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最弱勇者の英雄譚  作者: ギン次郎
第1部 花と星は遠い月を求めて
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開幕 『Re:サイカイの決意』

 風が吹いていた。


 花の匂いを抱え、生い茂る緑を賑やかに鳴らす、春の風。

 そんな風が『男』の顔をくすぐりながら、心地よく真っすぐと駆け抜けていく。


「……」


 そんな穏やかな風に、彼が感じたのはどうしようもないくらいの()()()()

 ひどく遠い昔。その胸に許されざる大罪を抱え、それでも生きると誓ったあの日。

 今日と同じ風に出会ったのを彼は今でも鮮明に覚えている。


「……」


 だから、これは彼にとって『始まり』ではなく『やり直し』だった。


 ここから始まるのではない、ここから始めるのでもない。

 その始まりの決意は既に敗北し、朽ち果て、溶け落ちていた。

 だから今一度、あの日の決意をやり直すのだ。


「……」


 言葉はなく、沈黙のまま男は一歩を踏み出す。



 ――この世界でもう一度、君との出会いを始めるために。


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