44話:お前
一回の釣りで引き寄せたゴブリンは10匹だった。
お互いに半分個して、サクサクと片付けていく。
その様子を最初は見ていた何匹かのゴブリン達が仲間がやられる様子に耐えられなかったのか、加勢に駆けつける。
ただ、俺達にかかれば、ゴブリンが何匹束になっても敵ではなかった。
単純な作業。
模擬戦の方が為に成ると思えた。
処理も終わり、群れがいる方を見る。
群れの中心で胡座をかいて、こちらを見ているゴブリンがいた。
体が大きい。
胡座をかいているのに、他のゴブリン達と同じ高さ。
直感がざわめいた。
ゴブリン達が壁になって、見えていなかったが。
俺達がちょっかいをかけた群れは上位ゴブリンによって、支配された集団だったのだ。
「ねえ、あれ……」
姫川も気付いたのか、緊張は――してない。
それどころか、戦意が上がったような。
「早く、次を釣ってきてよ。で最後はアイツよ」
俺は小さくため息を吐くと、再び歩き始めた。
近付く度に、ボス以外は警戒する。
ボスは俺を観察しているのか、動く気配はない。
一歩、二歩、三歩。
距離は10メートルを切った。
すると、ボスゴブリンが顎で指示を出す。
残ったゴブリンは15匹くらい。
一斉にこちらへ向かってくると思った。
だが、戸惑ったのか、日和ったのか動かなかったゴブリンをボスゴブリンは物理的に切り捨てた。
「あいつ、性格が悪いわね」
待っていたはずの姫川は少し後ろを歩いていた。
「こっちの方が早いでしょ」
そもそも、素直に言うことを聞いてくれる奴だとは微塵も思っていなかったので、驚きはない。
「ほら、来るわよ」
俺はゴブリン達に向き直ると、サーベルを抜いた。
姫川が隣に並ぶ。
打ち合わせはない。
しなくても、戦闘に限ってはもう問題はないから。
動き出すのは、同時だった。
同じ速度、同じペースでゴブリン達を倒していく。
遠目から見たら、シンクロしているように見えたかもしれない。
不本意だが……。
それでも、今日の探索で得た共感に間違いはなかった。
お互いに最後のゴブリンを屠る。
視線は二人とも、ボスゴブリンへと移っていた。
ボスゴブリンは俺達と目を合わせたまま、ゆっくりと立ち上がる。
その手には、刃毀れした大剣。
姫川を見る。
彼女の身長と変わらない剣身。
パワータイプと推測する。
なら、俺との相性は悪いが姫川とは相性ガ良いと判断した。
「姫川、俺が引き付ける。お前は隙を狙え」
姫川は一瞬だけ俺を睨む。
「お前って、言うな!」
えぇ……、そこ?
これだからな、ツンデレ女子は困る。




