49話:必然?
俺達、職業なし科は通い慣れたダンジョン。
自然な風、自然な大地、そして不自然に晴れた偽りの青空。
「ここがダンジョンの中なの……」
偽物の空を見上げて、口をポカンと開いているのは魔技科の片桐さんだ。
他のメンバーも似たようなリアクションで足を止めてしまっているので、ゲートから離れるように誘導する。
「みんな、ちょっといいか」
みんなの視線を独り占めする。
「ここはもうダンジョン内だ。油断しないように気を引き締めよう」
俺の言葉で、ハッとしたのか顔に真剣味が帯びた。
『準備が出来たパーティーから探索を開始するように!』
ダンジョン内で待機していた教師がメガホンで呼びかけている。
『無茶はしないように!危ないと思ったら戻ってくるように!』
ダンジョン内を見渡せば、すでにゴブリンとの戦闘を始めているパーティー。
そして、それを見守る上級生達がいつでも助けに入れるようにバラバラに散らばっている。
「準備はいいか?」
全員が頷く。
「それじゃあ、いこう」
俺を先頭に初めてのパーティーバトルが開始される。
「私たちも、行きましょう!」
隣で姫川が号令を出す。
一緒に歩き出す俺たち。
俺と姫川、後ろをパーティーが入り混じり、同じ学科同士で話ながら歩いている。
「なんで?」
「何が?」
沈黙が流れるが足は止めない。
「どうして?」
「必然よ」
理由がわからない。
どうして、姫川のパーティーと行動を共にしているのか……。
「御堂くん、もしかして聞いてないの?」
声を掛けてきたのは、島袋さん。
「姫川さんから一緒に探索しようって、御堂くんとは話はついてるって……」
初めて聞いた俺は姫川を見る。
姫川に変化はない。
「さあ、行くわよ」
いや、多少は悪気を感じているのか、先を急かす。
「なあ、そういうのは先に言ってくれ」
「言うの忘れてたのよ」
今日も姫川は姫川のようだ。
2パーティー12人。
男は俺だけ。
ハーレム要員が倍になったことで、余計に目立つ。
監視役の上級生達からの視線が僅かに鋭い気がする。
保奈美になんて、言い訳しようか……。
注意力が落ちかけていた俺はそれでも、こちらへと向かってくるゴブリンを見つける。
「御堂、先に手本を見せてよ」
姫川の発言に俺以外の全員が頷く。
これは俺の直感だが姫川のやつ、俺を利用する気で合流したな。
疑わしい視線を向けるとそっぽを向く。
「早く、カッコいいところを女子に見せなさいよ」
それ、褒めてないからな!
俺はサーベルを抜き放つと、ゆっくりと歩き出す。
みんなは俺の様子を固唾を飲んで見ている。
ゴブリンが狙いを俺に定めた。
二突き。
ゴブリンの両足、太腿に軽い突きを放つと横に逸れて避ける。
ゴブリンは走っていた勢いのまま、うつ伏せで倒れた。
「わっ!?」っという、小さな声が上がるが視線を向けることなく、うつ伏せで倒れるゴブリンの両肩に二突き。
倒しはしない。
両手両足に力が入らないゴブリンはギャアギャアと、芋虫のように蠢いている。
俺はサーベルを鞘にしまうと、パーティーメンバーを手招きした。
「みんな来てくれ」
パーティーのみんなと姫川パーティーのメンバーは恐る恐る近付いてくる。
みんな、ゴブリンをこんな間近で見るのは初めてなんだろう。
興味と恐怖が入り混じった視線を向けている。
「みんなには同時にコイツを攻撃してもらおうと思う」
俺が考えた実習方法は、現代の処刑の際に行われるという方法。
同時に攻撃すれば、誰がとどめを刺したか分からなくなる。
実行する者への精神的な負担を減らす方法だ。
意図が伝わってないのか、全員の顔が引き攣った。
「まずは攻撃、相手がモンスターだろうが傷付けることに慣れてもらおうと思う」
「……あんたって、酷いわね」
姫川のひと言に女子全員が同意するように頷いた。
言い方が悪いのは分かっている。
でも、魔物を狩る者になってしまった以上、避けては通れない。
だから、俺なりに考慮した結果なんだが……。
「なんとでも言え――」
姫川に向かって告げる。
そして――
全員を見渡してから、トドメの言葉を放つ。
「これが出来ない奴はパーティーから外れてもらう」




