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【完結】妖精と呼ばれた転生令嬢は今度こそ恋をしたい  作者: ごんちゃん


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10/19

(10)エリーの秘密

更新待ってくださっている数少ない読者様、お待たせしました。

マルクが学園から姿を消して2ヶ月後、無事に最後の試験もエリーはトップで、私は辛うじて上位に入る成績でクリアすることができた。


結局、私の身長が卒業までに劇的に伸びることもなく、当然のように婚約者もいなければ見合いの話のひとつもなかった。


不思議なことに、卒業までには婚約者を決めると言っていたはずのエリーも、未だに婚約したという話は聞かなかった。


最後の試験が終わった日、私は思い切ってエリーにメルカッツ家で働きたいとお願いをした。




「エリーを傍で支えられるように頑張るから、私をメルカッツ家に連れて行って欲しいの。お願い!このまま離れてしまうのは寂しすぎるし、ずっとエリーと一緒に居たいの!そ、それにね?私がいれば少なくとも農作物は豊作になるから、無駄飯食いにはならないと思うの」


「ーーーーーっ!私からお願いするつもりだったのだけど、先に言われてしまったね?すごく嬉しいよ、エタ。ありがとう」




伝えた内容は私の我侭のはずなのに、優しいエリーは頬を真っ赤に染めて驚きながらも、何度も頷いた。


ギュッと抱きしめられて、耳元で囁かれた少し震える声には嘘偽りなど混じりようもなく、エリーがただ純粋に喜んでくれたことが何より嬉しかった。


そして驚いたことに即日エリーは色々と手続きをすすめ、希少な魔道具まで用いて領地のご両親と私の両親に連絡をとり、その日のうちにあっさりと許可をもらってくれたのだった。


これで将来の心配をすることもなくなったと、私もほっと胸を撫で下ろした。




◆◆◆◆◆




今日は朝から卒業式があり、無事に卒業証書も受け取って今はエリーのタウンハウスで卒業パーティーの為の身支度をしてもらっていた。


我がツヴェルグ家にも、一応小さいながら王都にタウンハウスがあるものの、今日は両親も卒業パーティーに参加する為に久しぶりに領地から来てくれたおかげで、1人しかいない侍女は母の身支度を手伝っている。


今朝まで見せて貰えなかったお揃いのドレスの準備だけでなく、私の身支度は全てメルカッツ家に任せて欲しいと、先日の連絡の際にエリーが前もって両親にも伝えてくれていたらしい。


両親からは良い縁に恵まれた、くれぐれもメルカッツ家に感謝するのだと念を押されたが、そんなのは言われずともエリーにはずっと感謝している。


エリーが用意してくれたのは、空の色を映したような綺麗な青色のグラデーションが美しいドレスだった。


胸元はエリーの瞳の色に似た美しい青で、スカート部分は裾に行くにつれ薄い青へと変化していく。


その分、裾には輝く銀糸で細やかな刺繍が施してあり、派手ではないのに生地自体が見たこともないような不思議な輝きを放っている。


一体幾らしたのか……想像するのさえ恐ろしいし、こんな大人っぽいドレスが私に似合うのだろうかと思ったけれど、身支度を手伝ってくれた辺境伯家のメイドも侍女も揃って可愛い似合っていると誉めそやしてくれたので、一応それを信じておくことにした。


もしも似合わないと誰かに笑われたりかわらかれたりしても構わない。


少なくとも、エリーは私にこれが似合うと思ってプレゼントしてくれたのだ。


だったらそれで十分だと思った。


髪も綺麗に結ってもらい、アクセサリーをつけたところで部屋にノックの音が響いた。




「エタ、準備できた?入ってもいい?」


「エリー?もちろんいいに決まってるわ!」




そもそも、同じ部屋で準備をしても良いのだろうけど、お揃いの衣装や装飾品が混ざってしまわないように別の部屋で準備したのだろうから。


それにこれとお揃いのドレスをエリーが着た姿を早く見たい。


絶対に美しくて溜息が出るレベルの美女になるに違いないのだから。


そう、思っていた。


部屋にエリーが入ってくるまでは。




「え?………エリー……?」


「エタ!なんて可愛いんだ!やっぱりこのドレスにして正解だったね」




頬をうっすら染め、目をキラキラ輝かせてそこに立っていたのは、わたしとお揃いのドレス……ではなく黒に私のドレスと同じ銀糸で刺繍を施してあるタキシード姿のエリーだった。


確かにお揃いだけど、これは違う。


思っていたのと全然違うよ!!




