52話:リポップ
午前中のパーティー実習が終わり、俺達は賑やかに昼食をしていた。
しかし、賑やかなのは俺と姫川のパーティー、そして実習不参加だった回復科だけ。
食堂にはお通夜のように静かなパーティー。
食事に手をつけることなく、パーティー内で睨み合う奴ら。
いや、別の席に座ればよくない?
原因は言わずもがな、ダンジョン実習が上手くいかなかったのは明白だ。
「みんな久遠くんのリーダー、どうだった?」
食堂に鈴のような声が響く。
マイペースに質問しているのは、保奈美。
その質問に、俺のパーティーだけでなく、姫川パーティーのメンバーの箸も止まる。
「頼もしかった……かな」
一人が答えると、全員が頷く。
「でも――」
続く言葉で保奈美の視線が鋭くなる。
「厳し過ぎる……と思う」
再び全員が頷くのを確認して、保奈美がこちらを向く。
「へぇ〜、女の子相手に優しくしなかったんだ」
責める口調なのに、どこか嬉し気な顔。
「まさか、こんなにもスパルタなんてね」
「そうそう、「出来ない奴はパーティーから外れてもらう」とか、鬼軍曹だったよ」
俺を非難する声にも動じず、保奈美は聞いている。
「姫川さんが教えてくれなかったら、ホント人でなしだったよ」
……本人いるんですけど。
保奈美は笑顔で聞いていた。
女子っていうのは、どうしてこう話題が尽きないんだ。
――だけど。
「俺のおかげでみんなはもう平気だろ?」
「まあ、確かに」
「最初に感じてた恐怖はなくなったわね」
そこにはブレイバーの卵として、無事にデビューを果たした笑顔が溢れていた。
「よし!明日は予定通り、一対一だ!」
「「それはないわね」」
俺の笑顔は砕かれた。
午後が始まり、俺達は再びダンジョンで実習を行っている。
とはいえ、実習をしてるのは職業なし科のみ。
他の科の奴らは午前の結果を受けて、パーティーの組み直しや反省、対応策を話し合っているらしい。
東雲先生に聞いたところ、半分以上の奴らがパーティーを組み直すのが毎年の恒例とのこと。
「御堂!スイッチ!」
「おう!」
フロアボスであるボスゴブリンの大剣を横に受け流すと、相手は僅かに体勢を崩した。
それを予測していた姫川は俺との位置交代を要求する。
バックステップで下がる俺の横を姫川が電光石火の勢いで過ぎ去る。
午前中は俺と同様に指示と監督に徹していたからか、その動きは鋭い。
「はあっ!」
突進力を活かした突きはボスゴブリンの脇腹から背中にかけて、貫いた。
「「スイッチ!」」
姫川の攻撃で更に体勢を崩した隙を見逃すはずがない。
同時に発した合図。
同時に動き出していた。
前に出た俺はサーベルを一閃。
ギャァァァ!?
ボスゴブリンの両目を切り裂いた。
窮地の場面で大剣から手を離し、顔を押さえる。
俺達二人にはもう言葉はいらなかった。
お互いの武器が命の灯火を奪うように振るわれた。
やがて、ボスゴブリンは黒い霧へと変わる。
「ふぅ」
小さく息を吐く。
隣を見れば、姫川も一息ついている。
「お前ら、かなりコンビネーションが良くなってきたな」
それはそうだ。
今日から俺と姫川はフロアボス周回を始めて、今の戦いは3回目。
今回だけでレベルも二つ上がった。
「もう付き合っちゃえば?」
東雲先生の余計なひと言で姫川の視線に殺気が乗る。
しかし、いつものように気にした素振りもなく、見学していた二人に向き直る。
「柴田、山口。お前達どんどん離されてるぞ」
順調な俺たちとは違い、手古摺っている二人。
その表情には焦りがあった。
「柴田!行くぞ!」
自分達との違いを見せつけられたことで、焦りと闘志が湧いたのか、山口がゴブリンを探しに離れて行った。
その後を柴田が追いかける。
「お前達はこのままレベル上げしてていいぞ」
教育者として、放任過ぎる気もするが今に分かったことでもないので気にしない。
モンスターリポップまでの時間。
姫川との口数はあまり多くなかった。




