12
女王の私室
風呂から上がり、リムの髪の手入れをしてから、僕は母上の私室まで来た。
少しためらったが、扉にノックをする。
「・・・母上、クルトです」
「入りなさい」
「・・・はい」
僕らが風呂から出た後に、母上も風呂に入ったのだろう。
寝るとき専用のような、薄い生地のドレスに身を包んでいた。
「まだ一緒に寝るには早い時間だからね・・・少し座ってお話しましょう」
「・・・え?」
「今日はお母さんの抱き枕になってね!」
「・・・」
「なんで複雑な顔するのよぉ・・・いいじゃない、照れるな照れるな~」
「・・・はい」
母上と一緒に寝ることに決定していたみたいだ。
リムを良くまいたな・・・さすが母上だ。
「プリンセスガードのことで、悩んでるんでしょ」
「・・・」
「私はさっきも言った通り、クルトには苦労させたくないのが本音よ。もし、クルトがどうしても嫌だって言うなら、本気出して違う案を考えようと思ってるの」
「道は一つじゃない・・・必ず他の案もあるとは思うの・・・でも、これはリムが初めて自分で考えた、後進にも有利な革命的な改革案でもあると思うの」
「・・・姫の兄弟姉妹がプリンセスガードになる、ってことですからね」
「そう。そして、この案が制定されれば、これからこの国で男が生まれようと城から出て行かなくて済むようになる・・・まぁ、訓練してもらうことになるけど」
「・・・姉妹の場合は、どちらか剣の適正がある方がなればいいですし・・・どちらもダメなら、どちらかが第二王妃に」
「そうそう、一人娘の場合は、クイーンガードの父親が兼任するってことにすればいいし・・・」
「・・・」
「ふふ・・・なんだか結局クルトの解決になってないわね・・・ごめんね」
「・・・いえ」
「・・・すごく遅くなっちゃったけど、今からでもあなたに家族に甘えさせてあげたいの。でも・・・一緒にいるには、今の規律じゃ厳しいの・・・」
「・・・」
「ん・・・あとはクルトの気持ち次第よ。私は・・・あなたの決めたことに絶対反対しないし、応援するからね」
「・・・はい」
「さ、そろそろ寝よっか。おいで・・・クルト」
母上のベッドに、一緒に入る。
母上はそれが当たり前であるように、僕の顔を胸に抱きしめた。
「苦しくない?」
「・・・大丈夫です」
母上は僕の頭を優しく撫で続けてくれた。
「ふふ・・・いいのよ・・・私に心を預けて・・・」
「・・・母上・・・」
「今までほったらかしにして、本当にごめんなさい・・・クルトは自分が辛いのにも関わらずリムを助けてくれて・・・本当は近くにいた私たちが助けなければいけなかったのに・・・それを見て私たちも気づいたの・・・このままじゃダメだって・・・それでいきなり家族らしいことをしてきた私たちも受け入れてくれた・・・本当に優しい子ね・・・クルトは」
「・・・」
「なんだか臆病になっていたのね・・・規律に縛られ過ぎちゃって・・・言い訳になっちゃうけどね・・・」
「・・・仕方ないことでしたから」
「・・・そのせいでクルトは年の割にこんなに大人びちゃって・・・人に甘えることも知らずに・・・それに自分の可能性を諦めていたでしょ?・・・自分には何も無いって」
「・・・」
「そんなことは無いのよ・・・確かに王族に生まれたからには普通の人とは違う生活になってしまうけど・・・可能性は無限大にあるんだからね・・・これからは・・・クルトがもしやりたいことを見つけたら、全力でサポートしてあげるからね・・・」
「・・・はい」
「お父さんもリムも、もちろん私も・・・いつでも・・・いつまでもクルトの味方だからね・・・無理しちゃ・・・だめよ?」
「・・・はい」
「クルトのやりたいこともそうだけど・・・恋愛についてもね」
「・・・恋愛・・・ですか」
「このお城だけでも、よく遊びに来る隣国のナルちゃんや、今日会った騎士団員のトモエちゃん・・・他にもたくさん色んな女性がいるから・・・クルトに気に入った子が出来たら、影ながら応援しちゃうし」
「・・・恋愛については・・・まだよくわかりません」
「もーぅ、本当に可愛いわね、クルトは・・・。もしお母さんのことが大好き過ぎて結婚したくなっちゃったら、お父さんとはすぐ別れてあげるからね」
「・・・父上泣きますよ・・・そもそも実の親子で結婚はできないのでは・・・」
「うふふ・・・」
「・・・ありがとう・・・お母さん・・・」
「く、クルト・・・!うぅ・・・ありがとう・・・こんな私でも・・・お母さんと呼んでくれて・・・ありがとう」
母上の涙を感じた。
母上は少し強くギュッと抱きしめてきたが、震えていた。
だから僕は、母上を抱きしめ返した。
しばらくすると、母上の震えも止まった。
「ありがとね・・・クルト。さぁ・・・お母さんの胸で安心して眠りなさい・・・」
「・・・うん」
リムとはまた違った安心感のおかげで、僕はすんなりと眠りにつくことができた。
朝。
「・・・ん」
「おはよう・・・クルト」
「・・・おはよう・・・ございます」
「いいのよ、もう少しまどろんでいても・・・まだちょっと早いし・・・お母さんはどこにも行かないから・・・」
「・・・いえ・・・大丈夫です」
うーん。
母上に甘えっぱなしだ。
やっぱり、ちょっと気恥ずかしい。
でもこの包容力は・・・ちょっと捨てがたかった。
「ふふ・・・クルトも若いから元気ね」
「・・・え?」
何のことか分からなかった。
「ま、朝だからねー。うんうん、健康健康」
「・・・・・・・・・!!」
「ふふ・・・一瞬、お母さんに女を感じているのかと思っちゃったのは秘密よ!」
「・・・(赤面)」
「・・・それとも、まだまだお母さんも捨てたもんじゃないってことかな・・・?胸もまだ垂れてないし・・・足だって・・・」
「・・・(赤面)」
「ふふ・・・いじわるしちゃってごめんね、クルト・・・さ、顔洗いに行きましょう」
ちょっとというか、すごく危ない発言だ。
ていうか、服越しとはいえ、親に見られるなんて恥ずかしいなんてもんじゃない・・・
ちくしょう・・・なんかちくしょうだ・・・




