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イヤイヤからノリノリでダンジョン攻略  作者: くろのわーる
ダンジョン編

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57話:男の頼み



 周りの目を気にすることなく、頭を下げる柴田と山口。


 腰は90度近くまで曲がっており、ガチ中のガチで頼みに来ている。


 ここまでされたら、男として断われないだろう。


「わかっ――」


「お断りよ!」


 割り込んで声を出したのは姫川。


 その目は冷めていた。


 だが、怯むことなく山口が言い返す。


「お前には聞いてない!」


 俺と柴田以外の人間の温度が下がった気がする。


 女子全員が山口を冷めた目で見ている。


「御堂と模擬戦したいなら、まずは私と戦いなさい!」


 姫川は何を言い出したのかと思ったが、よく考えると入学式の日以来で初めて会話しているのではないだろうか。


「なんで、お前が出てくるんだよ!」


 おいおい、山口よ。


 お前は女子というものを分かっていない!


 周りを見ろよ!


 この女子達の視線の冷たさを……。


「お前って言うな!大体、都合が良すぎるのよ!御堂、あんたもよ!」


 いきなりの飛び火に心臓が跳ね上がる。


「入学式で私に絡んだこと、忘れてないからね!」


 山口と柴田がたじろぐ。


 ついでに俺も。


「あの時は御堂のせいでうやむやになったけど、あんたをボコボコにして謝罪してもらうわ!」


 女子達が頷いている。


 流石と言うべきか、情報は共有されているのだろう。


 山口の動揺が凄い。


 まさか、まだ根に持ってるなんて思ってもなかったのだろう。


 俺もだ。


「わ、わかった」


 女子達からの圧力同調に耐えきれなかった山口は了承した。


 更に姫川には追い風が吹く。


「あら、みんな休みなのに熱心ね」


 回復科の顧問、野々村先生の登場に姫川の笑みが深くなった。


 そして、姫川推しの茅ヶ崎さんが野々村先生に耳打ちする。


 野々村先生は無言で頷いている。


「山口君、男子たるもの自分の行いには責任を持たないとね」


 教員であり、立派な大人から向けられる真剣な眼差し。


「大丈夫、明日に残らないように治してあげるわ」


 あ〜、山口死んだな。



 姫川と山口の決闘……違った模擬戦は静かな中で行われた。


 最早、模擬戦というより校内処刑。


 うずくまる山口を姫川が冷たい目で見つめている。


「山口君、男の子が一撃もらったくらいで蹲ってどうするの!立ちなさい!」


 普段と違う野々村先生の熱血に俺はドン引き。


 柴田はこの後に待っている、山口とセットの反省会を想像して青ざめている。


 まあ、柴田も入学式の日に姫川に絡んでたから、逃げられないだろうな。


 南無。


 激を受けてか、お腹を押さえたまま山口は立ち上がる。


 次の瞬間には姫川の連続突きが襲う。


「ぐあぁ」


 再び地面で藻掻き苦しむ山口。


「あんた、隙だらけなのよ」


 姫川はレイピアを模した木剣の先を下げる。


「そもそも、ビビり過ぎよ」


 山口は痛みで流れる涙を拭うこともなく、姫川を睨む。


「やっぱり、威勢がいいのは口だけね」


「ふ、ふざけんな」


 起き上がる気配もなく、口だけは少しだけ衰えたかな?


「あんたの根性、叩き直してあげる」


 姫川と山口の模擬戦はやはり一方的な展開になった。


 三回ダウンすると、野々村先生が優しくヒールをかける。


 すると、どうなるか模擬戦は続行される。


 ヤバい柴田が隣で泣いてるけど、俺も泣きそうだ。


 姫川の鋭い突き。


 山口は突きを受けながらも前に出る。


 この模擬戦、初めて山口の間合いになった。


 放たれるコンパクトな右ストレート。


 残念ながら、バックステップで躱されるが初めて模擬戦が動いた。


「くそっ!」


 一声、悪態をつくと山口は胸の前でガードを固めて、的を小さくする。


「やっと気付いたの?」


「うるせぇ!」


 怒鳴ったわりには表情は嬉々としていた。


「かかってこい!次は当てる!」


 やっと、エンジンがかかったのか、ちょっと漢らしく見えた。


 ただ――


「あっそ」


 姫川の冷めた返事。


 言い終わるのと山口に突きが当たるのは同時だった。


 これまでよりも鋭い突き。


 山口の意識は刈り取られていた。


 うん、何だかんだ言っても姫川の奴、手を抜いてやってたからな。


 調子にのったら、そりゃあやられるわ。


 


 でも、休日の午前中を潰したはずなのに、不思議と悪い気分ではなかった。




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