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冤罪  作者: ニベア王子
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(第64回)検察取調べ

警察から検察にターゲットは移されると聞いた、警察は起訴の方向で送り出したが検察が起訴に踏み切るかは保証できないと警部が言っていた。さてどうなることやら

明朝検察に移動すると聞いた翌早朝、弁護士が現れた。

「先生、警察に起訴で押し切られ、申し訳ありませんでした」

「いやいや、罪は認めたのだから起訴されて当然でしょう、先生は最終的な判決を

軽くしていただくことに、専念してください」

「はい、そうですよね・・・」

「何か心配事が有りそうですね」

「いえ、立証できませんでしたが囮捜査までして逮捕した先生の刑罰に警察が斟酌してくれるとは思えなくて」「そんなことですか。そもそも先生はもと検察官なのですから検察にこそ人脈がおありでしょう。検察は独立機関ですから警察が厳罰を望んでも、はいそうですかとはいかないはずです。今度こそ腕を振るってくださいよ」「そう、ですよね。私は何をくよくよしていたんだろう。ここの検事正は私が検事になった時の指導係で、他の検事さんはみな後輩で顔見知りですから今度こそ頑張ります」

「それを聞いて安心しました。よろしくお願いします」

面会を終えるとその足で検事正の携帯に電話し、面会のお願いをした。幸い今日は開いており、昼でも一緒にということで快諾いただけた。よしよし、流れはこちらに向いてきたな、なんせここはホームグランドだからな。

昼食が終わり検事正が箸を置いたので弁護士は話始めた。

「先輩にはこの検察で一から指導いただいて以来、5年ぶりですね」

「そうか、もう5年経ったか、早いもんだな。でも検察を辞めてからイソ弁を経ずにいきなり事務所をもって、初めはどうなることかろと思ったが順調そうで良かった」

「ありがとうございます。同じくヤメ検の大先生が親切に色々教えてくださったので、クライアントにも恵まれ、何とかやって来れています。今回の被疑者も大先生のご紹介でお知り合いになり、先生の知り合いということでご信用いただけ、顧問契約していただけました。」

「いやあ、それは謙遜だろう。人を見る目が肥えている政治家に認められたのだから、何かしら君に光るものを見つけたんだろう」「恐れ入ります、ところで今回のご担当はどなたをお考えですか」

「いやあ、相手が相手なんで、私が担当すべきだと思ったんだけど、色々多忙なので次席検事におねがいすることにしたよ」(げっ、あいつか。頑固で融通が利かず、おまけに政治家嫌いの・・・)「まあ、そう露骨にイヤな顔しなさんな。罪は認めていて減刑狙いだろう今回は」「まあ、そうなんですが次席は有名な政治家嫌いなので、心配が顔に出てしまいましたね」「おお、よくおぼえていたな。とかく、大臣経験者だと、普通の検事なんて見下して聞き取りに臨むから、政治家ペースになりやすい。その点、彼なら自分のペースを乱さずに取調べがすすめられると思ったんだよ」「なるほどご慧眼です」(確かにこの人選は妥当=こちらに不都合=であろう)

「まあ、君も古巣でやりやすいと期待してたかもしれないが、私が担当だとどうしても君に手柄を立ててほしい、とか、雑念が涌いてくるからねえ」(それを当てにしてたのに・・・)

残念な収穫のみで会食を終えた。早速依頼人に状況を報告すると

「何と、検察はこちらの手の内はお見通しというわけか、先生、どうする」

「私もたった今入手した情報なので、方策はこれからです」

「ワシも党の支援があれば法務大臣から最高検に働きかけを頼めるんだが」

「いえ、仮に支援があってもそれはやめてください。話に出た次席は、そういう工作を最も嫌うタイプなので、逆効果になります」

「そうか、それは良いことを聞いた。自重しよう」(自重も何も、逮捕後、一人として党関係者は面会に来ていないのだから先ほどの働きかけも、おそらく彼の見栄だな)依頼人の面会を終えて事務所に戻ると、何となく不安が込み上げてきた。まさか警察は次席検事の性格を利用して、弁護側は囮捜査だとか匂わせてくるから気を付けろとか入れ知恵しないだろうな。囮捜査は立証できれば確かに無罪確実だけど、ここまでの調査で全く怪しい点が出てきていないし

