第27話 黒幕
ローレルとマディソンが立ち去り、異様な空気に包まれ居心地が悪そうな王太子と聖女を、遠く離れた場所で見つめる1人の男がいた
アッカーソン侯爵家当主でレイラの父、オズワルド・アッカーソンだ
(あの孤児の娘の力がこれほどまでだったとは――――これではレイラや王太子殿下にマイナスイメージがついてしまう)
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべると、アッカーソン侯爵は踵を返しその場を後にした
足早に外へと出ると、アッカーソン侯爵は馬車へ乗り込み帰路へと就く
窓から見える暗い夜道を眺めながら、男は物思いにふけっていた
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アッカーソン家は代々、大神殿と深い関わりを持つ名門侯爵家だ
アッカーソン家に産まれた者は強い神力を持つ者が多く、過去に多くの司祭や神官を輩出してきた
勿論アッカーソン侯爵もその1人で、彼は大神殿の大司祭筆頭を任されている
そんな彼に転機が訪れたのは15年前、娘であるレイラが神力に目覚めた時だ
元々レイラが生まれた時から、彼女を聖女に出来るかも知れない、という淡い期待はあったのだが―――レイラが比較的早い時期に目覚めた事から、アッカーソン侯爵はよりレイラに対して聖女としての可能性を期待するようになったのだ
そしてその力をより磨かせる為、レイラは4歳という幼さで聖女候補として大神殿に使える事となる
加えて幸運な事に、彼は幼いデュークの教育係にも任命されていた
アッカーソン侯爵はここぞとばかりに、デュークに優生思想の価値観を植え込んだ
―――――――時が来た時、その方が侯爵にとって都合が良いからだ
アッカーソン侯爵には野望があった
―――――それはセルニグル王国の実権を自身が握る事だった
だから敢えてデュークを視野の狭い短絡的で世間知らずの愚鈍に教育したのだ
愚かな王太子をアッカーソン侯爵の傀儡にする為に
レイラが聖女になれば、必然的にデュークとの婚約が結ばれる
そして国王亡き後はデュークの後見人となり、実質的な権力を手に入れる――――
計画は順調なはず――――だった
聖女にレイラではなく、ローレルが選ばれるまでは
平民で、しかも孤児だった少女が聖女に選ばれるなど、アッカーソン侯爵には耐え難い屈辱だった
―――聖女には高貴な血筋の者がなるべきだ
何処の馬の骨かも分からぬ穢れた血筋の者がなるべきでは無い―――
そう思ったアッカーソン侯爵は、次の手を打つことにした
聖女に選ばれず、不貞腐れていたレイラに、デュークの懐に入るよう促したのだ
「聖女ローレルは不正を働き聖女の座についたのだとデューク殿下に告げ口するのだ。お前なら上手くいくレイラ。何故ならお前こそ真の聖女なのだから―――」
そう囃し立て、レイラをデュークに近付けさせ、関係を深めてもらったのだ
そして、完全に心をレイラに奪われたデュークに、アッカーソン侯爵は最後の一押しをした
「婚約破棄をなさいませ殿下。そしてローレル・フェルトンを秘密裏に処理するのです。さすればなんの文句も言いようがありません――――」
こうして従順な傀儡は、彼の言う通りローレルと婚約破棄をし、ハルマスへと追いやったのだ
ただ1つ、ローレル・フェルトンの暗殺だけは上手くいかず、2度も失敗に終わった事もあり、3度目はアッカーソン侯爵が直々に刺客を送り、森を燃やしたのだが――――結局失敗に終わってしまった
それでもローレルを辺境の地に追いやり聖女として活躍出来なくする事は達成出来た為、良しにしていたのだが――――そう思った矢先の先程の出来事が起こったのだ
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(あれでは、孤児の娘が聖女に相応しいという声が、再び上がって来てしまう。本人にその意思がなくとも、そう思わせてしまうあの娘の存在自体が危険だ)
馬車が屋敷に着き、アッカーソン侯爵がゆっくり降りると、ボソリと声を放った
「ローレル・ヒースフィールドを必ず消す。ハルマスに戻る前に、必ず―――――」
黒い決意を胸に、彼は扉を開けるのだった




