第五話∶鬼の子供
都には古くから帝に仕える一族がいました。
彼らは賢く、その知恵で帝の政を支えていました。
しかしある時、帝は間違いを指摘されたことに怒り、彼ら一族を遠くの小さな島に追放してしまったのです。
それから時間は流れ、その子、その孫の時代になっても一族は虐げられ続けました。
最初は帝の命令でしたが、今はもう理由など誰も知りません。
寄ってたかって彼らを人と扱わず、蔑み、奪い、気まぐれで命を奪うことさえありました。
人々にとって大切なのは帝の命令という理由よりも、自分達に都合が良いということでした。
虐げられた一族の子孫は生まれた時からそうだったから、なぜ自分達が他の人々より酷い扱いを受けるのか知りませんし、それを口にすれば余計に酷い目に遭わせられるので、何も言わなくなりました。
しかし、それは『無かったことになった』とは全く違うことなのです。
だからある日、あの人が彼らの前に現れました。
「あなたのやりたいことはなんですか?」
「その為に何を差し出しますか?」
とても静かで美しい声でした。
「私達がやられてきたことをやり返したい。世界を踏みにじる暴力が欲しい。その為になら何だって差し出しましょう。」
「では、あなた方の大切にしているものはなんですか?」
「知恵、品性、子供です。」
あの人はゆっくりと手を前に出しました。
大人が⋯こっちに来る⋯⋯。
みんな⋯殺されて⋯⋯食べられ⋯。
大人が⋯⋯⋯膨ら⋯んでいく⋯⋯。
雉が悪夢にうなされて目覚めたのは、鬼ヶ島の見える丘の上です。
桃太郎達は夜になったら筏で潜入する準備を進めていました。
犬と猿がまた喧嘩をしています。
夕食は精のつく獣を狩った方が良いと言う犬と、折角海が近いのだから魚を食べない選択はないと言う猿。
そんな二人を雉と桃太郎は穏やかな眼差しで見つめていました。
「ねぇ、どっちが好きですか?」
「え⋯⋯どっちも好きかな。」
「あたしも!じゃあ⋯⋯」
雉は目を細めました。
「ねーぇ!今日は両方食べちゃおうよー!!」
狩りに出かけようとした犬はふと立ち止まり、猿と雉に声をかけました。
「犬、猿、雉か⋯。なんか、良かったよな。」
「あぁ。もう、俺はこれがいい。」
「はいはい。犬さん、猿さん、そろそろ晩御飯の支度よろしくねー。」




