第4話 もう一種の現地住民の皆さん
「はい! お願いします!」
期待に胸を輝かせてユーリがレティーナの手を取ろうとした時――
「ユーリ! 飛来物接近! 直撃はしません! 静止を!」
アークがそう警告を発する。
「アーク……!? うん!」
「※××※※◎……!?」
ユーリは即座に頷くが、レティーナもその様子に反応して剣に手を掛けた。
そのレティーナを、ユーリは下手に動かないように腕を掴んで引き留める。
アークは即座に軌道計算をした上で警告を発しているのだ、動く方が逆に危険だ。
ヒュンヒュンヒュンヒュンッ!
風切り音と共に飛んできたのは、如何にもアナログな弓矢だった。
それがいくつもユーリ達の近くの地面に落ち、綺麗に地面に突き立った。
「アーク! 第二射は!?」
「確認できません!」
「よし……!」
ユーリは頷くと早速、地面に突き立った弓矢を引っこ抜く。
「わぁ、弓矢かぁ……! ここではこういうものが使われてるんだね! へえぇぇぇぇ、い、一本貰って帰ってもいいかな? 貴重な文化財的サンプルだから……!」
現地の武器に興味津々だった。
「ユーリ、今は調査行動よりも、防衛行動を……!」
「…………」
アークがユーリを窘める姿を見つつ、レティーナも少々呆れ気味だった。
言葉は通じなくとも、ユーリの行動の奇妙さは伝わったようである。
だが、その表情もすぐに引き締められる。
弓矢が飛んできた方向から、木々の間を縫うように、低空で飛ぶ何かが現れたからだ。
グゲゲゲゲゲゲゲッ!
ギャギャギャギャギャッ!
聞こえてきた音を表現すれば、そのようなものだろうか?
飛んで来た人型の魔物達の声だ。
ただし人型と言っても、全身が鮮やかの色の鱗に覆われた、屈強そうな身体だ。
背に翼があり、そして頭部は、人間のものでは無く竜、ドラゴンのそれだ。
骨格が人型であり、直立二足歩行のドラゴン、竜人、と言うのが相応しいだろう。
「おおおおぉぉぉぉ……! ドラゴン顔の住民の皆さんだ! か、かっこいいなぁ!」
マナ文明の危険生物つまりモンスターの中でも、ユーリが一番好きなのはドラゴンだ。
マナ文明の頂点に君臨する最強生物であるというだけで凄いロマンなのだが、何よりアークの外見上のモチーフも一応ドラゴンなのである。
アークはユーリが生まれた時に両親から贈られたものなのだが、そのアークがマナ文明特有の生き物を模していると教えられた事から、ユーリはマナ文明に興味を持ったのだ。
そんな憧れの生物の眷属が、今ここに……!
これは是非、文化的かつ学術的な交流を試みなければならない。
「アーク! アーク! さっきのホログラフィを! こちらの皆さんにも事情を説明したいんだ!」
「了解」
ユーリはアークを手に持って掲げて、現れた竜人達に説明資料を見せようとする。
だがそれを見るまでも無く、先頭を飛んで来た竜人は、手に持った槍を大きく振り、柄の部分を叩きつけようとして来る。
「わ……っ!?」
ユーリはそれを見切って、大きく飛び退いて回避する。
『連邦上級剣闘プログラム』による回避運動は、この攻撃にも十分対抗できるようだ。
が、問題はそういう事では無い。
「ま、待って下さい、話せば分かる! いや、言葉が通じないから分からないけど! とにかくこれを見て頂きたいんですが……!」
しかしその呼び掛けに応じる者は無く、続いて着陸してきた竜人達も、ユーリ達を取り囲んで武器を構える。
ぐい、と肩を後ろに引っ張られる。
レティーナがユーリを庇うように前に立ち、剣を抜いて構えを取るのだ。
隙が無く、レティーナの凜とした雰囲気も合わさり、如何にも強そうに見える。
先程は炎を纏った剣で、樹木型の魔物を一刀両断しているのだ。
その迫力は竜人達にも伝わったようで、緊張感を漂わせてにらみ合いが始まる。
「あわわわ……ま、まずいです! このままじゃ……!」
マナ文明最大の特徴とも言える、魔法を操って見せる女性、レティーナ。
そしてマナ文明の中でユーリが一番好きな生物ドラゴンの親戚である、竜人達。
どちらもユーリが一生、生で 目にする事は無いはずだった、マナ文明の神秘そのものである。
その両者が傷つけ合えば、どちらかが失われる事になりかねない。
そんな事は学術的、文化的にとてつもない損失だ。
学術士官、研究者として、見過ごす事は出来ない。
「し、仕方ない……!」
ユーリは初めて、こちらから武器を取った。
腰のレーザーブラスターを引き抜いたのだ。
そして竜人達の足元に、ブラスターの光線を発射する。
『連邦上級銃撃プログラム』による照準は狙いを外さず、正確に竜人達の足元に着弾。
激しい光を発して爆発し、足元の地面を抉って痕を残す。
威嚇射撃だ。決して相手に直撃させてはならない。
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