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クラタ ユリ様 6列目 D レギュラー会員
「今度は年末だね」
出発案内の電光掲示板の前で、あっさりとそう言う。
彼はさみしくはないのだろうか。
遠距離恋愛も3年目に入って、慣れたつもりだった。
お互い慣れすぎたのかな。
最初の頃はバスターミナルまで迎えに来てくれていたのに、ここ最近は彼の最寄り駅の改札までしか来てくれなくなった。
見送りだって、バスターミナルまで来てくれたのは1年ぶり。
それも、ターミナルの近くで食事をしたいと、スウェットでソファーに突っ伏した彼を、私が無理矢理に連れ出した。
彼の手を強引に取り、バス乗り場へ歩く。
バスの入り口に足をかけたところで、「お見送りですね?まだ出発まで10分弱あります。ギリギリまでお話しして頂いて大丈夫ですよ。お声がけに伺います。」と運転士さんが言う。
なりゆきで通路の端に移動する。
「優しい運転士さんだね。」
すっとぼけた顔にだんだんイライラしてくる。
「別れよう。」
気付けば、いつか言うつもりだった言葉を、予定になく口走っていた。
「え…うん。わかった。」
わかった?わかったの?なにそれ?そうなんだ。
『じゃあね。ありがとう。』
そんな言葉だけはシンクロする。
彼が背を向けるのと同時に、私はバスに向かって歩き出した。
さようなら。今日が最後の夜行バスだ。




