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銀河連邦学術士官ユーリ・フォイルの、剣と魔法のフィールドワーク  作者: ハヤケン


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第44話 ユーリの秘策

「レティーナさん、これからどうするんですか?」

「うん。ユーリ、私の言葉をバールデル殿に伝えて貰えるか?」

「はい、分かりました」


 ユーリが頷くと、レティーナはバールデルの目の前に座る。

 背筋を伸ばし姿勢を正した、改まった所作だ。


「バールデル殿、そちらの事情は理解した。忠告を頂き感謝する。本来ならばお言葉に従い別の土地に移住すべき所なのだが――残念ながらそういうわけには行かない」


 ユーリがそれを通訳すると、バールデルは何故だと首を捻って問い返す。


「我々は元々大陸側に存在していたリューシュ王国の者だ。戦争により祖国は滅び、降伏した我々はこのガルドラス島に渡るよう命じられてやって来た。要は島流しのようなものだ、元の土地に戻る事も別の場所に行く事も許されていない。ここで生きて行くしか無いんだ」


 それを通訳して聞いたバールデルは、重々しく頷いていた。


「うぅむ、戦争でな。なるほど、他に行き場の無い民か……だからこんな辺境にやって来たというわけだな」


 レティーナ達もバールデル達の意図を把握していなかったが、バールデル達もレティーナ達の事情を知る由も無い。

 改めて話し合ってみると、思う所があるようだ。


「もし宝石竜とやらが甦って島を滅ぼすというのなら、それはあなた達だけの問題では無く私達の問題でもある。だから私達を遠ざけようとするのでは無く、何か出来る事を協力させてくれないか? 力では及ばずとも、何か知恵を出す事は出来るかも知れない――どうかこの島で共に生きる事を許して欲しい。この通りだ」


 レティーナは折り目正しく深々と頭を下げてみせる。

 足元の赤い絨毯に額が頭がついてしまいそうだ。


「バールデルさん、僕からもお願いします! どうかレティーナさんのお願いを聞いてあげて下さい……!」


 ユーリもレティーナと同じ姿勢を取り、バールデルに頭を下げた。


「ユーリ。しかし宝石竜は本当に危険なのだ、お前達が思っている以上にな。それが分かってからでは全てが遅いのだぞ」

「勿論僕も出来る限りの事はお手伝いさせて頂きますので……!」

「ううむ。お前程の男が手を貸してくれるのならば、確かに心強くはあるが――」


 腕組みして唸るバールデル。

 頭を下げていたレティーナもユーリを見る。


「ユーリ、済まない。言葉は分からないが、私達のために頭を下げさせてしまって」

「いえ、いいんですよ。何もレティーナさん達のためだけでもありませんし」


 ドラゴン好きとしては宝石竜の事も見てみたいが、それがこの島の人々にとって危険な事であるのならば潔く諦めよう。

 だがレティーナやアルカや村の人々が、他に行き場も無いまま島を去らねばならないというのは見過ごせない。ここまで色々とお世話になった仲だ。力になりたいと思う。

 願わくばレティーナ達村人とバールデル達竜人(ドラゴニュート)が平穏に、活き活きと異文化交流していく姿を見てみたいのだ。


「バールデルさん! どうかお願いします!」


 ユーリはもう一度、深々と頭を下げる。


「先程も言った通り、僕も出来る限りの事はお手伝いさせて頂きます。もしその宝石竜が復活しても皆さんを速やかに助けられる方法を提案しますので、それを見てもう一度考えて頂けませんか?」

「ふぅむ……? ユーリに何か考えがあるのならば、見せて貰うとしよう」

「ありがとうございます! では早速用意してきますね! 暫く時間がかかりますので、また明日村に来て頂いても構いませんか?」

「あ、ああ……了解した」


 レティーナにも事情を説明し、その後ユーリも村を出た。

 森に隠してある宇宙船に向かうためだ。

 その道中、フライトボードに変形したアークの背でユーリは問いかける。


「アーク、今度は僕の事止めないんだね?」


 珍しい事だ。アークにはユーリが何をしようとしているかは大体推測出来るはずだ。

 それが遭難中の銀河連邦人にとって、割と危険な橋かも知れない事も。


「確かにユーリの考えている事は、自衛のための緊急避難の範疇を超えるかも知れません。ですが人命保護の観点や現在の置かれている状況からは、有効であると言わざるを得ません。確かに推奨は出来ませんが……パーソナルAIとしては、ユーリの選択と行動を誇らしく感じられます」


 だから何も言わずに黙認する、という事になったようだ。

 アークがこんな風に褒めてくれる事はちょっと珍しい。ユーリとしても嬉しかった。


「ありがとう、じゃあアークも共犯だね?」

「はい。AIに公判の被告となる権利が無いのが残念です」

「あ。アークだけ狡いなあ、ふふふっ」


 そう暫く微笑んだ後、ユーリは少し表情を引き締める。


「じゃあ、宇宙船に戻ったらすぐに作業を開始しよう。急がないといけないから」

「了解。既に航行機能復旧の作業シーケンスは作製済みです」


 現状のユーリの宇宙船は各部が損傷しており、パーツを組み合わせて復旧出来そうなのが航行機能、超長距離通信機能、艦載武装のうちのいずれか一つだ。

 そして他の機能のパーツを転用するため、選択したもの以外は復旧不可能になる。

 アークが言うように、三つの候補のうちユーリが選択するのは航行機能だ。


  ◆◇◆


 そして翌日。村の広場で――


「「「おおおおおぉぉ……!?」」」

「「「な、何ッスか、あれは……!?」」」


 集まった村人達も竜人(ドラゴニュート)達も、皆あんぐりと口を開けて空を見つめている。

 その視線の先に浮かんでいるのは――ユーリの宇宙船だ。

 こうして見ると、外装のあちこちが傷ついているのよく分かる。

 が、この通り航行機能については復旧が出来た。

 宇宙飛行となるとまだ少々心許ないが、MS-1の大気圏内であれば問題ないだろう。


「これは、鉄の船……!? こんなものが浮いているとは……!」


 度肝を抜かれているのはバールデルも同じで、大きく開いた口から鋭く尖った牙が姿を覗かせていた。


「ユーリはこれに乗っていて、この島に落ちてきたのか……?」

「ええ。まだまだ直す所はあるんですが、この通り飛べるくらいには修復出来ました」


 ユーリはレティーナの言葉に頷いてから、改めてバールデルに向き直る。


「バールデルさん。これが僕の提案する、宝石竜が復活した際に皆さんを速やかに助けられる方法です。ご覧の通りこの船は空を飛べますし、防御力だってレティーナさん達がお持ちの木の船とは段違いです」

「う、うむ……それは見るからにそうだろうな」

「では、実際に少し乗ってみましょうか? アーク、お願い」

「了解。では船体を着陸させます」


 広場に宇宙船がゆっくりと着陸すると、竜人(ドラゴニュート)達が我先にと宇宙船の上部装甲に飛び乗っていく。


「よっしゃあ、載せて貰うっス!」

「すっげぇッスね、こんなデカくて重そうな鉄の塊が飛ぶなんて!」


 それを見た村人達も、後に続こうと宇宙船の屋根によじ登って行こうとする。


「よし、俺達も乗ろうぜ!」

「うーんでも、結構高いや。昇るの大変だなあ」

「よし、私が手伝ってやるぞ、しっかりな!」


 レティーナも皆を手伝おうと腕まくりをしている。

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