第4話 持ち帰る
ガサ。
◇
ガサガサ。
◇
第五層。
迷宮。
ランタンの光が。
ゆっくり。
暗闇へ向けられる。
光の端。
何かが。
動いた。
◇
ガサ。
ガサガサ。
◇
硬い脚。
鈍く光る甲殻。
大きな鋏。
「……岩殻蟹。」
前衛の一人が。
小さく呟いた。
◇
岩殻蟹。
第五層から。
第七層付近に生息する。
中型魔物。
◇
硬い甲殻。
強靱な鋏。
その一撃は。
人の骨を。
容易に砕く。
◇
危険度は。
決して。
低くない。
◇
しかし。
潜航者達が。
この魔物を見つけた時。
考えるのは。
危険だけではない。
◇
甲殻。
鋏。
魔石。
そして。
食用部位。
◇
岩殻蟹は。
よく売れる。
◇
「三体。」
「奥は?」
「見えません。」
「……。」
パウエルが。
暗闇を見る。
時計。
ランタン。
後方。
退路。
一つずつ。
確認する。
「どうします?」
「……。」
数秒。
「やる。」
新人達が。
顔を上げる。
「三体までだ。」
「四体目が見えたら。」
「即撤退。」
「奥へ逃げたら追わない。」
「新人は前に出るな。」
「照明係。」
「戦闘には参加するな。」
「はい。」
「退路を空けろ。」
「はい!」
◇
――戦うんですか?
「戦えますから。」
パウエルが。
岩殻蟹を見る。
――照明に問題があります。
「だから。」
「ここで終わらせます。」
「追わない。」
「増えたら帰る。」
少しだけ。
笑った。
「それに。」
「結構。」
「高いんですよ。」
◇
前日。
ランタン油の。
四割を失った。
◇
それでも。
パウエルは。
第五層へ入ることを。
選んだ。
◇
帰還用の油を。
別に確保。
◇
進入時間。
半分。
◇
進入距離。
半分。
◇
そして。
想定外が。
もう一つ起きれば。
即撤退。
◇
その条件は。
岩殻蟹を前にしても。
変わらなかった。
◇
「来るぞ!」
ガサガサガサッ!
一体。
岩殻蟹が。
通路を走る。
「前!」
盾。
巨大な鋏が。
振り下ろされる。
ガンッ!
「っ!」
盾役の身体が。
後ろへ滑る。
石床。
靴底が。
擦れる。
「右!」
二本目の鋏。
前衛が。
身体を沈める。
頭上。
鋏が。
石壁へ。
叩きつけられた。
バギンッ!
石片が。
飛ぶ。
「ノア!」
「はい!」
ノアが。
踏み込む。
剣。
振り下ろす。
ガギンッ!
「硬っ!」
刃が。
弾かれた。
「甲羅狙うな!」
「先に言ってくださいよ!」
「見りゃ分かるだろ!」
岩殻蟹が。
身体を振る。
「下がれ!」
ノアが。
飛び退く。
その横。
青白い光。
「セリア!」
「はい!」
魔法陣。
冷気が。
石床を走る。
だが。
岩殻蟹の。
身体全体には。
向かわない。
脚。
一本。
そして。
もう一本。
関節だけを。
氷が包む。
動きが。
止まった。
「今!」
前衛が。
懐へ。
入る。
剣先。
甲殻と。
腹部の隙間。
一閃。
岩殻蟹が。
大きく。
身体を揺らす。
ガサ。
ガサガサ。
脚が。
石床を掻く。
そして。
止まった。
「一体!」
「次来る!」
◇
我々が。
これまで同行した。
潜航の中で。
魔物との戦闘は。
何度も見てきた。
◇
倒す。
◇
それだけなら。
話は。
比較的単純だ。
◇
だが。
彼らは。
仕事として。
魔物を倒す。
◇
できるだけ。
傷つけずに。
◇
二体目。
前衛が。
鋏を受ける。
「左脚!」
「見えてます!」
セリア。
再び。
冷気。
脚を止める。
「ノア!」
「はい!」
今度は。
甲殻を狙わない。
側面。
脚の付け根。
「ここ!」
剣を。
突き込む。
岩殻蟹が。
暴れる。
「離れろ!」
ノアが。
剣を抜く。
その瞬間。
「甲羅!」
ミアの声。
「傷つけないでください!」
「え!?」
「右側!」
「今!?」
「そこ高いんです!」
「戦ってるんだけど!?」
「来るぞ!」
巨大な鋏。
ノアが。
身体を捻る。
紙一重。
かわす。
剣。
振る。
ガリッ。
刃先が。
甲殻を。
僅かに擦った。
「あっ!」
ミア。
「今。」
「傷つけました!」
「知らないよ!」
「査定落ちます!」
「倒してから言って!」
◇
三体目。
前衛二人が。
左右へ。
分かれる。
岩殻蟹の鋏が。
一人を追う。
「セリア!」
「はい!」
青白い光。
だが。
今度は。
岩殻蟹が。
脚を持ち上げる。
氷が。
外れた。
「動きます!」
「分かってる!」
鋏。
横薙ぎ。
「下がれ!」
盾役が。
受ける。
ガンッ!
