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食人蔦に愛された聖女〜追放された聖女は死の森で居場所を見つける〜  作者: mai


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第24話 牽制

その日の夜


アーノルド主催の夜会に招待された2人は、控室にて最後の身支度を行っていた


リビーとパールが念入りにドレスやヘアメイクの確認をしていると、ローレルはため息をつく


「どうされましたかローレル様。なんだか浮かない顔ですね」

「私、こういったパーティに良い思い出が無いの。また嫌な気持ちになるんじゃないかと思って……」


眉を下げ答えるローレル

すると後ろから声が響いた


「気にするなローレル。その様な思いにはさせん」


マディソンがそう言うとローレルに近付いていく

彼の身体のあちこちにミニマンドラゴラがくっついて最終調整をしている


「…………やはりドレスを琥珀色にして良かった」

「え?」

「その肌によく似合っている。白い肌ならここまで似合わなかっただろう」


そう言ってマディソンはローレル両腕に触れる


ローレルが身に着けている琥珀色のドレスは、肩が大きく開いたオフショルダーのドレスだ

褐色の肌が広範囲に晒されているが、蜂蜜を煮詰めたような輝きを放つドレスが、その肌を引き立てていた


恥ずかしくなったローレルは思わず目をそらした時、甲高い声が響き渡った


「ピャーッ!!ピッ!!」


ミニマンドラゴラがマディソンに動くな!と怒っているようだ


「お前達は私達の邪魔しかしないな」


面白く無さそうに眉をひそめると、ミニマンドラゴラは「ピピッ!!」と反抗した


その様子を見たローレルは少しだけ心が和らいだのだった


――――――――――――――――


そして会場入り直前


ローレルが深呼吸し落ち着けている様子を、マディソンは横目でチラリと見る


「そう構える事もなかろう。夜会なるものが何かはよく分からんが、私がいる」

「………はい」


そう言われ、ローレルは真っ直ぐ前を見つめた


そして扉が開かれ、宮廷侍従による紹介が告げられる


「これより、本日の夜会の特別なお客様をご紹介致します。ハルマス辺境伯、マディソン・ヒースフィールド様、そしてそのご婦人、ローレル・ヒースフィールド様でございます」


紹介と共に2人は中へと歩み始める


天井に幾つも吊るされたシャンデリアが灯りに反射し、きらびやかな輝きを放ち、日の光のように照らされている純白の大理石を一歩一歩踏みしめるように進む


奥では宮廷楽団の美しい演奏が聴こえ、同時に貴族達の賑やかな話し声が響き渡る


すると、2人の気配に気付いた貴族達が視線を一斉にそちらに注いだ


その視線はローレルではなく、殆どがマディソンに向けられている


するとヒソヒソと話し声が聞こえてきた


「あれが噂のハルマスの主………」

「しかも人を食べるとか」

「大丈夫なのか?そんな化け物をこの様な場に招待して」


皆、未知の化け物であるマディソンを、警戒しながら遠巻きに見つめている


ちなみに当の本人は気にもとめず、初めて見る光景を物珍しそうにキョロキョロと見ている


その感心のなさに驚いていると、続けてこんな話し声が聞こえてきた


「横にいるのは元聖女のローレル様………ですわよね?」

「ああ………だが、なんだか雰囲気が変わられたな」

「ええ、もっと控えめな印象がありましたが…………今日はとても華やかですわね」


以前の印象とは違う元聖女に、皆驚きの視線を送っている


そんな視線を浴び、少し戸惑っていると今まで黙っていたマディソンが口を開いた


「ローレルよ」

「は、はい!」

「貴族という生き物は食が細いのか?何故食べ物がこの様に小分けなのだ?」


マディソンの目はテーブルに並べられた豪華な料理に向けられていた

そこには一口サイズに盛り付けられた肉や魚料理等が幾つも並んでいる


ローレルはマディソンに、この食事形式の説明を始めた


「これは立食パーティ形式なので、食べやすいように小さく盛られているのですよ」

「何?立って食べるのか?」

「はい」

「なんとも珍妙な生き物なのだな。貴族というのは。我々の方が余程行儀が良い」


首を傾げながら真面目に思った事を口にし過ぎるマディソンに、ローレルは慌てた


「マ、マディソン様!そのような事を大きな声で言ってはなりません!」

「何故だ?常識的に考えて非効率で行儀が悪いだろう?」

「これはマナー違反にはならないのです!お願いですからこれ以上の発言は控えて――――」


マディソンを諌めようとしたその時だった


「――――――ローレル?」


聞き覚えのある声で名を呼ばれ、ローレルは思わず振り返る


するとそこにいたのは、かつての婚約者であるデュークと現聖女のレイラだった


ローレルの胸がドキリと跳ねた


「デュ、デューク殿下……………」


久しぶりにデュークと顔を合わせたローレルは、思わず顔を強張らせる


その微かな変化を、マディソンは静かに感じ取っていた


「…………お久しぶりですデューク殿下。お元気そうで何よりです」


ローレルは気を持ち直し、ドレスの裾を広げカーテシーをする


デュークはそれを複雑そうな表情で見つめていた


「あ、ああ。ローレルもその…………随分と変わった………な」


そう述べると、デュークはローレルを避けるように顔を背けた


(………やはり、相変わらず殿下は私の事が嫌いなのね)


デュークの態度に心を痛めていると、彼の横にいたレイラが口を開いた


「お久しぶりねローレルさん。まさかあの辺境で、貴女が化け物と結婚してるなんて思わなかったわ」


レイラがこれ見よがしにデュークに寄りかかり、嫌味を投げかけた


するとローレルは静かに答えた


「………ええ、最初は戸惑ったけど、結果的に良い出会いだったわ。私はマディソン様と出会えて幸せよ」


真っ直ぐ目を見て答えると、レイラは一瞬不服そうな表情を浮かべる


するとマディソンが、急にローレルの肩を抱き寄せた


「ほう?お前達がローレルを嵌め、手に掛けようとした首謀者か?」


マディソンの言葉が会場内に響き渡り、他の貴族達も思わず2人に視線が集中した


「なっ!?」

「はぁ!?」


デューク達は思わずギョッとした顔をする


すると周囲からざわめきが聞こえてきた


「ローレル様を嵌めた…………?」

「しかも手に掛けようとしたと聞こえたぞ…………」

「まさか、レイラ様と組みそのような事を…………」


そんな言葉が耳に入り、2人は慌てて反論し始めた


「貴様!不敬だぞ!王太子である俺にそのような誹謗中傷を浴びせるとは!」

「そ、そうよ!それにローレルさんを殺そうとした証拠なんてないじゃないの!」


声を荒げる2人を見て、マディソンは怪訝そうな顔をした


「事実であろう?私は実際に見たぞ?ローレルが殺されそうになる所を」


その言葉を聞いた2人の顔は一気に青ざめた


至って事実を述べているだけのマディソンは、何故2人がそんなに慌てふためいているのかが理解出来ず、眉をひそめている


しかし、ハルマスの辺境伯によって大きな爆弾を落とされた会場では、貴族達のどよめきがどんどん大きくなっていく


この異様な空気に動揺を隠せない2人を見つめながら、マディソンは再び口を開いた


「……まあよい。だが、ローレルは私のものだ。今後そのような事を企てローレルを傷付けようとするのなら――――私はお前達を許さぬ。貴族だの王家だのは関係ない。私はハルマスの化け物だ………………それを忘れるな」


マディソンは睨みながらそう忠告すると、ローレルを連れ、去っていった


残された2人は悔しそうに彼らの後ろ姿を見つめていたのだった

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