次席検事の性格からして、根拠薄い状況で匂わせたりしたら逆効果間違いなしだ。まあ、まずは先方の出方を見てから考えるとしよう。これを結論としてこの日は無策で眠ることにした。

翌日から聞き取りが始まった。最初は事実確認、警察から送られてきた調書を読み上げ、異議が無いかを確認、無論「その通りです」と認めた上で、「深く反省してます。被害者に直接謝罪したい」と言上した。無論直接謝罪が認められるはずもなく「法廷で会う機会があるので、その時お詫びすれば良いでしょう」と言われた。やはり事前に会って、囮捜査の証拠入手は無理なようである。罪をすんなり認めたので、このまま起訴されて検察終了と思った刹那

「ところで、他に同じような被害者はいませんよね」と言われ、先生も自分も頭が真っ白になった。おもむろに先生が口を開き「勿論、こんなことを何度もやるほど悪人ではないつもりです」とスラスラ返答。やはり政治家恐るべしである。この回答を次席検事がどうとらえたかはわからないが、とりあえずその日の聴取は終了となった。聴取後、先生と雑談

「いやあ別件を急に切り出されて驚いたよ」

「私もです」

「しかし、あっさり引き下がったからもしかして水面下で証人が居るとか心配しなくていいよね」

「正直、太鼓判は押せません。警察が何か握っていてそれを検察が引き継いでいる可能性は大いにあります。警察は囮捜査を隠し通すことに集中してそれを突破したので、検察で止めを刺すつもりかもしれません」

「そんなあ、他人事みたいに言わないでくださいよ」

「いや、先生には余罪ありと伺って居るのと、警察が囮捜査までやる理由は過去の被害者あってこそだとも思えますので。先生、過去の被害者の名前や連絡先覚えてますか」「ええ!覚えていたとしても、メモとかスマホにメールとか残してるはずないでしょ、絶対に復旧不可能という消去アプリで消しましたよ。もちろん、記憶にも無いです。「それをお聞きして安心しました。ところで先生のスマホに、その消去アプリが残っていたりしませんか」

「おお、アプリは消してない状態でスマホ渡しちゃいましたね」

「なるほど、そうすると証拠隠滅を疑われる状況ではあると認識したほうが良いですね」

「すみません。うかつでした。今回も表面化しないはずだったので、また消去で使うつもりでした」

「え?じゃあ本件でのメールやり取りなどは残っているんですか」

「はい、現行犯逮捕でスマホもその場で没収されたので、何も出来ていません」

「うーん、そうするとかくされた過去被害者が居るとして、今回のやり取りを見せたら「あ、自分の時と同じ」などと言われ、通信記録を根こそぎ掘り起こされると過去悪事が一斉摘発、ということになり=今回初犯につき減刑=というストーリーはもはや無理ですね。先日お話窺っただけで、過去5件ほどあったとのことでしたが、あれ本当ですか。すると先生は額に汗を滲ませ

「いや、実のところこの5年間で10人以上、正確には覚えてないですが少なくとも10人は居ると思います」

これを聞いては、ため息をつくしかなかった。

その時、ノックの音がして、次席検事が入室してきた

「いやあすみません。先ほど聴取で使ったボイスレコーダを止めずにそのまま

置き忘れてしまって」私も先生も顔面蒼白「おや、顔色が悪いですが、そういう会話が録音されているわけですね。しかし、これは私のミスによる録音だから。今日の分は消しますね」そう言って、その場で録音ファイルを消去して、退室した。

「いや、生きた心地がしなかった。あの人はなうわさ通り融通が利かず、でも真面目ですね」「そうですね、おかげで助かりました」とは言ったものの、先ほどの消去ファイルなど簡単に復元できるだろう。意図せず録音したものだから違法な入手方法でもなく、おそらく証拠として使えると思われる。そういうと、先生は「ああ、もうだめだ、このまま自分は寿命が尽きるまで牢獄暮らしになるのかなあ」と悲嘆に暮れている。自分は、犯した罪は償わなければいけないのですよ、と言ってやりたかったが、それでは弁護士業が成り立たないので「先生、まだそう使われると決まったわけではないので、先回りして悪い方に考えるのは止めましょう」

「うん、そうだね。明日の聴取にも同行いただいて、悪い方に持って行きそうだったら対処を相談することにしましょう。これを結論として聴取1日目を終了とした

しかし、あのレコーダー本当に置き忘れたのかな。まさか・・・

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