「待って、ねぇ待って!え、なんで?エリー、なんでその格好なの?それに……ああああっ!?うそ、髪っ!髪が……」


「うん、もういらないから切っちゃった」




腰まであった美しい銀色の髪は、辛うじて肩に着く程度の長さでバッサリと切られ、黒いリボンで後ろで一つに結わえられている。


すっきりしたよ、なんていいながら良い笑顔で笑うエリーに、私はひたすら混乱するしかない。


あんなに綺麗だった髪を切るなんて、なんてもったいないことするのだろう。


前世の記憶を思い出したエタにだって、貴族令嬢にとって髪の毛がどれほど大切なのかは良く分かっている。


それなのに。




「あれ?エタ、そんなに私の髪が好きだった?」


「もちろんだよ!メルカッツ家に行ったら毎日あの髪を梳かすのも楽しみだったのに!」


「そっか。うん、じゃあまた伸ばすよ」


「ありがと……じゃなくて、なんでその格好?お揃いにするって言ってたのに。喋り方もいつもとちょっと違うような…」




確かにお揃いではあるのだろう。


同じ銀糸で美しい刺繍を施したエリーの色のドレスと、エタの色のタキシードは。


でもこれではまるで……。




「ねえ、エタはまだ気付かない?」


「え?」


「髪や服装だけじゃなくて、もっと根本的にいつもと違うでしょ?」




そういわれて、エリーをまじまじと見れば、確かにいつもと何かが違う。


確かに髪型や服装だけでなく、何かが決定的に違う。


頭の先からつま先まで視線を下ろし、再びゆっくりと視線を上へ戻して、ある一点で視線が釘付けになった。




「のど……なんでエリーに、喉仏があるの?」


「のどぼとけ?ああ、エタの住んでるあたりでは竜骨のことをそう呼ぶのかな?」


「あ…う、うん。いや呼び方とかはどうでもいいんだけど」




いけない。


こっちに仏様はいないのだから、喉仏でもアダムズアップルでもないんだった。


この世界では、喉仏のことを竜骨と呼ぶのを驚きすぎてすっかり忘れていた。


いや、それは今は本当にどうでも良い。


問題は美人な友人の喉に、昨日までは確かになかったはずの竜骨がしっかりと存在感をアピールしてることだ。




「なんで竜骨があるのかって問いなら、答えは私が男だから、かな?」


「え…いや、でも昨日までは…」


「うん。認識阻害魔法を少しだけ使ってたからね。でも、流石に3年もあれだけ一緒にいたら気付かれると思ってたんだけど」




楽しそうにクスクスと笑うエリーは、本当にいつもと変わらない。


けれど、男性なのだと意識してみれば、確かに何故今まで女性だと信じていたのかと思うほど、素敵な青年がそこにいる。


剣術クラスの前後には男装姿も見ていたはずだけど、その時はどう見ても男装の麗人で、男性には見えなかったのに。


やはりさっきエリーが言ったように、今まで見知っていた姿は魔法によって少しだけ認識を変えられていたらしい。


あ、あれ?


私ってばこの人と、毎日のように手を繋いだり、あまつさえ……と、時々抱きついたり抱きしめられたりしてたってこと?


ふあああああああーーーー!?


穴があったら入りたいっ!!


むしろその上から思い切り埋め立てて欲しいっ!!


これまでの行動を思い返せば、頬は火を噴きそうなほどにジワジワと熱をもっていく。




「………自分の鈍さが残念すぎて立ち直れないわっ」


「あははっ、エタってば本当に素直で可愛いね?」


「褒められてる気がしないわ……」




恥ずかしくて少し悔しくて、ジトリとエリーを睨んでも、ちっとも効かない私の目力の無さよ。


美人の大親友だと思っていたのに、まさかの美貌の悪戯小僧だったとは。


確かにエリーは自分を『辺境伯家の嫡子』だと言ったことはあっても、『令嬢』だと言ったことはないのだと今更ながらに気付く。


いやでも、これだけの美少女が女生徒の制服着てたら、誰だって令嬢だと思うはずだ。


エリーは恭しく手を差し出してすっと私の手をとると、流れるような所作で部屋のドアの方へと促していく。




「まぁまぁ。そろそろ出ないとパーティーに間に合わないよ?」


「もしかして、エリーがエスコートしてくれるってこと?私みたいなチビを連れていてはエリーが恥をかいてしまわない?」


「え、まさか他の誰かにエスコートさせるつもり?私に贈られたドレスを着て?」


「う……よ、よろしくお願いします」




色々と問い質したいことはあるけれど、確かに時間が迫っている。


頭が色々混乱しているけれど、馬車の中で少しは事情を聞けるのだろうかと、隣を歩くエリーを見上げれば、柔らかい笑みを返されてしまい、私は思わず変な声をあげそうになるのを辛うじて我慢したのだった。


ようやくネタバレです(笑)

エリーは別タイトル「売れ残り令嬢」のエミーの父です←

そう、初代女装通学してた先代様の話でした。


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