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銀河連邦学術士官ユーリ・フォイルの、剣と魔法のフィールドワーク  作者: ハヤケン


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第6話 飲み水問題

「レティーナ……! ※◎△※◎△!」

「「「※◎△●▼□■!」」」


 フライトボードで集落の中に降り立つと、何人もの人がレティーナの名を呼んで近付いてきた。

 その中には明らかにレティーナより年上の老人もいて、そのご老人がレティーナに対して頭を下げている。と言う事は、レティーナは身分の高い人なのだろうか?

 この星――MS-1(マナ・スター・ワン)に貴族文化があるのかは分からないが、それに近い何かだろうと推測できる。


「あ、アーク。この星のコードネームはこれからMS-1(マナ・スター・ワン)ね。呼び名が無いと不便でしょ?」

「了解。固有名詞として記録」


 とやり取りしながら、ユーリは集落の様子に目を向ける。

 結構な数の家が建っているが、皆新しい。

 全て木造のログハウス調で、素材は森から斬り出したものだろう。

 村の外側に、切り株が沢山並ぶ場所があった。そこも元々森の一部だったのだ。

 そして、ログハウスは新築っぽい新しさではあるが、造りは皆荒く、プロの職人の仕事では無く素人の見様見真似のハンドメイドのように見える。

 ひどい建物になると、壁や屋根が明らかに歪んでいる。

 あまり暮らし向きのよろしくない寒村、というイメージだ。


「うーん……?」


 レティーナが身分の高い貴族的な人だと考えると、明らかにそぐわないという気がする。

 気にはなるが、言葉が通じないので何とも言いがたい。

 レティーナを見ると、村人から何かを尋ねられている様子で、それに対して首を振っていた。

 そしてそれを見ると、村人達は肩を落としてため息をつく。

 レティーナは森に何かをしに行こうとしていたのだろうか?

 それがユーリを見つけて、トラブルに巻き込まれた事で失敗してしまった?

 だとすれば申し訳ない話である。


「レティーナ……! レティーナ……! ▼□☆□□▼★!」


 肩くらいまでの金髪をした、青い目の少女が慌てた様子で走ってくる。

 息を切らせて、レティーナに何かを告げて村の奥の方を指差していた。

 すると村人達は一斉に金髪の少女が指差した方向に注目し、走ってそちらへと向かっていった。


「ユーリ! ユーリ!」


 レティーナがユーリを手招きしてくれるので、ユーリも彼女について一緒に向かう。

 村の奥の方に向かうと、そこは掘り返された土や、石があちこちに積まれた作業場のような場所だった。

 そしてその中心には、丸い石に囲まれた井戸があった。


「井戸だ……! へぇぇぇぇ……」


 無論現代の銀河連邦人の暮らしで、井戸など使わない。

 知識の中だけの存在だ。それを実際に使おうとしている人達を初めて見た。

 井戸の側には体格のいい男性が立っていて、嬉しそうにレティーナを呼んでいた。

 この井戸を掘った工事担当の人だろうか?

 呼ばれたレティーナは、井戸の中を覗き込む。


「※▼◎△★! ★◎△★★◎△!」


 そして笑顔で、男性の腕をぽんぽんと叩いて労っているような様子だった。

 周りの村人からも、拍手と歓声が起こっている。


「何があったのかな……?」


 ユーリも井戸の中を覗き込ませて貰う。

 深い穴の奥には、透明な水がなみなみと湧き出しているのが見える。


「水があるだけ――ああ、今井戸の水が湧いた所なのかな……!?」


 新築っぽいログハウスの様子を見るに、この集落は出来たばかりだ。

 安定した水源が得られず、苦労していたのかも知れない。

 海辺だから水自体は豊富なのだろうが、飲み水にはならないし、やはり井戸のような飲み水を得る手段は必要だろう。

 それが今出来た所だと言う事なら、これは中々貴重な場面に居合わせたかも知れない。


「アーク! アーク! きっとマナ文明の皆さんが、この島で自分達の暮らしを開拓していく所だよ! 貴重な資料映像だから、しっかり録画しておいてね!」

「了解」


 ユーリがワクワクとしながら見つめ、アークが冷静にカメラを回す中、村人達は協力して井戸から木桶で水を汲み上げた。

 そして井戸工事の人が、木桶に満たされた水を手で掬って口に含む。

 記念すべきこの井戸での一口目の水――


 ブフッ!


 それを工事の人は、盛大に吹き出して顔をしかめてしまう。


「△▼★◎△▼★◎……!」


 そして何事かを言うと、がっくりと肩を落としてしまう。

 レティーナも同じように水を口に含むのだが、やはり吐き出してしまう。


「ん……? ど、どうしました……!?」


 気になるので、ユーリも指先に水をつけて一口してみた。

 ――塩辛い。海水だ。


「うえっ!? な、なるほど……!」

「成分解析完了。海水に等しい塩分を含んだ水です」

「一足遅いよ、アーク……!」


 せっかく井戸を掘ったのだが、出てきたのは海水だったらしい。

 ここは島の海辺に近い位置だから、そうなってしまったのだろう。


「「「△▼★▼★◎◎△▼★……」」」


 村人達は一様にがっくりと肩を落とし、ため息をついていた。

 そして祈るような仕草を見せたり、天を仰いだり。

 最初にレティーナを呼びに来た金髪の少女など、涙ぐんでしまっている。

 真水の井戸が出ないというのは、彼らにとってとても大きい問題のようだ。

 ――ならば、力になれるはずだ。

ここまで読んで下さりありがとうございます!


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