身体が。
壁際まで。
押し込まれる。
「ノア!」
「はい!」
「右へ回れ!」
ノアが。
走る。
岩殻蟹が。
向きを変える。
その瞬間。
「今!」
前衛。
剣。
甲殻の隙間へ。
深く。
突き入れる。
岩殻蟹が。
暴れる。
鋏が。
石床を。
何度も叩く。
ガンッ!
ガンッ!
そして。
ゆっくり。
動きを止めた。
◇
「……終わった?」
レオンが。
ランタンの後ろから。
顔を出す。
「まだ動くな。」
前衛が。
三体を。
一体ずつ。
剣先で確認する。
そして。
暗闇を見る。
「追加なし。」
パウエルが。
時計を見る。
「よし。」
「ここで終わり。」
「予定通り。」
「戻るぞ。」
◇
午前八時二分。
◇
岩殻蟹。
三体。
討伐。
◇
戦闘時間。
七分。
◇
「やった……。」
ノアが。
壁へ。
背中を預ける。
「ノア。」
「はい?」
ミアが。
しゃがんでいる。
「ここ。」
甲殻。
一本の。
白い傷。
「……何?」
「ノアがつけた傷です。」
「……。」
「査定。」
「落ちます。」
「俺。」
「倒したんだけど。」
「はい。」
「倒したんだけど?」
「傷つけました。」
「……。」
ノアが。
カメラを見る。
◇
ダンジョンで。
魔物を倒す。
◇
だが。
それだけでは。
会社の利益には。
ならない。
◇
「こっちは綺麗。」
「鋏も大丈夫です。」
「魔石は?」
「解体してみないと。」
レオンが。
近づく。
「これ。」
「高いんですか?」
採取班の先輩が。
甲殻を叩く。
「高い。」
「三体で?」
「状態が良ければ。」
「今回の潜航費。」
「かなり戻るぞ。」
「マジですか!」
レオン。
笑顔。
「やったじゃないですか!」
新人達にも。
笑顔が。
広がる。
◇
『採取できる物資は。』
『なるべく。』
『持ち帰ってきてほしい。』
◇
出発前。
ダリルの言葉。
◇
「これなら。」
「社長も喜びますね。」
「ああ。」
エドガーが。
三体の岩殻蟹を見る。
「持って帰れたらな。」
「……。」
レオンが。
蟹を見る。
「え?」
◇
「解体します。」
ミアが。
道具を出す。
「待て。」
採取班の先輩が。
止める。
「ここじゃ無理だ。」
「……ですよね。」
狭い。
暗い。
足場も悪い。
ランタン油にも。
余裕はない。
「甲殻を綺麗に外すなら。」
「広い場所が要る。」
「灯りも。」
パウエル。
「第四層まで上げる。」
「……。」
レオンが。
三体を見る。
「これを?」
「これを。」
「丸ごと?」
「丸ごと。」
「三体?」
「三体。」
「……。」
レオンが。
エドガーを見る。
「これ。」
「運搬班の仕事ですか?」
「誰の仕事だと思ってた。」
◇
午前八時十四分。
運搬開始。
◇
この時。
我々も。
まだ。
分かっていなかった。
◇
三体の岩殻蟹を。
わずか。
一階層。
上へ運ぶ。
◇
それだけの作業に。
これから。
二時間近くを。
費やすことになる。
◇
「せーの!」
「っ……重っ!」
「上げろ!」
「上げてます!」
「脚!」
「何!?」
「引っ掛かってる!」
「どれ!?」
「右!」
「蟹の右!?」
「俺の右!?」
「蟹だ!」
「分かるか!」
「一回下ろせ!」
「はい!」
ドン。
「優しく!」
ミア。
「甲殻傷つきます!」
