46話:成果
東雲の呟きに、柴田と山口が目を見開く。
「結構、ギリギリだが上手くやってるな」
その言葉には、助けに入る気は含まれていなかった。
姫川のレイピアが漸く抜けた。
そして、距離を取る。
御堂とボスゴブリンに向けられる視線。
その目に宿る感情は、悔しさ。
御堂のおかげで、助けられた事実から来ていた。
対峙する御堂とボスゴブリンの視線は、互いだけを捉えていた。
その輪の外に立つ自分の存在が、妙に浮いて見える。
だが、御堂がゆっくりと摺り足で側面に回ろうとする。
それに釣られて、ボスゴブリンも身体の向きを変えた。
自分が戦いから省かれた悔しさはあるが、こんな好機を逃すのは愚かだ。
姫川は一つ呼吸を整えると、レイピアを握り締める手を緩めた。
感情の昂ぶりや、冷静さを欠いた状態では満足なパフォーマンスは出来ない。
今回のダンジョン実習で、御堂から学んだこと。
がむしゃらな自分には、まだ足りない要素。
心の底から、目の前にいる同級生をライバルだと認めた瞬間だった。
動き出したのは、御堂。
対抗する為にボスゴブリンが身構えるが――
御堂の動きは、フェイントだった。
本命は、姫川。
御堂から視線を外さなかった姫川は、彼の思考を見抜き、その一瞬の隙をついた。
ボスゴブリンの胸から、レイピアの鋭い剣身が生える。
そして、素早くレイピアは引き抜かれた。
同じ轍は踏まないと、言わんばかりに。
苛立ちから、ボスゴブリンは姫川の方に振り返るが……。
丸見えとなった首を御堂のサーベルが切り裂いた。
膝から崩れ落ちるボスゴブリン。
障害がなくなったことで、二人の視線の高さが合う。
音の言葉はない。
でも、確かに二人は目だけで会話していた。
「お疲れさん」
不意に声を掛けられたことで、二人の会話は終わった。
ボスゴブリンは黒い霧となって消える。
ピコン!
『レベルアップしました!』
本日、3回目のレベルアップ。
姫川の目標は達成された。
そして、黒い霧がなくなった後には宝箱がひとつ。
「ああ、フロアボスからは宝箱が出るぞ」
俺と姫川は再び目を合わせる。
当然、どちらが宝箱を開けるかについてだ。
僅かな沈黙。
やがて、姫川は口を真一文字に結んだ後、言葉を発した。
「あんたが……開けなさいよ」
予想外な答えに戸惑うが。
俺は譲ると、決めていたので迷いはない。
「いや、姫川が開けろよ」
「じゃあ、遠慮なく」
早っ!決断も戦闘スタイルも早い!
姫川はるんるん!と宝箱に近付く。
俺も、東雲先生、柴田、山口も覗き込むように宝箱を囲む。
ゆっくりと蓋が開けられた。
中には、一枚の紙。
姫川が手を入れて、紙切れを取る。
そこにはひと言。
『20RP獲得』と、書かれていた。
「「……」」
東雲先生以外は動きを止めた。
「おお、初めてのランキングポイント獲得だな」
俺は思わず、聞いていた。
「浪漫アイテムとか、厨二武器は?」
「そんなの出るわけないだろ。ここは政府が管理してるダンジョンだぞ」
「……」
俺はダンジョン実習二回目で現実を突き付けられた。
「御堂、ポイントは半分ずつよ」
姫川の言葉が救いに思えて仕方なかった。




