第9話 花の女王・フレイ
(この方が、フレイ様…………)
そう思いながらローレルは花の小人達と戯れるフレイを見つめていると、フレイがローレルに気付いた
「あら、こんな所に人間とは珍しい。どなたかしら?」
その妖艶さに思わず見惚れていたローレルは我に返り、慌てて自己紹介をする
「は、はじめまして!ローレルと申します。マディソン様の屋敷に住んでいます」
マディソンの名を聞いたフレイは眉をピクリと動かす
「成る程………では貴女が噂の番と言う事ね」
「は、はい……そういう事になります………」
そう言ってチラリとフレイの顔を見上げる
見た所敵意は無さそうだが―――かと言って友好的とも言えない雰囲気だった
するとフレイがクスリと笑う
「ふふっ………マディソンもどうしてこの様な人間をお側に置かれたのか…………まあ一時の気の迷いでしょう。そのうちすぐに飽きが来るわ」
そう言ってフレイの持つ鋭い爪がローレルに触れそうになった瞬間
シュルシュルシュルシュル!
まるで接触を拒むかの様に地面から蔦が伸び守るようにローレルに巻き付く
そしてその一部が人の形を形成し、マディソンへと変わった
「マディソン様!」
マディソンはフレイを牽制するかのようにローレルを後ろから抱きしめ、睨みつける
「私の所有物に何をしているフレイ」
いつもより低く重い声が森の中で響き、緊張が走る
フレイは手を引っ込めると、再びクスリと笑みを浮かべた
「何もしてませんわマディソン。ただ番様にご挨拶をしただけです」
そう答えると、フレイはいたずらっぽく肩をすくめた
しかしマディソンは警戒を解かない
その様子を花の小人達が怯えるように見つめる
『マディソン様がお怒りだ』
『怖い怖い』
『森ごと消されてしまう』
『早くここから逃げよう!』
マディソンによって守られているローレルを見たフレイは、口を曲げ面白く無さそうに小さく息をつく
「私はもう行くわ。では番様、また会う時まで、ごきげんよう」
そう言って踵を返し去っていくと、花の小人達も慌てて後を付いていく
フレイ達が完全に視界から消えるのを確認すると、マディソンは両手を広げローレルを解放した
「マディソン様……」
「フレイとはあまり接触しない方がいい。何をしてくるか分からぬ」
マディソンは厳しい表情のまま、ローレルに警告すると、ローレルは頷く
するとマディソンがローレルの頬に触れた
「?………どうされましたか?」
「いや、傷は付けられていないようで良かった」
そう言うと手を離し踵を返した
(心配してくれたのかしら……?)
ローレルは不思議に思いながらも、ゆっくり森を後にするのだった
―――――――――
その頃―――
住処に戻ったフレイは面白く無さそうな顔をしている
「マディソンは何故あの様な人間に構うのか………困ったものだわ」
大きなため息をつくと、あの時のマディソンを思い出す
あの冷徹な彼があんなにも他人に―――しかも人間に対し執着を見せるのは初めてだった
忌々しい記憶を消すように頭を振ると、フレイは顔を上げる
「……まあ良いわ。あの人間の小娘に少し自分の立場というのを分からせてあげましょう。そうすれば自ら身を引くだろう」
―――――マディソンは私のものなのだから
フレイは口を歪ませ笑みを浮かべるのだった