「これ以上どう優しく下ろすんだよ!」
◇
岩殻蟹。
一体目。
◇
問題は。
重さだけではない。
◇
左右へ。
広がる脚。
巨大な鋏。
偏った重心。
◇
引きずれば。
腹側が傷つく。
◇
脚を折れば。
値段が落ちる。
◇
鋏を外すにも。
暗すぎる。
◇
つまり。
なるべく。
そのまま。
運ばなければならない。
◇
「引きずりません?」
「駄目。」
「なんで?」
「腹側も売れるから。」
「……。」
「脚折りません?」
「駄目。」
「なんで?」
「売れるから。」
「鋏外しません?」
「ここで綺麗に外せる?」
「……。」
レオンが。
蟹を見る。
「売れるところ。」
「多すぎません?」
◇
午前八時二十二分。
◇
経過。
八分。
◇
進んだ距離。
二十三メートル。
◇
「止まれ!」
「また!?」
◇
ロープ。
二本。
運搬棒。
一本。
脚の間へ。
通す。
「持て。」
「はい。」
「力だけで上げんな。」
「え?」
エドガーが。
ロープを。
掛け直す。
「重心。」
「こっちだ。」
「前。」
「少し短く持て。」
「はい。」
「後ろ。」
「鋏側持つな。」
「振られるぞ。」
「はい。」
「上げるぞ。」
「せーの。」
持ち上がる。
「……あれ?」
レオンが。
歩き出す。
「さっきより。」
「軽い。」
「軽くなってねえ。」
「持ち方だ。」
「最初から。」
「やってくださいよ。」
エドガーが。
レオンを見る。
「お前の訓練だろ。」
「……。」
レオンが。
ロープを握り直す。
「訓練って。」
「だいたい後から言いますよね。」
「覚えんだろ。」
「嫌でも。」
「……それは。」
「そうですけど。」
◇
角。
「止まれ!」
「今度は何!?」
「左脚!」
「また!?」
向きを。
変える。
「鋏!」
「今度はそっち!?」
戻す。
「甲羅擦ってる!」
「動けないじゃん!」
◇
午前八時四十九分。
◇
一体目。
階段前。
◇
上。
第四層。
◇
レオンが。
階段を。
見上げる。
「……これ。」
「上げるんですか?」
「そうだ。」
「この階段を?」
「他にあるなら教えろ。」
「……。」
「持て。」
◇
「せーの!」
一段。
「待て!」
「何!?」
「鋏!」
「また!?」
「壁に当たってる!」
「向き変えろ!」
「この状態で!?」
「落とすなよ!」
「言われなくても!」
◇
二段。
三段。
◇
「止めて!」
ミア。
「今度は何!?」
「甲殻擦ってます!」
「……。」
レオンが。
歯を食いしばる。
「もう。」
「ちょっとくらい。」
「傷ついてもよくないですか!?」
「よくありません!」
「即答!?」
◇
午前九時六分。
◇
岩殻蟹。
一体目。
第四層。
◇
所要時間。
五十二分。
◇
残り。
二体。
◇
ドン。
「優しく!」
「もう置いた後に言わないで!」
レオンが。
その場へ。
座り込む。
「……終わった。」
「一体な。」
「……。」
レオンが。
ゆっくり。
第五層へ続く階段を見る。
「あと。」
「二体?」
「二体。」
「……。」
◇
二体目。
◇
一体目より。
早い。
◇
ロープの位置。
持ち手。
曲がり角。
階段。
◇
少しずつ。
新人達も。
運び方を。
覚えていく。
◇
それでも。
重いものは。
重い。
