第35話 ハルマスの化け物
『――――では教えてやろう。お前達にこのハルマスの主を抑え込むなど出来ぬと言う事を。身を持って知るがいい』
マディソンの言葉が暗い牢獄に落ちると、再び静寂に包まれた
不気味なほど静まり返った狭い空間に、聖衛騎士達の息遣いだけが聞こえてくる
するとそれを破るかのようにアッカーソン侯爵が鼻で笑った
「…………フン、化け物といっても今は手負い。人数も武器もあるこちらに勝機はあるのだ」
そう言うとアッカーソン侯爵は指示を出した
「この化け物を殺せ!跡形もなく消し去れ!」
大司祭筆頭の怒号と共に、騎士達は一斉に魔法具をマディソンに向けた
そして
ギュイイイイイン!
眩い光が灯ったかと思うと、その光はまるでレーザー光線のように放たれた
そして容赦なくマディソンに降り注ぐ
「―――――撃ち方止め!」
アッカーソン侯爵が止めると騎士達の動きは止まった
攻撃を受けたマディソンは跡形も無く消え、攻撃痕だけが地面に残されていた
「ふ………ハルマスの主も大したことは無かったな。ふはっ……ふははははは!」
勝利を収めたアッカーソン侯爵が高らかに笑い声を上げた――――その時だった
『――――なんだ、こんなものか?人間共よ』
突如聞こえてきたマディソンの声に、その場にいた者達全員が辺りを見渡した
「な………あの時確かに身体を何度も貫いたはず……………何故生きている!」
アッカーソン侯爵が声を荒げ狼狽していると、再びマディソンの声が響き渡った
『あれしきの攻撃で仕留めたと喜ぶとは、なんともおめでたい頭だ。貴様に当主は向かんな』
「なっ……!貴様如きに何が――――」
マディソンの挑発に、アッカーソン侯爵が乗った瞬間
ドガガガガガッ!!
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
凄まじい轟音と聖衛騎士達の叫び声が響き渡った
アッカーソン侯爵が振り返ると、そこには蔦に囚われた騎士達の姿があった
武器の魔法具も綺麗に奪われ、成す術もない
すると無数の蔦が束になって集まり、形を形成し始めた
そこに現れたのは、蔦で出来たドラゴンの顔だった
その大きなドラゴンの顔がゆっくりとアッカーソン侯爵に近付いていく
「あ……ひいっ………」
『……さて、どうするか。貴族は殺すなと言われているが―――危険な貴族は殺しても咎められはしないのだろうか?どれ、とりあえず貴様を食べてみるとしよう』
そう言うと、蔦のドラゴンは大きな口を開けた
「ひえぇぇぇぇぇ!!やめろぉぉぉぉ!!!」
情けない叫び声と共に、アッカーソン侯爵は蔦のドラゴンの口の中へと消えていった
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その頃
マディソンによって地上へと送られたローレルとレイラは、外でマディソンの帰りを待っていた
ポッカリと空けられた穴の中を、ローレルは心配そうに見つめている
「マディソン様………大丈夫かしら。お怪我もされていたのに」
首飾りを握りしめながら、マディソンの身を案じていると、後ろから声が聞こえた
「あんな化け物なんだから死にはしないでしょ?ていうか、貴女よくあの化け物を好きになれたわよね。私には理解出来ないわ」
レイラが蔦の残骸に座り肩をすくめると、ローレルはムッとした表情になる
「マディソン様は化け物なんかじゃありません。ちょっと強引で身勝手だけど………とてもお優しい方なんですから!」
「…………あんたってホント変わってるわよね。私はどう考えてもデューク殿下の方が良いわ」
マディソンの良さを語るローレルに、レイラは理解できなさそうに冷めた目で見つめた
するとその時
ゴゴゴゴゴゴ………
再び地響きが鳴り響いたのだ
「この音………まさかマディソン様!?」
ローレルが察した次の瞬間
ドガァン!!
凄まじい音と共に、穴から大きな蔦の塊が姿を現した
よく見ると蔦には聖衛騎士団が捕縛されている
異様な光景を、2人は呆然と見つめるのであった




