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食人蔦に愛された聖女〜追放された聖女は死の森で居場所を見つける〜  作者: mai


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第32話 ヒースフィールド辺境伯の初仕事

少し時間を戻し、この日の朝――――

ローレルが大神殿を訪れていた頃―――――


マディソンはというと、リビーと共に王宮の植物研究所を訪れていた


白一色の壁と様々な機材に囲まれた一室に置かれたソファに、2人は座っている


すると頬杖を付いていたマディソンが面白くなさそうに口を開いた


「全く、何故この様な場にいなければならないのだ」

「旦那様、それも辺境伯の仕事だと、オルグレン閣下が仰っていたではありませんか」


リビーが嗜めるも、マディソンは不機嫌なままだ


王都に来る前、オルグレンから「辺境伯の仕事の一環として王宮の植物研究所に顔を出し、ハルマスの植物を紹介しろ」と言われ、マディソンは渋々ここに来たのだ


――――ローレルと離れる事は避けたかったというのに


マディソンが不機嫌そうにため息をついていると、研究所の扉が開かれた


「――――お待たせして申し訳ありません。僕がこの研究所の副所長のアシュベリーです。よろしくお願いします」


現れた緑髪の青年――――アシュベリーはにこやかに2人に向け挨拶を交わすと、リビーは会釈で返した


するとアシュベリーは反対側に振り向き声を上げた


「皆!こちらが以前説明したハルマスの辺境伯、ヒースフィールド様だ。今日は彼からハルマスに生息する魔界植物について学ぼう」


アシュベリーの向けた方向を見ると、そこには研究員と思われる者達が数名佇んでいた

何処かマディソンに対して警戒するような目線を感じる


「それではマディソン様、お願いします」


アシュベリーが促すと、マディソンは気怠そうに息を付いた


「………リビー。出してやれ」

「はい」


リビーが手元の籠を開けると、中からミニマンドラゴラ達がヒョコリと顔を出した


「ピッ?」

「ピピッ?」

「ピピピッ?」


初めて見る場所にミニマンドラゴラ達はキョロキョロと興味深そうに辺りを見渡している


そんなミニマンドラゴラ達を目にした研究員達は驚きの声を上げた


「これは………何という植物なのですか?」


アシュベリーが目を丸くしてミニマンドラゴラ達を見つめると、リビーがにこやかに口を開いた


「これはミニマンドラゴラと言います。『マンドラゴラ』と名前に付いていますが、あの有名なマンドラゴラとは全く別の植物です」


するとリビーは、籠から出ていたミニマンドラゴラの一匹―――パールを優しく掴み手に乗せた


「緑の茎にアイボリー色の身体が特長なのですが、この子のように稀に白色の個体も存在します。地面から引き抜いた人物を主と認定し、人の言う事をよく聞きます。なのでちょっとした手伝いも出来るのですよ」


研究員達は人懐っこいミニマンドラゴラ達を微笑ましく見つめながら、リビーの説明を興味深そうに聞いている


「死の森と呼ばれている場所に、このような可愛らしく役立つ生き物がいるとは………知りませんでした」


アシュベリーはそう言いながら、恐る恐るミニマンドラゴラを手に取り隅々まで観察した


すると、今まで黙っていたマディソンが口を開いた


「…………なら、もっとハルマスらしい植物を持ってきた方が良かったか?人を溶かすほどの酸を吹きかける植物や、人に寄生し身体を乗っ取り、朽ち果てるまで意のままに操る植物もいたのだが」


マディソンが愉快そうに口を歪ませ尋ねると、研究員達は顔を引きつらせた


その様子を満足げに見つめる主を、リビーは呆れた様子で見つめるのだった



――――――――――――――――――



その後


無事仕事を終えたマディソンとリビーは、ローレルを迎えに行く為馬車に向かっていた


「ふぅ………なんとか無事に終わりましたけど………旦那様、人間をからかって面白がるのもほどほどにして下さいね?あそこにいた者達も恐らく貴族出身の者達です。機嫌を損ねてはいけませんよ?」


リビーが先程の苦言を呈すと、マディソンは鼻で笑った


「フン……仮に恨まれたとしても消せば良いだけの事ではないか」

「勝手に殺さないで下さい。ハルマスとは勝手が違うのですから……旦那様だけでなく、奥様にも影響がいくのですから、最低限のルールは守ってくださいね」


リビーが呆れ気味に諭すも、マディソンはそっぽを向いたままだ


(そもそも私は爵位など必要なかったのだ。なのに何故人間に指図されながらこんな煩わしい事をしなければならんのだ)


マディソンは不服そうに窓の外を見つめた


空はすでに夕日に染まり、陽の光は黄金に輝きを放っていた

その光に、マディソンはローレルの瞳の色を連想させた


 ―――――そうだ。そもそもは全てローレルの為なのだ


マディソンはローレルの愛らしい笑顔を思い出し、目を細めた


(…………まあ、ローレルが幸せでいられるのなら、人間の言う事も聞いてやっても―――――)



その時だった

マディソンの胸がチリチリと痛む感覚がした


「…………旦那様?」


突如胸を抑えたマディソンを、リビーが不思議そうに尋ねる


「―――リビー、お前は先に帰っていろ」

「どうされたのです?」

「ローレルの身に何かあったようだ。今すぐ大神殿に向かう」


そう言うとマディソンは身体から蔦を出し、姿を変えだした 

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