54話:納得
「全員でお互いをフォローしろ!」
俺の激に対して、返事が出来るほど余裕がある者はいなかった。
俺も姫川も戦線に参加して、襲い来るゴブリンの数を減らす。
「みんな!無理だけはしないで!」
こちらは12名。
相手のゴブリンは15匹。
最低でも一人一匹は相手にしないといけない集団戦闘。
監督と監視役の上級生達もヒヤヒヤしながら戦闘の様子を見ていた。
時は数十分前。
俺達はフロアボス周回を決行するためにボスがいる場所に向かっていた。
「この先はフロアボスがいるから行ったら駄目よ」
前に立ち塞がったのは上級生の女子二人。
武器を帯びた立ち姿からして、戦闘職。
実力も俺達が束になっても、敵わないと思わせる雰囲気があった。
「貴方たちにはフロアボスはまだ早いわ、引き返しなさい」
下級生を諭すような優しい声音。
でも、その芯には俺達を侮る含みを感じた。
姫川が一歩前に出る。
「先輩方、ご忠告ありがとうございます」
丁寧に頭を下げる姫川に俺は嫌な予感がした。
そう、"直感"である。
「でも――」
顔を上げた姫川はアイドルスマイルを浮かべていた。
「私と御堂は普段からフロアボスで周回していますので大丈夫ですよ」
姫川はにこり、と笑うが圧力にしか感じない。
先輩方のこめかみがビキリッ!と、音を立てた気がした。
俺の危機感が訴える。
ここで出ないと後で不味いことになるぞと本能が訴える。
俺は姫川の前に出る。
「疑うなら、一度お見せましょうか」
なんか後ろから、「あんたも言う時は言うわね」みたいな空気がヒシヒシと伝わってくる。
二人の先輩は話し合う。
そして――
「自信があるみたいだし、見せてもらおうかしら」
先輩方がしっかりと乗ってくれたことで、俺は後ろに組んだ手で姫川に向けて、サムズアップをした。
視線の先にはボスゴブリンを囲むようにゴブリンの群れがいる。
「みんな、ちょっといいか」
パーティーメンバーと向き合う俺は口を開いた。
「まずは俺達二人で戦うから多数を相手にした時の戦い方を自分なりに考えて見てくれ」
見て考えるのも大事な実習。
納得してくれたのか、みんなは静かに頷く。
「御堂、行くわよ」
「おう!」
俺たちの歩みは普段と変わらない。
近付くと群れの中から血気盛んなゴブリン達が向かってくる。
歩みを止めることなく、一撃必殺。
慣れたもので作業と化していた。
取り巻きのゴブリンの数が過半数になると、ボスゴブリンが立ち上がる。
「御堂!ボスは任せたわ!雑魚は私がやる!」
「手間取ったら先に一人で倒すからな!」
俺たちのやり取りをパーティーメンバーは食い入るように見ていた。
姫川がボスから逸れて、周りのゴブリン達を蹂躙し始める。
「お前の相手は俺だ!」
素早く踏み込むと、ボスの脇腹に一閃。
相変わらず、筋肉を断つほどではないが大きな傷をつけた。
グギャア!!
この一撃がボスからのヘイトを集めていた姫川から、ヘイトを奪う。
怒りで振り下ろされる大剣を避ける。
ブオォ!っという風斬り音を横にサーベルを切り上げた。
大剣を握る手首の関節にサーベルが喰い込む。
僅かな抵抗。
俺は空に向かい腕を振り抜いた。
「上手い!」
声を上げたのは上級生か。
ボスゴブリンは右手を失っても、戦意は落ちていない。
残っている左手で大剣へ伸ばす。
天へ振り上げたサーベル。
その柄に左手を添える。
一刀両断。
今度は抵抗を感じることなく、振り下ろした。
痛みよりも事実に唖然とするボスゴブリン。
形相が変わる。
怒り、憎しみ、恨み。
おおよその負の感情が溢れ出していた。
だが――
「はぁっ!」
姫川の気合いが響く。
背中から心臓を貫く一撃。
取り巻きの掃除を終えて、間に合ったどころか良いところを持っていく。
でも、俺も負けちゃいられない。
ボスゴブリンの顎から脳天にかけて、サーベルを突き上げる。
グ、グギャア
「エグ……」
またもや上級生からの声。
戦闘時間は五分もかからなかった。




