41話:吠え面
目の前にいるゴブリンに向かって、袈裟斬りをする。
筋肉も贅肉も薄い身体には深い切り傷がつく。
ゴブリンにとっては、致命傷。
それが決め手だった。
ピコン!
[レベルアップしました。]
おおっ!と久しぶりのレベルアップに興奮を覚える。
能力の上昇値は解っている。
それでも、ステータスを見ずにはいられないだろう。
「ステータスオープン!」
名前:御堂 久遠
職業:なし 称号:大物喰い、完全試合
レベル:3 0P
筋力:16+20
体力:20+20
魔力:3+20
精神:16+20
耐性:10+20
器用:21+20+1
敏捷:16+20
魅力:13+20
幸運:15+20
技能
直感 集中 刀剣術
装備中:無銘の軍刀
器用の指輪
やっぱり、器用値だけが3も上がっている。
「ちょっと!急に走らないでよ!」
姫川が追ってくるなり、文句を言う。
「それで、何かスキルは増えたの?」
「だから!言わないって!姫川、お前コミュ症だろ!」
「なっ!?」
姫川は顔を真っ赤にして、小さく震える。
やや俯いた顔で睨んでくる姫川は保奈美ほどではないが可愛いかった。
何も言い返すことなく、姫川は一番近くにいるゴブリンに向かう。
ああ、気を紛らわすために刺殺しに行ったんだなと思った。
そこからはまた、沈黙が続いた。
ダンジョン実習二回目の今日。
私は逸る気持ちを抑えていた。
それもそのはず、目標だった細剣術スキルを得たのは昨日。
あの憎ったらしい御堂に先を越されたのは悔しいけど、たった一日の差。
それに私には、"敏捷のピアス"がある。
レベルアップ時に敏捷の値がプラス1される特別なピアス。
誰よりもアドバンテージを得られる。
そのはずなのに――
一緒にペアを組まされた御堂。
憎ったらしいけど、ムカつくほど器用な奴。
私の動きを一回見ただけで、真似てくる。
だから、私も御堂の動きを観察する。
自然な動き。
無駄のない……違う。
無駄な力みが少ない動き。
まるで育成所でダンスレッスンを受けていた時のコーチみたい。
流れるような攻撃。
……悔しい。
アイドル育成所で、私は何人ものライバルに抜かれた。
ダンスでだ。
血の滲むような努力の末、やっと彼女たちに追いついたと思った。
なのに――
ここでも才能の違いを思い知らされる。
努力だけではなかなか埋められない差。
一日が24時間しかないのが、口惜しい。
気付かないうちに私は手に力を入れていた。
そして、ハッと気付く。
大事なのは平常心。
アイツみたいに力を抜くことが肝要なんだと。
でも、気付かされたことでまた、心に波が立つ。
アイツはゴブリンを一太刀で仕留めると、私に向けてドヤ顔をしてくる。
あー、イライラする。
見てなさい!その顔を吠え面に変えてやるんだから!




