42話:ツンデレの極意
ダンジョン実習は順調だ。
……たぶん。
姫川との関係に目を瞑ればね。
俺達は一旦、休憩をとることにした。
お互いに持参したペットボトルの水で水分補給。
微妙な沈黙と間がしんどい。
「ねえ」
ペットボトルを持ったまま、姫川が口を開く。
「今のペースじゃ、レベル5にはなれないわ」
うん、知ってた。
というより、俺はノリで返事しただけなんだが、姫川はマジだったんだな。
「あっちの方へ行ってみましょ」
指を指す先は、まだ進んだことのない方角。
俺は特に何も思うことなく、頷いた。
歩き始めて、10分。
入り口からはかなり離れてしまったがあまり討伐されていないのか、ゴブリンが群れていた。
「6匹ね、お互いに3匹ずつでいくわよ」
微塵も物怖じしない姫川がカッコよくも、怖くもあった。
レイピアを抜くと、駆け足で突っ込んでいく。
自信があるのは結構だが、怪我でもされては男が廃る。
それ以上に姫川推しの真由ちゃんに殺されかねない。
俺は急いで、姫川に並んだ。
「あんたは右から!私は左からよ!」
ゴブリンの手前で別れると挟み込むように立ち回る。
姫川が今日一番の加速を見せる。
目標が別れたことで、足踏みしていたゴブリン達。
2匹が重なったことを姫川は見逃さなかった。
長めの髪が後方へと流れる。
渾身の刺突。
2匹同時に貫くと、黒い霧へと変える。
マジかっ!?
思わず声に出そうになるが留まり、目の前のゴブリンの首をはねる。
向こうは一撃で2匹。
こっちは一撃で1匹。
負けたくない!
首を一閃した勢いのまま、俺はコマのように横回転する。
姫川は直線的な動きが多い。
その分、キレもある。
なら、俺は円の動きで対抗する。
回転が始点に戻った時、もう1匹の首もはねる。
これでスコアはイーブン。
決着はどちらが先に倒すかだ!
レイピアを弓なりに引き戻す姫川。
サーベルを上段に構える俺。
攻撃は同時だった。
「「……」」
突きのポーズのまま。
振り下ろしたポーズのまま。
俺達はお互いの目を見ていた。
そして、同時に武器をしまう。
でも、視線は逸らさない。
やがて、姫川は止めていた息を吐く。
「まあまあ、……やるじゃない」
「え……デレたの?」
「馬っ鹿じゃないの!なんで、あんたなんかに私がデレなきゃいけないのよ!」
「あ、ごめん。俺コミュ症なんで」
これは嘘ではない。
「ふん!」
姫川は機嫌を悪くしたのか、一人で違う群れへと向かって行った。
当然、俺は後を追いかける。
雰囲気は悪いがやることは変わらない。
ゴブリンの群れを切っては捨て、目に見えない屍を築いていく。
そんな群れを6つ狩ったところで、再び脳内にあの音が響いた。
ピコン!
『レベルアップしました!』
俺達は険悪な雰囲気など忘れて、ハイタッチしていた。
「いえ〜い!」
パチン!
その触れ合いで姫川は素に戻る。
「ちょっと!馴れ馴れしくしないでよね!」
う〜ん、ツンデレ女子の心はわからん。




