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食人蔦に愛された聖女〜追放された聖女は死の森で居場所を見つける〜  作者: mai


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第36話 失墜と決意

突如現れた蔦の塊に、2人は唖然と見つめていた


するとローレルがハッと我に返り辺りを見渡し始めた


「マディソン様……!マディソン様は何処にいるのかしら!」


ローレルは思わず蔦の塊に向かって走り出す


「あ、ちょっと!」


レイラの静止も聞かず、ローレルは蔦の塊に到達すると、中を探るようにマディソンを探し出した


「………蔦だらけで姿が見えないわ」


蔦をかき分け探していると、ふいに声が響いた


『私はここだローレル』


下を向くと、そこにはかつて妖精と呼んでいた緑の塊がローレルの足元にいた


「マディソン様!またそのような姿になってしまったのですか?」

『ここはハルマスの森ではないからな。出せる力も限られていたのだ。黒幕と刺客を運んだ所で全て尽きてしまった』


マディソンはローレルによじ登ると彼女の掌に収まった

小さくはなってしまったが、元気なようだ


それを見ていたレイラは怪訝な表情を浮かべている


「えっ……その緑の気味の悪い生き物がハルマスの主と同一人物なの……?」

「ええ。こちらが本来のお姿なの。可愛らしいでしょ?」


ニコリと返すローレルにレイラは顔を引きつらせた


(やっぱり変な子だわ…………)


レイラが内心そう思っていると、ローレルはマディソンを見つめ目を細めた


「でも良かったです………もしもの事が起きたらどうしようかと思いました………」

『この程度で私は死なん。そもそも私には心臓と呼べる核が2つある。それを全て破壊しない事には死なぬのだ』



そう言ってマディソンがシュルシュルと細い蔦を伸ばし、ローレルの頬に触れると、続けてこう述べた


『それに、言ったであろう。"必ず戻る"と』


ローレルは一瞬目を見開くと、穏やかな笑みをマディソンに向けた


「マディソン様………」


そんな2人を離れた所で見つめていたレイラは、呆れたようにため息をついた


すると、上から声が降ってきた


「き………貴様ら……こんな事をしてただで済むと思うなよ…………」


見上げると、塊の中からアッカーソン侯爵の顔が出ていた

それ以上は動けないようだが、恨みがましい目でローレル達を見つめている


『まだ起きていたのか。人間のくせに随分と頑丈なのだな』


マディソンが呆れ気味に感心していると、アッカーソン侯爵はハルマスの主を睨みつけた


「フン、今に見てろ!ここから出て貴様らをこの世から消し去って――――」


アッカーソン侯爵が罵倒しかけたその時だった


「――――――そこまでですアッカーソン侯爵。貴方の悪事は全て把握しています」


突如割って入った声に驚き振り向くと、そこにはオルグレン宰相が配下を引き連れ現れたのだ


「オ、オルグレン宰相………!?何故ここに……!」


アッカーソン侯爵が狼狽していると、オルグレンの影から小さな人影が駆け抜けた


「旦那様!奥様!」


リビーが安堵の表情で2人のもとへ駆け寄ってくる


「リビー!どうしてここに?」

「旦那様に先に宿に帰るよう言われたのですが、その際にオルグレン閣下と鉢合わせまして。事情をお話したら、すぐにこちらへ向かって下さったのです」


そう言ってリビーはオルグレンへ目線を向ける


オルグレンは鋭い眼光を放ち、アッカーソン侯爵を捕らえていた


するとアッカーソン侯爵が笑い声を上げる


「は……はははっ!私は侯爵だぞ!?証拠も無しにどうやって私を捕らえるというのだ!」


この期に及んで未だ強気のアッカーソン侯爵を見つめていたオルグレンは、切れ長の目を鋭くさせると静かに言い放った


「証拠ならそろえましたよ?セルニグルの実権を握る為に王太子殿下と実の娘を唆した件に、ローレル様暗殺を指示した件、更にはハルマスへの放火の件も、証拠は出揃っています」


それを聞いたアッカーソン侯爵の顔色は見る見る青ざめていく


「な……なんでそこまで知って………」

「我々は数カ月から、貴方に目をつけていたのですよ。ですから水面下で証拠を集めていたのです…………几帳面な性格が裏目に出ましたね。貴方の書斎に全て揃ってましたよ。計画を裏付ける日記や書類がね」


事実を知ったアッカーソン侯爵は観念したかのようにガクリと項垂れた


「アッカーソン侯爵と聖衛騎士団を連れて行け」


オルグレンが指示を出すと、配下達は一斉に蔦の塊の除去を始めた


するとレイラがオルグレンの前へと歩み出た


「―――オルグレン宰相閣下。私を、今回の騒動の証人として出して下さい」


その発言にその場にいた者達全員が驚き、レイラを見つめた


「………よろしいのですか?」

「はい。父に利用されていたとはいえ、間接的に父の野望に関与してしまいましたから。最後くらい、気高く終わらせたいのです」


レイラは真っ直ぐにオルグレンを見つめ答えた


その姿は、高位貴族らしい凛とした姿だった


「―――――レイラ様!」


ローレルが思わず呼び止めると、レイラは前を向いたまま口を開く


「勘違いしないで頂戴。決して貴女の為では無いわ。これはデューク殿下と歩む為に清算しなければいけない事柄なだけ。ただそれだけよ」


そう言い残すと、レイラはオルグレンと共に、静かにその場を去って行った


ローレルはそんな成長を感じさせた彼女を、黙って見つめるのだった

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