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食人蔦に愛された聖女〜追放された聖女は死の森で居場所を見つける〜  作者: mai


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第3話 食人蔦からのプロポーズ

ある森にて―――

幼き頃のローレルと何者かが肩を並べ座っていると、ローレルが口を開いた


「妖精さんあのね、私もうすぐお引越ししちゃうんだって。隣の街の大きな神殿に住むことになったの」


目を伏せ、寂しそうに『妖精』と呼ぶ何かに告げた

『妖精』は黙ったままローレルを見つめている


「妖精さんと会えなくなるの、淋しいなぁ」


ポツリと呟いたその時、『妖精』は蔦を伸ばしローレルの手にあるものを置く


それは琥珀色の石の首飾りだった


「わぁ…綺麗な石の首飾り……!くれるの?」


ローレルが尋ねると、『妖精』はコクリと頷く


「ありがとう!大切にするね!」


ローレルは太陽のような笑顔を小さな友人に向けたのだった


――――――――――――――――――――


「――――――ん……」


目が覚めたローレルは、自分が今柔らかなベッドに横たわっている事に気付いた


(変な夢………なんだったんだろ………)


そんな事を思いながら身体を起こすと、そこは見知らぬ屋敷の中だった


(それにここは………誰の屋敷かしら……)


見た所、何処かの貴族の屋敷のようだが――――心当たりが無く首を傾げていると、扉が開く音がした


「おや、目覚めたようだ」

「―――――っ!」


そこには先程自分を食べようとした男―――マディソンがいた


ローレルは顔を強張らせ身構える


「ああ、そんな怖い顔しないで。貴女を食べるのは止めたのだ」


マディソンは困ったように眉を下げ、ローレルに近づくと、コップに入った水を手渡した


「水分を取るといい」


ずいっとコップを差し出され、ローレルは恐る恐るそれを受け取る


「…………どういうつもりですか。こんな真似をして」


にこやかに佇むマディソンを、警戒を解かずに睨むように見つめる


コップを持つ手に思わず力が入った


「どういうつもり………か」


そう呟くと、マディソンは少し間を置きこう問いただした


「つかぬ事を聞くが、貴女に恋人はいるのか?」

「恋人………?婚約者ならいましたが………婚約破棄されました」

「ほう。では、誰のものでも無いと」

「………そういう事にはなります」


ローレルの応答に、マディソンは少し考え込むと、こう提案してきた


「では、私と結婚しよう。ここで共に住もう」


突然の言葉に、ローレルは面食らう


「は………はあ!?」

「丁度、貴女の部屋も用意出来るし何も問題はない。ああでも、女性の衣服が無いな。早急に仕立ててもらおう。それから人間は結婚式なるものを上げるのだったな?それくらいなら形だけの真似事くらいは出来る―――――」

「ちょ、ちょっと待って下さい!」


勝手に話を進めるマディソンに、ローレルは慌てて止めに入った


「おや、何か不満が?」

「不満も何も、何勝手に決めているんです!?貴方私を食べようとしてましたよね!?さっき食べようとした人間と結婚って……何考えてるんですか!」


感情に任せ言葉でまくし立てると、マディソンは目を瞬く


「何故駄目なのだ?結婚相手もいないのに」

「相手がいなければ良いものではないのです!こんな人攫いのような結婚なんて、私は奴隷じゃ無いです!」


ローレルの怒りが部屋に響き渡る

マディソンは思いがけぬ反論に、固まり動かなくなってしまう


「あ、あの……ヒースフィールド様……?」


石像のように動きを止めてしまったマディソンが今度は心配になり、恐る恐る声をかける


すると


「成る程!では、お互いの利益が一致すれば良いのだな!」

「うわぁっ!」


何の前触れも無く喋りだしたマディソンに、ローレルの心臓が飛び上がる


(………人外だからかしら……少々――いえ、かなり認識のズレがあるわね………)


バクバクと鳴り響く心臓の音を抑えながら、マディソンを見つめる


「ローレル・フェルトン嬢」


すると急に自分の名を呼ばれ、ローレルは思わず顔を上げる


「え……何故、私の名を―――」

「貴女が覚えていなくても、私は覚えているのだ。それなら貴女をここで匿ってあげよう。その代償が結婚というのはどうだ」

「え?」


ローレルが顔を上げると、マディソンはニヤリと笑みを浮かべる

 

「あの状況を見るに、貴女は命を狙われていた。ここでこの森から出ていっても、また狙われるだけ―――だから私が貴女を守ってやろう。その代わり、私と夫婦の契りを結ぶのだ。それにここで暮らすなら、私と契った方がいろいろ都合が良いのだ――――どうだ?」


マディソンは愉快そうに笑みを浮かべた

ローレルは下を向き考え込む


(この男と共に暮らすなんて、かなり危険だと思う……だけど………)


ローレルは先程殺されそうになった光景を思い出した


(帰る場所が無くなってしまった私には、行くあてがないわ……………)


先程剣を向けられたことを思い出すと、悔しそうに拳を握った


そして声を絞り出すように答えた


「………分かりました。その申込み、お受け致します」


苦渋の決断の中、静かに述べるとマディソンの表情がぱあっと明るくなる


「おお!ご決断感謝しよう。それでは、末永くお願いしよう。ローレル嬢」


こうして奇妙な契約結婚が成立したのだった

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