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ep.80

「...ふーん。なるほどねぇ...」


家に帰った私は、いつも通りフェリアが作ってくれた温かいご飯を食べていたのだが、フェリアは私の何がしかを鋭敏に感じ取ったようで、私をソファに呼びつけた後、『今日、何かあった?』と柔らかに訊いてきた。

それまで私は自分が落ち込んでいると感じていなかったけれど、フェリアに言われてようやく、今日の出来事の端々が枷になっていることに気付いた。

一通り今日のことを話すと、フェリアは私の手を握って何かを考え始める。

沈黙が部屋を満たし、ざわざわとする心から意識をずらすために、私は言葉をつづけた。


「きっと、私なんかよりもっともっと辛い思いをしている人がたくさんいると思うんです。その人たちの重りの一端を知ってるからこそ、その人たちを傷つけないように生きていたいんです。でも、私は自分のことでいっぱいいっぱいで。きっと私は、そういう人を知らず知らずの内に傷つけてしまってるんでしょうね。ガブエラさんだって日々仕事に忙殺されていて自分のために使える時間なんてほとんどないのに、私に時間を使うことを厭わなかったですし、私が知らないだけで、もしかすると今日聞こえてきた女性のような境遇の人に、何気なく心無い事を言ってしまったりするんです」

「...そうだなぁ......」


一頻り思いを連ねると、フェリアは一瞬考えた後、ころりと不思議そうな顔をして言った。


「普通、辛くて辛くてしょうがない時は他の人なんてどうでも良くなっちゃうものだと思うけどな。世界で一番自分が可哀想で寂しいんだって勘違いしちゃうものだよ。......マリエルはとっても優しいんだよ、きっと。どれだけ苦しくても、他人を気にかけることができて、自分が抱える痛みを驕らない。私はマリエルのそういうとこ、好きだよ」

「...そういうものなんでしょうか」

「分かんない。けど、少なくとも私はそうだった。二年前、マリエルと出会った頃は、自分で自分のことを悲劇のヒロインだと思ってた」

「でも......でも、やっぱり不安です。誰かを傷つけるくらいなら、...死んでしまいたいんです」

「こら」


フェリアはそう言って、握っている私の手を少し離し、小指の爪をキュッと押した。


「っ...」

「そんな悲しいこと言わないの。逆の立場で考えてもみなよ。『自分が傷ついてしまったばっかりに、この人は死んじゃったんだ』って思われるんだよ?勿論、世界にはマリエルみたいに優しい人ばかりじゃないからそれだけってことはないけど。少なくともマリエルは、もう一人マリエルが居たとしてそんなことをしてほしくないでしょう?」

「...まぁ、そうですね」

「マリエルは優しすぎるんだよ。いいの、迷惑かけたって、そのバランスが傾いたって。誰にも迷惑をかけずに生きていく方法なんてないんだから」

「...はい」


フェリアの言葉を真に納得できたわけではないが、大好きな友達の助言だから、胸の内にしまっておいて、寝るときにでも思い出そうと思う。

同じ言葉をなぞるようにして反復していると、フェリアがふわ、と欠伸をした。それにつられて私もまた欠伸をする。気づけばあと一時間ほどで日が昇る時刻だ。フェリアは私が欠伸をしているのをニコニコと笑いながら見ていて、優しい顔で言った。


「眠いね?お風呂は明日の朝にしようか?」

「そうですね。朝に入ります。フェリアは明日授業ですか?」

「んーん。定期テストだけど、私はもう合格貰ってるから、休日だよ」

「そうですか...」

「どこか行きたい?」

「...いえ、...特には」

「そっかそっか。じゃあ家でゆっくりしよう」

「居てくれるんですか?」

「うん。ウチに居ても変わんないし」

「...ありがとうございます」


途端にほんのりと色づいた心を見て、再認識した。

私にとって、フェリアはとても大きな存在なのだと。

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