第10話 苛立ち
ハルマスの森にて、ローレルが傷付いた動植物達がいないか探していると、ある植物の葉が目に付く
「もしかしてこれって………」
何処か見覚えのある葉を目にしたローレルは、思い切って葉を掴み引っ張ってみた
すると
「ピャーッ!!」
元気な叫びと共に、ミニマンドラゴラがするりと抜けたのだ
「やっぱり!ミニマンドラゴラだわ!」
以前、マディソンが従えていたミニマンドラゴラ達を思い出し、ローレルは嬉しそうに見つめる
「でもこの子はマディソン様が飼っていたのとは違って色が白いわ………」
そう言いながらそっと地面に置くと、ミニマンドラゴラはローレルの側を離れずベッタリと居座り始めた
「まあ!鳥のように初めて見たものが主だと刷り込まれているのかしら?」
そんなミニマンドラゴラを愛でていると、背後から気配を感じた
振り返ると、そこにはフレイと、取り巻きの花の小人達が佇んでいた
「フレイ様……!おはようございます」
慌てて立ち上がり挨拶をするも、フレイは黙ったまま、ローレルを見つめる
不審に思っていると、やがて彼女は口を開いた
「………時に人間よ。お前はなぜマディソンのもとにいる」
「どういう事ですか?」
「マディソンは自身に利益がなければ即抹殺する様な男。それにも関わらず、お前のような取り柄も無さそうな小娘が何故隣にいるのだ?」
投げかけられた疑問に、ローレルは戸惑いながらも答えた
「………正直、私にも分かりません。この結婚はマディソン様から申し込まれたものですから……利害の一致だけで成立している、形だけの夫婦かもしれません」
そう言うとローレルはフレイを見据える
「でも、こんな私をマディソン様は許してくださっています。今は形だけでも、過ごす時間を共にしていれば、夫婦の絆は必ず芽生えると信じています!」
明るく答えるローレルを見たフレイは、一瞬口を曲げると
こう続けた
「………確かに当人同士は良いのであろう。だが、周りが納得すると思うかしら?」
「え?」
「ただの人間の小娘とハルマスの主では、釣り合いが取れていない。そこを突く輩は一定数現れるであろう。その時辛くなるのはお前よ人間。私はお前の為に言っているのだ」
フレイの表情には同情が滲んでいた
するとローレルの足元から花の小人達がよじ登ってきた
『人間にマディソン様は相応しくない!』
『みんなそう言っている!』
『大人しく身を引け!』
『そうだそうだ!』
そう言い放ちながらまとわりつく小人達を、振り払う訳にもいかず、ローレルは困り果てる
その時だった
『わー!!』
『きゃー!!』
地面から蔦が伸び小人達を捕まえたのだ
マディソンだった
『ローレルに余計な事を吹き込むな』
そして乱暴に小人達をフレイのもとへ投げていく
『ローレル。屋敷へ戻れ。フレイといるとろくな事がない』
「は、はい!」
ローレルは慌ててフレイに会釈をすると、足早に去っていった
その後ろ姿をフレイは唇を噛み締め見つめていた
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それ以来、フレイ達がローレルに何か仕掛けると必ずマディソンの助けが入った
仕掛けると言っても、嫌味や小人達のいたずら程度のものだったがーーーマディソンはローレルの微かな変化に察知し、それらのフォローに回ったのだ
そしてもう1つ、フレイにとって想定外な事があった
他の植物人外や植物生物達からのローレルの評価がまずまず良かったのだ
純粋に傷付いた動植物達を癒し、作物の実りや繁栄を願う彼女の態度に、医師のルシアンを始めとする者達が好意的にローレルに接するようになり、懐疑的だった者達も次第に態度を軟化していったのだ
フレイ達だけが気に食わないこの状況に、彼女は更に苛立ちを募らせるのだった
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「クソっ!マディソンの小娘への執着は予想外だわ!何故あんな貧相な小娘がいいのかしら!」
フレイがいつものように苛立ちをあらわにしていたその時だった
ガサガサッ
茂みから音が聞こえ振り返ると、そこには軍服をきた人間達が数名姿を現したのだ
フレイを目にした騎士達は身構えつつも、彼女の目を逸らさずにいた
すると、フレイの目の前に、騎士達をまとめる騎士隊長が前に出た
「………何者だお前達」
フレイが眉をひそめ尋ねると、騎士隊長が口を開いた
「俺達はセルニグル王国の騎士だ。ローレル・フェルトンという女を始末しに来た。何か知っている事はないか?」
騎士の言葉を耳したフレイは目を見開くと、次の瞬間嬉しそうに口元をゆがませた
「………ほう。あの人間の小娘を探しているのか」
「!ーーー知っているのか!!」
部隊長が思わず声を上げると、フレイは意味有りげに笑みを浮かべる
「勿論。私の言う通りにすれば、あの小娘をお前達のもとに引き渡そう」
フレイはこの降って湧いた好機を利用する事にした
ーーーーーマディソンが執着するのなら、出来ないように小娘をこの世から消せば良い
黒い企みを隠したまま、フレイは兵士達に近付くのだった




