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マグローザ漁船だけは嫌だ!借金100万の元社畜勇者は、タローマン製初期装備と真の勇気で炎上系偽勇者のヤラセ配信をぶっ壊す!   作者: 月神世一


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EP 3

利回り5%のインデックス運用。NISAでFIREを目指す守銭奴聖女

「ちくしょう……どいつもこいつも、人を見た目で判断しやがって……!」

勇者登録から数時間後。

冒険者ギルドの片隅で、俺はルナミス軍から払い下げられた『1型レーション(缶詰)』の空き缶に水を汲み、ちびちびと啜りながら絶望していた。

魔王を倒して1億円を手に入れる。

目標は壮大だが、現実は非情だ。ギルドでパーティメンバーを募集しようにも、俺の『タローマン製ガテン系防具(ギイギイ鳴る)』を見た瞬間に、魔法使いも戦士もスッと目を逸らして去っていくのだ。

「あのさぁ、ユニークスキル【ブレイブ】持ちなんだけど……」と声をかけても、「あぁ、あの登録費払えば誰でも貰えるヤツね。俺持ってるし」と鼻で笑われる始末。

俺のステータスは現在、底辺も底辺。

なぜならこの【ブレイブ】というスキルは『民衆からの支持(好感度)』で能力が上がるインフルエンサー・バフだからだ。田舎から出てきたばかりの知名度ゼロ、しかもさっき神像に剣を投げつけてドン引きされた俺の支持率など、スライム以下である。

「このままじゃ魔王どころか、ゴブリンにすら負ける。最悪、来月にはマグローザ漁船行きだ……」

タコ部屋労働の幻影に震えていたその時。

ギルドの掲示板の前で、一際目立つ純白のローブを纏った少女が目に留まった。

透き通るような金糸の髪に、慈愛に満ちた(ように見える)青い瞳。

胸元にはルチアナ教会の十字紋章が輝き、その佇まいはまさに『聖女』そのものだった。

(聖女……! 後衛の回復職がいれば、俺の生存率は跳ね上がる!)

俺は藁にもすがる思いで、彼女の元へ駆け寄った。

「あ、あの! すいません、俺とパーティを組んでくれませんか! 俺、勇者のユートって言います!」

聖女の少女は、手元で読んでいた小冊子からパタンと目を離し、俺をジロリと上から下まで値踏みするように見つめた。

「……勇者? あなたが? その装備、タローマンの資材館3階、一番下の棚でホコリ被ってる『初心者ガテンセット(銀貨10枚)』じゃない。安物特有の油臭い匂いがするわよ」

「なっ!? なんでパッと見でタローマン製だって分かるんだよ!」

「ふん。かく言う私のこの神聖なローブも、タローマンの作業着コーナーで買った『防刃・防汚加工 撥水エプロンワンピース(銀貨2枚)』だもの。血返りが良くて洗濯が楽なのよ。――で? どこの農家の三男坊か知らないけど、私を雇うメリットはあるわけ?」

清楚な見た目から飛び出した、あまりにも世知辛いホームセンタートークに俺は言葉を失った。

しかも手元で読んでいた小冊子の表紙には、聖書ではなく『ルナミス帝国推奨! 初心者から始めるNISA(Neo Imperial Savings Account)~複利で目指す自由な老後~』とデカデカと書かれている。

「メリットって……あんた聖女だろ!? 人を助けるのが使命とかじゃないのかよ!」

「ボランティアで腹が膨れるならやってあげるわよ。私はクレア・イリスパトラ。ルチアナ教会認定のブロンズランク聖女よ。私の目的はただ一つ――魔王討伐の懸賞金1億円を山分けして、年利5%のインデックス運用にぶち込み、一生働かずに安全な帝都で悠々自適な余生(FIRE)を送ることよ」

クレアは小冊子で俺の胸をドンッと突き、ニヤリと笑った。

「人生に必要なのは、愛でも勇気でもないわ。圧倒的な元本と複利の力よ。そのための捨て駒……じゃなくて、ビジネスパートナーを探してるの」

「……」

なんだこの女。聖女の皮を被ったドス黒い投資家じゃねえか。

だが、俺は前世の『経営学部』で培った直感で理解した。こういう打算で動く人間は、絶対に裏切らない。利害さえ一致していれば、一番信用できる。

「……奇遇だな。俺の目的も金だ。俺は糞女神に100万の悪徳ローンを組まされてて、払えなきゃマグローザ漁船行きなんだよ。1億を手に入れて、借金を完済して、残りの金でルナキンで一番高い肉を食って女と遊ぶ!」

「……正直ね。口先だけの『世界平和』を謳う偽善者より、よっぽど信用できるわ。いいわ、交渉成立よ。懸賞金は折半。経理と交渉は私がやるわ。素材の買い叩きは1銅貨たりとも許さないから」

俺たちはガッチリと、血も涙もないビジネスライクな握手を交わした。

「よろしく頼むぜ、クレア。回復魔法は使えるんだろ? 後衛でしっかり俺をサポートしてくれよな」

俺がそう言うと、クレアは「は?」と怪訝な顔をした。

「もちろん回復魔法は完璧よ。勇者あなたが死んだら、私の1億円(老後)が遠のくでしょ。でも、誰が後衛だなんて言った?」

「え? だって聖女って後衛職のヒーラーじゃ……」

「私のユニークスキルは【シールド】よ。周囲3mの物理・魔法攻撃を完全に無効化し、さらに表面に『1億ボルトの電流』が流れる無敵のバリアを展開できるの」

「……防御力高すぎねえか?」

「でしょ? ――つまりね、無敵の硬度と1億ボルトの電流を拳にピンポイントで圧縮すれば、そのまま最強の物理攻撃力に変換できるってことよ」

クレアは可愛らしい顔で笑いながら、己の拳をボキボキと鳴らした。

「相手の懐に飛び込んで、バリアを展開しながら顔面をタコ殴りにする。それが私の戦闘スタイルよ。さあ、行くわよユート! 私のNISAの元本を稼ぎに、まずは魔獣を狩り尽くすわよ!」

……こうして。

借金返済のために前線を張る社畜勇者と、FIREを目指してバリアで敵を殴り殺す脳筋聖女という、アナステシア世界で最も金に汚く、最も現実的なパーティが結成されたのだった。

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