43話:釣り
レベルが上がったことで、それぞれで確認する。
姫川も確認を終えたのか、満足そうに微笑んでいる。
「なあ、ここからどうする?」
俺からの質問に彼女は考え込む。
レベル5を目指して、姫川の好きなようにさせていたが、正直に言って時間がない。
ちょっと、入り口から離れ過ぎてしまったので、東雲先生達の姿を確認出来ないほどだ。
「そうね。流石に時間がないから、次で最後にしましょ」
そして、姫川が指差した先にはこれまでで最大の群れ。
「あれは流石に数が多いんじゃないか?」
これまでの群れと違い、桁が違う。
「何?怖いの?」
俺を挑発するような視線。
幼気な厨二っ子を刺激する悪い視線だ。
「いいだろう」
俺の答えに満足したのか、歩き出す。
「ただ」
ひと言でその歩みを止める。
「ただ?何」
姫川の訝しげな顔。
「あの規模の群れに作戦もなく突っ込むのは馬鹿だろ」
俺の正論が姫川を貫いた。
「じゃあ、どうすんのよ」
どうやら聞く耳は持っているようで安心する。
「こういう時は釣りだろ」
「はあ?なんで魚なんか釣るのよ」
俺は人差し指を立てると、チッチッチッと振る。
この行動が姫川の琴線に触れたのだろう。
青筋を浮かべた。
「こういう時の釣りって言うのは、モンスターをおびき寄せることを言うんだ」
「ふ〜ん、で?」
「えっ!?」
反応、薄っす!
「で、どうやって釣るのよ」
「それは……あれだ」
俺は脳をフル稼働させて、厨二知識を探る。
「まあ、そこで待って見てろ」
徐ろに俺はゴブリンの群れに向かって歩き出した。
その群れは何故か、落ち着いていた。
これまでのゴブリン達は視界に捉えるなり、走り寄ってきたのにコイツらは何処か違う。
俺の直感が僅かに警報を鳴らす。
だが、姫川に啖呵を切った以上は引けない。
御堂久遠!男を見せます!
ゆっくりと距離が縮まる。
それでもゴブリン達は動かない。
ただ、俺を嘲笑うかのようにゲラゲラ、ギャアギャア言っている。
思ってた展開と違う!
……どうしたものか。
とりあえず、成るように成れだ!
「バーカ!バーカ!」
ゴブリン達のざわめきが止まる。
隣同士で首を傾げあっている。
くそっ!切実にスキル挑発が欲しい!
その場から動こうとしないゴブリン達に向かって、俺は最後の手段を取る。
ゆっくりとしゃがむと、適度な石を拾う。
「くらえ!石礫!」
正しいフォームから投げられた石は思った以上の威力だった。
ギャウ!ギャア!?
石が当たったゴブリン達から血が流れる。
目は充血したように赤く染まり、呼吸を荒げている。
任務完了。
俺は振り返ると、姫川の元へと走った。
背後からギャアギャアと騒ぎながら、追いかけてくる気配を感じて。
「どうだ!姫川!これが釣りだ!」
姫川の表情に変化は見られない。
「あっそう」
俺は隣に辿り着くと、サーベルを抜く。
「後、3回頑張ってね」
姫川の言う通り、3分の1だけが釣れていた。
まあ、群れ自体が釣れてたら、釣りにならないからな。