◇
「休憩……。」
「まだだ。」
「腕。」
「取れます。」
「取れたら。」
「置いてけ。」
「ほんとに置いていきますからね。」
「好きにしろ。」
「……絶対。」
「俺が置いていかないって分かってる。」
◇
午前九時三十六分。
二体目。
第四層。
◇
レオンが。
床へ。
寝転がる。
「もう。」
「無理。」
「三体目。」
「置いていきません?」
「いくらすると思ってる。」
「じゃあ。」
「エドガーさん。」
「もっと持ってくださいよ。」
「持ってるだろ。」
「俺より。」
「元気じゃないですか。」
「お前の訓練だ。」
「……絶対。」
「それ言えば済むと思ってますよね。」
◇
午前九時四十二分。
三体目。
運搬開始。
◇
「……。」
誰も。
喋らない。
◇
ガサ。
死んだ岩殻蟹の脚が。
石床へ。
触れる。
「止まれ。」
「……何ですか。」
「灯り。」
前方。
第四層側から。
別の光。
◇
「おーい。」
声。
帰還途中の。
別ギルド。
「リレントレスか?」
「そうだ。」
「何やってんだ?」
エドガーが。
岩殻蟹を見る。
「見りゃ分かるだろ。」
「……。」
相手の男が。
笑う。
「三体?」
「三体。」
「馬鹿だなあ。」
「うるせえ。」
◇
ここで。
我々には。
見慣れた光景が。
始まった。
◇
地下取引。
◇
ダンジョンでは。
素材を手に入れた者と。
それを地上へ。
持ち帰る者が。
同じとは限らない。
◇
鉱石。
薬草。
魔物素材。
◇
我々も。
これまで。
何度も。
地下で売買されるのを。
見てきた。
◇
相手の隊。
荷は。
多くない。
◇
パウエルが。
その背負子を見る。
「積載。」
「空いてるか?」
「……何だ。」
「一体。」
「買わないか。」
「え?」
レオンが。
顔を上げる。
◇
「未解体?」
「未解体。」
「甲殻。」
「ほぼ無傷。」
「六割。」
「安すぎる。」
「じゃあ。」
「自分で運べ。」
「七割五分。」
「七。」
「七割三分。」
「細けえな。」
「こっちも会社なんで。」
「……七割三分。」
「買った。」
握手。
◇
レオンが。
パウエルへ。
近づく。
「売るんですか?」
「売る。」
「地上なら。」
「もっと高いですよね?」
「高い。」
「じゃあ。」
「損じゃないですか。」
「お前が持つか?」
「売りましょう。」
「お前が決めるな。」
◇
地上で売るより。
安い。
◇
それでも。
ここで売れば。
重量は。
その場で消える。
◇
一方。
買った側は。
空いていた積載を。
利益に変えられる。
◇
ダンジョンでは。
空いた背負子にも。
値段がある。
◇
午前十時十三分。
第四層。
◇
「解体します。」
ミアが。
道具を並べる。
「そこ。」
「押さえてください。」
「はい。」
「脚から外します。」
「これ?」
「違う。」
「そっち。」
「はい。」
刃。
関節。
甲殻。
迷いなく。
進んでいく。
◇
六日前。
◇
ゴブリンを前に。
吐いた。
ミア。
十八歳。
◇
今日。
◇
岩殻蟹を。
誰よりも。
手際よく。
解体している。
◇
――今日は平気なんですね。
「はい。」
――何が違うんです?
「蟹。」
ミアが。
甲殻を外す。
「美味しいんですよ。」
――食べたことあるんですか?
