だもの。
マスコットでコロボックルで合法ロリな……ん?まさか、エリーってばそっちの趣味だったりするのだろうか。
それなら私は適任といえば適任だろうけど。
「うん、そのことなんだけど……私はそのことも含めて、エタに謝らないといけないこと、話しておかなければいけないことが沢山あるんだ」
え、実はロリコンでしたって話だったりするんでしょうか?
それは聞きたいような聞きたくないような…複雑な気持ちになるのは仕方ないと思うのです。
ようやく更新できました。
果たしてエリーはロリコンなのか(笑)
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