第30話 聖女の素質
祈りの儀を終えたローレル達は聖女候補の少女達を連れ、正門へと向かっていた
「ローレル様。これから何をなさるのですか?」
ヘレナが尋ねると、ローレルはこう告げた
「正門で訴えを続けている人々を救うのよ。このままでは可哀想でしょ?」
そう言ってローレルは正面玄関の扉を開いた
するとそれまで外で響き渡っていた怒号が止まり、静寂に包まれた
「………ローレル様?」
国民の1人がぽつりと呟くと、その場にいた全員が扉の前にいるローレルに視線を向けた
「本当だローレル様だ!」
「聖女は引退したと聞いたが」
「戻ってきてくれたのか?」
再びざわめきが大きくなったその時、ローレルが手で制しそれを抑えた
「―――皆様。元聖女という身ではありますが、僭越ながら、皆様の治癒や祈祷をこれから行いたいと思います。どうか活動を行いやすいように整列して下さいますか?」
そう述べると、国民達から喜びの歓声が湧き上がった
国民達を止めていた司祭達も、ホッと胸をなで下ろしている
こうしてローレル達による救済活動がはじまった
――――――――――――――――――――
そして大神殿の外では、大勢の民達が列をなし、ローレル達の治癒を待ち望んでいた
「――――――――回復」
ローレルが呪文を唱えると光に包まれ、怪我人の傷が見る見る癒えていく
「これで大丈夫ですよ。でも数日はあまり動かさないで下さいね」
「おお………見違えるほどよくなったよ!ありがとうローレル様!」
怪我を負った腕を動かしながら、怪我人は嬉しそうにその場を後にした
ローレルは一息付くと、辺りを見渡した
(さて、あの子達はどうかしら…………)
聖女候補達の様子が気になり探していると、そのうちの1人、最年少のエマが視界に入った
ローレルはその様子を遠くから静かに観察する
(あの子は神力自体は高そうね。でも―――――)
ローレルはエマの対応に何処か引っかかりを感じていた
確かに治癒魔法の技術は幼いながらに長けてはいるのだが、人々に対する態度が何処か素っ気ないのだ
恐らく無意識で、悪意がありやっている訳では無いのだろうが――――あれでは誤解をされかねない
(能力以外での課題が大きいわね)
そしてローレルは2人目の候補者ジェマを見つけた
(あの子は人の苦しみに寄り添う事は得意そう………)
病人に献身的に寄り添う姿を見たローレルは目を細めた
しかし
(ただ、神力は他の3人と比べると弱いのかしら………あんなに時間をかけてしまっては捌き切れないわ………)
ローレルはジェマの回復魔法の遅さが気になっていた
回復魔法に時間をかけていると言う事は、それだけ神力が弱いという事に繋がるからだ
ジェマを見届けると、今度は3人目の候補者エリカに目線を向けた
(神力はまずまず………民達との対応も問題無さそうね…………)
安定した能力と対応に、安心して見届けていたその時、エリカが治癒魔法を終わりかけた所でやめてしまったのだ
(ええっ!?まだ魔法をかけるべきところだったのに………)
ローレルは驚き身を乗り出すも、エリカはそれに気づかない
そして怪我人もそれに気付くことなくその場を去っていってしまった
(確かに途中でやめてしまったからといってどうかなる訳ではないけれど……あれでは治りが遅くなってしまうわ…………)
思わずため息をついてしまうローレル
すると、最後の候補者ヘレナが横切った
ヘレナはキョロキョロと辺りを見渡すと、具合の悪そうな病人に自ら駆け寄った
(声をかけられるまで待つのではなく、自ら――――素晴らしいわ)
ローレルが感心していると、ヘレナはテキパキと準備を進め治癒魔法をかける
すると見る見る病人の顔色が良くなっていくのが目に見えて感じた
(神力も申し分無いわね…………)
ヘレナの手際の良さと能力の高さに感心しながら、ローレルは彼女を見つめる
ローレルの心ではどの少女が聖女に相応しいか定まりつつあった
そしてその光景を、大神殿の一室から睨むように見つめるレイラがいた事を、彼女は気付かないでいた