「あります。」
「高いですけど。」
手は。
止まらない。
◇
甲殻。
鋏。
脚。
魔石。
食用部位。
◇
売却できるもの。
持ち帰るもの。
置いていくもの。
◇
選別されていく。
「これ。」
レオンが。
外された部位を見る。
「置いてくんですか?」
「持っても。」
「値段つかない。」
「でも。」
「使えるんですよね?」
「使える。」
「じゃあ――」
「全部持って帰れるなら。」
「苦労しない。」
「……。」
◇
ダンジョンには。
価値のあるものが。
数多くある。
◇
だが。
人が。
持てる重さには。
限界がある。
◇
何を。
持ち帰るのか。
◇
何を。
置いていくのか。
◇
それもまた。
潜航者の。
仕事だった。
◇
レオンが。
解体された。
岩殻蟹を見る。
さっきまで。
数人がかりでも。
まともに運べなかった。
それが。
いくつもの。
荷物へ。
分けられている。
「最初から。」
「こうすればよかったんじゃ……。」
「第五層でやったら。」
「甲殻の値段。」
「もっと落ちてた。」
「……。」
レオンが。
鋏を。
持ち上げる。
「金って。」
「重いんですね。」
◇
午後五時四十分。
《リレントレス・ウルフ》本部。
◇
「おかえりなさい!」
エマ。
「ただいま……。」
レオンが。
背負子を。
下ろす。
ドン。
「何それ。」
「成果。」
疲れ切った顔。
それでも。
少し。
得意そうだった。
◇
査定。
◇
薬草。
鉱石。
小型魔物素材。
岩殻蟹。
地下売却分。
◇
そして。
今回の潜航は。
新人達が参加した。
実地訓練として。
初めて。
黒字になった。
◇
「……黒字?」
エマが。
数字を見る。
「黒字ですね。」
コウハ。
「ほんとに?」
「今回だけなら。」
「やった!」
◇
岩殻蟹。
◇
甲殻は。
売られた。
◇
鋏も。
売られた。
◇
魔石も。
売られた。
◇
そして。
査定で。
規格外となった。
食用部位は。
◇
「でかっ!」
「それ俺の!」
「早い者勝ち!」
「待て待て!」
◇
午後七時二十二分。
◇
本部。
食堂。
◇
大鍋。
岩殻蟹のスープ。
◇
新人。
古参。
内勤。
◇
同じ鍋を。
囲んでいた。
「うまっ!」
「レオン。」
「それ三本目。」
「俺。」
「運びましたから。」
「お前だけじゃないだろ。」
「一番運びました。」
「俺が教えた。」
「エドガーさん。」
「食べてるじゃないですか。」
「俺も運んだからな。」
「じゃあ。」
「いいです。」
「何がだよ。」
◇
ミアが。
蟹の身を。
口へ運ぶ。
「これです。」
「これ。」
――そんなに?
「美味しいんですよ。」
ノアが。
横を見る。
「それ。」
「俺が倒したやつじゃない?」
「多分。」
「甲羅の傷で。」
「査定落ちたやつ。」
「……。」
ミアが。
もう一口。
「美味しいですよ。」
「慰めになってない。」
◇
笑い声。
◇
二度目の。
実地訓練。
◇
失敗も。
あった。
◇
予定変更も。
あった。
◇
それでも。
彼らは。
自分達で。
成果を。
地上へ持ち帰った。
◇
その様子を。
少し離れた場所から。
二人の男が。
見ていた。
◇
ダリル。
コウハ。
◇
「楽しそうだな。」
「そうですね。」
「黒字だったって?」
「今回だけです。」
「分かってるよ。」
「前回の訓練費。」
「新人装備。」
「夏の遠征費。」
「考えれば。」
「まだ足りません。」
「分かってるって。」
◇
「これ俺達が運んだやつですよ!」
「何回言うんだよ!」
◇
食堂から。
また。
笑い声。
◇
「……でも。」
ダリルが。
食堂を見る。
「悪くないだろ。」
「何がです?」
「会社。」
「……。」
コウハも。
食堂を見る。
◇
新人達。
古参。
内勤。
◇
「今年は。」
「行ける。」
「去年も。」
「同じこと言ってましたよ。」
「今年は違う。」
「一昨年も。」
「同じこと言ってました。」
「……。」
ダリルが。
コウハを見る。
「お前。」
「今日くらい。」
「夢見させろよ。」
「経理ですので。」
「……。」
◇
少し。
間。
◇
「でも。」
コウハ。
「ん?」
「去年よりは。」
「人がいます。」
ダリルが。
笑う。
「だろ?」
「人数だけです。」
「お前な。」
◇
創業。
三年目。
◇
二度の。
第十層挑戦。
◇
二度の。
撤退。
◇
それでも。
ダリルは。
言う。
◇
『今年は違う。』
◇
その言葉を。
我々は。
もう少し。
追ってみることにした。




