第11話 善意の果てに
ある日の昼下がり―――
ローレルは前回手に入れたミニマンドラゴラと共に森の中を歩いていた
青々と生い茂る木々を眺めながら進んでいると、目の前に野生のミニマンドラゴラの群れを発見した
ローレルは肩に乗るミニマンドラゴラに話しかける
「パール。あそこに貴女の仲間がいるわ。遊んでくる?」
「ピッ!」
元気よく返事を返した白のミニマンドラゴラ―――パールはローレルに降ろさせると群れに向かって走り、前に立った
「ピッ!ピピピピッ!ピッ!」
身振り手振りで何かを訴えるパール
野生のミニマンドラゴラ達は、突然現れたパールを警戒しつつを見つめている
すると
『ピッ!』
群れにいた一匹がパールに手を差し出した
「ピッ!」
パールがその握手に答えると、それを待っていたように周りのミニマンドラゴラ達が『『『『ピャーッ!』』』』と叫んだ
どうやら歓喜の叫びだったようだ
(他のミニマンドラゴラ達と仲良く出来て良かった)
ローレルはそう思いながら、それを微笑ましそうに見つめる
すると茂みからガサガサと音が聞こえた
振り返ると、いつもフレイの後ろをくっついている、あの花の小人達だった
「あら?小人さん達どうしたの?」
ローレルが尋ねると小人達がモジモジしながら口を開いた
『フレイ様がごきげん斜めなの』
『だから機嫌が直るようにフレイ様が好きな美桃の実をあげたいの』
『でも私達じゃ届かなくて』
『代わりに取ってほしいの』
そして4人は『お願いします』とローレルに頭を下げた
お願いされたローレルは困っていた
(マディソン様からフレイ様とその取り巻きとは接触するなと言われているのだけど……でも………)
チラリと花の小人達を見つめる
見た所、心からのお願いの様に彼女は感じ、了承する事にした
「………分かったわ。出来るだけ取ってみるわね。でも無理そうなら諦めるわよ」
そう言うと小人達の顔が明るくなる
『『『『ありがとう人間!』』』』
お礼を述べられ、ローレルは笑みを返した
―――――――――――――――――
小人達に連れられやって来たのは湖のほとりだった
すると赤花の小人が指を指す
『あれが欲しいの』
そのさきを見ると、長く伸びた枝に1つ、桃の形をした金色の樹の実が付いていた
しかし湖の方に伸びた枝の影響で採るのが難しそうな位置にある
「成る程、これは小人さん達じゃ採れないわね。ちょっと待ってて」
ローレルはパールを地面に下ろすと、木の幹に掴まり、できる限り身を乗り出し手を伸ばした
「――――あと、ちょっと…………」
ローレルは息を吸い、更に手を伸ばす―――
すると美桃の実を掴むことが出来た
「やった!」
喜びのあまり、ローレルは思わずそのまま振り返った
「採れたわ小人さ――――」
トンッ
その時、足元を何かに押された感触があった
「きゃあっ!」
バシャンッ!
踏ん張りが利かなかったローレルはそのまま湖に落ちてしまった
「ピーッ!」
パールが落ちたローレルに心配そうに声をかける
すると
『『『『クスクスクス………』』』』』
静かに笑う声が聞こえた
花の小人達だった
『やったぁ!』
『引っかかった!』
『大成功!』
『ざまぁみろ!』
喜ぶ小人達を見たローレルは善意を踏みにじられ、怒りが湧き思わず叫んだ
「もう!貴方達!今日という今日は―――――――
」
「いたぞ!ローレル・フェルトンだ!」
突如、聞き慣れない声が響き渡り思わず振り返ると、そこにはセルニグル王国の軍服を着た騎士達が現れた
ローレル達を囲い込むように立ち塞がる
そして、騎士隊長と思われる1人がローレルの前に出ると、彼女は静かに口を開いた
「貴方達はセルニグル王国の………殿下の指示ですか?」
「そうだ。聖女と偽った報いを受けてもらおう」
「私は偽った事などありません!」
声を張り上げ反論し、その勢いのまま更に彼らに問いかけた
「貴方達はおかしいと思わないのですか?殿下の仰る事が!5歳で神力を見込まれ教会に引き取られ、12歳で聖女に任命されて以来、これまで王国の平和と繁栄を願い祈り続けた私が、何故今になって偽物などと言われなければならないのですか!?」
ローレルの必死の訴えに、騎士達は思わず顔を見合わせざわめき出した
しかし
「……い、今更貴女が何を喚こうとも、これは殿下の命なのだ!悪く思うな!」
騎士隊長が半ば開き直りのように声を荒げると、兵士達は剣を引き抜いた
そして襲いかかってくるその時だった
ボコボコボコボコッ!
土から何かが這い出てくるような音が聞こえ、その場にいた全員が動きを止めた
「な……何?あれは………」
ローレルが見つめる先には、刺々しい長い蔦が幾つも土から伸びていた
突然現れた生物を全員唖然として見つめるのだった




