40話:ぷっ
午後のダンジョン実習。
このために俺は昼食を腹八分目で抑えた。
――全ては姫川に勝つため。
「よーし!授業を開始するぞ」
号令に俺達は並ぶ。
「柴田、山口は俺と一緒にゴブリン狩りだ」
東雲先生はそれだけ言うと、今度は俺と姫川に視線を向ける。
「御堂、姫川は"二人"でゴブリン狩りだ」
「「はあ?」」
まさかのペア探索にハモってしまった。
「戦う順番は仲良く交代しろよ。柴田、山口行くぞ」
二人を引き連れ離れて行く東雲先生の背中を俺達は目で追っていた。
微妙な沈黙。
それを破ったのは、姫川。
「私たちも行くわよ」
俺は有無を言わせない彼女の後を追った。
「私が先に戦うわ」
絶対に譲る気のない宣言。
視界の先にはすでにゴブリンがいた。
ゴブリンが気付いて、走り寄ってくる。
姫川は落ち着いて、レイピアを抜く。
距離が縮まり、間合いに入った瞬間。
彼女は躍動した。
初めて、ゴブリンと戦った時よりも洗練された動き。
レイピアはゴブリンの顔を貫いていた。
「何、ボサッとしてるのよ。今度はあんたの番よ」
周囲を見渡せば、ゴブリンが続々と集まってきている。
「今日はレベル5くらいにはなりたいから、早く片付けてよね」
……どうやら本気でレベル5まで上げるつもりらしい。
ちょうど、俺もレベル5にしたかった気分だ。
近付いて来たゴブリンにサーベルで一閃。
首をはねる。
「いいね、レベル5になってやろうぜ」
俺の啖呵に姫川は鼻を鳴らして、顔を反らした。
「じゃんじゃんいくから、遅れないようについて来なさいよ」
なんで、こんなにも可愛気がないのだろう。
顔は可愛いのに……。
「何か言った!」
俺と同じ直感持ち――いや、女の勘だな。
ゴブリン達が迫る中、程良い緊張が身体を満たしていた。
気付けば、一時間が経過していた。
ゴブリンは途切れず現れるが、囲まれる程ではない。
交代制は上手く回っていた。
姫川の立ち回りを観察し、次の戦いに活かす。
俺の立ち回りで自身の動きを確認する。
お互いの動きが、次の戦いを洗練させていく。
「あっ……」
「どうした!?」
戦闘後、姫川が声を上げたことで何かあったのかと思った。
「べ、別に……レベルが上がっただけよ」
なるほど、次でレベルが上がるのか。
俺もレベルを上げたい一心でゴブリンを探す。
だが、遠い!
近くにいたゴブリンは粗方、片付けてしまった。
なので、俺は足早に向かう。
「待ちなさいよ!」
いきなりの静止に俺は振り返る。
「そんなに急がなくても、ゴブリンは逃げないわよ」
レベルが上がった者の余裕が憎い。
「それより、あんたに聞きたかったことがあるのよ」
ええ!?ここでまさかの質問タイム?
俺は思わず、身構えるが姫川は戸惑わない。
「あんたが覚えたスキルって、剣術よね?」
「あ、ああ、そうだけど……正確には刀剣術だがな」
姫川にしては、妙な質問だ。
「そ、そう……他には何があるの」
「ぷっ!」
姫川の意図が解った俺は思わず、吹き出した。
「な、何よ!」
「言うわけないだろ」
「!?」
俺はそれだけ言うと、ゴブリンに向かって走り始めた。




