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100円の妖精と、破滅のわっしょい

ケン

「……。おい、スタッフ。このスタジオ、先週よりさらに狭くなってねえか?機材が増えてんのか、俺たちの自意識が膨らんでんのか。とにかく、今夜も始まったぜ。16歳のハッカー集団が送る、人生のデバッグ作業。ギターのケンです、16歳。……なんか、アサが隣でそろばん弾いてて怖いんだけど」


ユカ

「(先週を超える超絶ハイテンション)わっしょぉぉぉぉおい!!ケンくん、元気ないよ!もっと魂震わせていこうよ!こんばんは!16歳のユカです!見て見て、今日の私、番組のロゴが入った自作のハチマキ巻いてきたんだから!これ、リスナーのみんなに1,000円で売ろうよ!」


アサ

「高城アサ、16歳。ユカさん、そのハチマキ、原価いくら?布切れにマジックで書いただけなら、1,000円は暴利だわ。でも……『16歳の汗が染み込んだ』っていう付加価値をつければ、5,000円までは跳ね上がるわね。よし、今すぐ量産体制に入りましょう」


ケン

「やめろよ!第1声から『中抜き』の話すんな!第2回だぞ!?もっとこう、リスナーへの感謝とかさ、あるだろ!?」


アス

「……えへへ。みなさん、こんばんわぁ。アスですぅ。あ、今、アサちゃんの目が、きれいな『¥』の形に、キラキラって光りましたぁ……一粒、床に落ちて、ちいさな100円玉の妖精さんになりましたよぉ。ほら、ケンくんの足元で、一生懸命ダンスしてますぅ……」


ケン

「だから!妖精なんていねえって!俺の足元にあるのは、ただのシールドの束だわ!……もうダメだ、この空間、酸素より『欲』と『電波』の方が濃い。アサ、お前さっきからその持ってる束、何なんだよ」


アサ

「これ?先週の放送の反応を分析した、16ページにわたる『リスナー収益化レポート』よ。ケンくんのギターソロ中に、どれだけ物販のリンクがクリックされたか。……結論から言うと、あなたのギターは『騒音』として認識されてて、クリック率は0.02%だったわ。次からはギター弾かずに、ずっと謝罪してて。その方が儲かるから」


ケン

「(爆笑)ひっでえ!俺の存在意義、0.02%かよ!俺、16歳にしてクビ宣告!?ユカ、お前からもなんか言ってやってくれよ!」


ユカ

「(笑い転げながら)ケンくん、0.02%わっしょーい!でも大丈夫、私がその分、120%の音量で叫んであげるから!今夜のテーマ、発表しちゃっていい!?今夜はこれ!『16歳の、絶対に笑ってはいけない領収書チェック』!」


アサ

「いいテーマね。今、私の手元には、ケンくんが『番組の資料代』として請求してきた、大量のギターピックと、なぜか『特上カルビ』のレシートがあるんだけど。これ、どういうロジックで説明するつもり?」


ケン

「いや、それは……あれだよ!いい音を出すには、いい肉を食って、指先に脂を乗せないと……!」


ユカ

「指がベタベタじゃん!ケンくん、ギター滑っちゃうよ!わっしょーい!脂、わっしょーい!」


アス

「……。お肉さんはぁ、牛さんの魂の『プラグイン』なんですよぉ。ケンくん、カルビを食べたとき、牛さんの鳴き声が聞こえませんでしたかぁ?『モォ〜、もっといいソロ弾いてぇ〜』って……」


ケン

「(ギターをヤケクソに鳴らす)聞こえるかよ!……ああ、もう、アサの目が冷たすぎて、スタジオの温度がマイナス30度くらいになってる……!」


アサ

「そう。私の冷徹さは、システムの安定稼働に寄与するのよ。だからケンくん、その特上カルビ代は、次回の君のギャラから天引き……いや、3倍にして返してもらうわね。利息は『16歳の友情価格』で15%よ」


ケン

「友情価格が消費者金融より高いってどういうことだよ!……くそっ、もういい、曲いくぞ、曲!このイライラを全部、弦にぶつけてやる!」


(ケンが猛烈な勢いでパンクロックなリフを刻み始める。それに合わせてユカが「金返せ!肉食わせろ!」と叫び、アスが「牛さんの……行進……」と不思議なコーラスを入れ、アサが冷酷にキーボードで「¥」を連打する、地獄のようなセッションが3分間続く)


ケン

「……ハァ……ハァ……。どうだ、これが、16歳の、搾取に対する、抵抗だぁ……!」


アサ

「(無表情に拍手)今の演奏、録音しておいたわ。これを『ケンくんの不祥事・謝罪ライブ』として有料配信すれば、カルビ30杯分くらいの収益にはなるわね。ユカさん、宣伝のハチマキ用意して」


ユカ

「(爆笑しながら)アサちゃん、鬼!天才的な鬼だよ!わっしょーい!鬼わっしょーい!」


アス

「……。あ、おじさんたちが、泣きながら笑ってますぅ……。電波の向こうで、みんなの心が、ぐにゃぐにゃに接続されてますよぉ……。えへへ、楽しいですねぇ」


ケン

「(力なく笑いながら)……もういいよ。好きにしろよ。……リスナーのみんな、聞こえるか。これが、16歳のリアルだ。大人の階段なんて登りたくねえ。俺たちは、この汚いスタジオで、一生ピックとカルビの計算をしていたいんだ……」


アサ

「任せて。複利の力、たっぷり教えてあげるわ。来週までに、ケンくんの借金がどれだけ膨らむか、楽しみにしててね」


ユカ

「また来週も、お腹抱えて笑おうね!わっしょーい!」


アス

「おやすみなさい。……あ、ケンくんの頭の上に、ちいさな牛さんの角が生えてきましたよぉ……」


ケン

「……モォ、ええわ!……お相手は、ギターのケンと!」


ユカ

「ユカとぉ!」


アサ

「高城アサと」


アス

「アスでしたぁ。えへへ」


ケン

「最後に一発、いくぜ!」


(ケンのギターが今日一番の爆音を奏で、4人の笑い声と「わっしょい!」の叫びが、深夜の闇をハッキングして消えていく)


全員

「16bit・アタック!!!」

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