第4章の16
「マタタキ、お前、体はずっとここにいたままだったぞ」
「えとね、気がついたら、オグラ堂の前にいたのです! でもふわふわーって感じで、動くとぴゅーってなるのですよ」
「何言ってるかわからないんですけど……」
「何言ってるんですかミズサキ。人魂ですよ、ヒ・ト・ダ・マ!!」
「はっはっは。人魂の正体はバクテリアとかガスとか色々説があってね」
「お前ら……もうしゃべるんじゃない!!」
とにかくこの能力はだめだ。使えない。透明人間のまま車にはねられるという最悪の事態に陥ってしまう。飛ばされた魂が、戻る肉体のないまま彷徨うなんて悲惨すぎる。
ということは念動力か空を飛ぶ能力か……
だが、この2つに完全に絞られたわけでもない。もしかすると、瞬間移動が当日成功するかもしれないじゃないか。
だめだ……全然選べない。確率は未だ33%のままだ。
『本気で助けたいのなら、確率を100%まであげるんだ』
アトロポスさんのあの言葉……だが、俺は一体どうすればいいんだ。
「とりあえず、今日はもう遅いし、解散にしようじゃないか」
ハバタキが突然そう告げた。
「え、ちょっと、それじゃあ明日のこと……」
俺がそう言うと、ハバタキは何か目配せをし合図を送ってきた。すごく気持ち悪……
マタタキを先に送り出すと、玄関先でハバタキはこう言った。
「明日、僕は3分先の未来が見える装置を持ってくる。マタタキが車にはねられる3時40分から前の時間、すなわち3時37分に1回、38分に1回、39分に1回ずつ3分後の未来を見るんだ。そのどれか1つにマタタキの生還が映し出されているはずだよ。そしてその正解を見たらすぐに、マタタキの携帯に使用する能力の名前を伝えるんだ」
「待て、38分と39分の3分後はもう車が衝突した後じゃないのか」
「いや、厳しい内容だが、マタタキがはねられて、倒れている状況は映し出されているはずだ。1分や2分で救急車は来ないしね」
「そうか。3つ全てを見れば、どれかにマタタキが生きている状況が映し出されているということか。念動力なら車がどこか違う場所へ動いている、瞬間移動ならマタタキが現場にはいない。そして、それ以外の場合なら飛行能力を使用したということだな」
「そういうことだ。ただし、未来を見る前にどの能力を使用するか強くイメージしておかなければばならない。全部違うイメージにしておかないとそのイメージどおりの未来は見れないからね」
「お前、賢いな……」
「はっはっは。明日は必ず成功させよう。まあ全てミズサキ次第だがね」
さりげなく、プレッシャーをかけるなよ。
「それはそうと、ハバタキ。お前に1つだけ聞きたかったことがあるんだ」
「何だい、遠慮なく言ってごらん」
「むかつく言い方だ。まあいい、実はさ、お前が3姉妹に渡したお土産って何なんだ?」
「ああ、そのことか。あれはね、僕が開発した『指を全く疲れなくするネイルチップ(つけ爪)』だよ。3姉妹の方達は毎日糸を操って、指を繊細に使っているだろう。少しは休ませてあげないとと考えたんだ。後、おしゃれの要素も付け加えたので女心もばっちりのはずさ。はっはっは。」
むむう、さすがイケメンヒットメーカー。OLさんとかの心をぐっと掴みそうだわ。
俺はハバタキを送り出し、部屋の中で明日のことを考えた。
『ここまで来たんだ。もうやるしかない』




