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銀河連邦学術士官ユーリ・フォイルの、剣と魔法のフィールドワーク  作者: ハヤケン


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第37話 魔力欠乏症

「一体何があったんだ?」


 アルカをレティーナの家に連れ帰り部屋のベッドに寝かせると、レティーナはユーリにそう尋ねてくる。

 心配そうな表情で、青ざめたアルカの顔を撫でている。


「魔法で氷を出そうとした時に急に倒れたそうです」

「メディカルチェック。体温低下及び呼吸の乱れを検知。命に関わるような症状ではありませんが……」


 アークがそう伝えてくる。


「過労って事でいいのかな? それともレティーナさん、アルカには何か持病でもあるんですか?」

「いや、そんな事はないはずだ」

「体内マナ粒子の極端な低下を確認。現在7%。また大気中のマナ粒子の摂取が停止しており、体内マナ粒子が回復していません」


 MS-1の人々の魔法は自分の体内マナ粒子を呪文によって操り引き起こす技術だ。

 そして消費した分のマナ粒子は大気中に遊離しているものを時間をかけて吸収する。

 そうして体内マナ粒子が補充され、また魔法を使える状態になる。

 ユーリがフィールドワークによって直接確認したマナ粒子と人体に関わる生理現象だ。


「……では魔力欠乏症か」


 聡明なレティーナはアークの報告で察しがついたようだ。


「魔力欠乏症?」

「うん、魔法の使い過ぎで起きる症状だ。新米の魔法使いに良くある現象でな、私も昔なった事がある。暫く魔法を使わずに静養していれば良くなるはずだ」

「そうですか。レティーナさんがかかった時はどのくらいで回復を?」

「二十日ほどだったかと思う」


 と話し合っていると――


「……ごめんなさい。姫様、ユーリくん」


 意識を取り戻したアルカが、申し訳なさそうにぽつりと言った。


「アルカ!」

「意識が戻ったか! よかった、心配したぞ」

「ごめんなさい、わたしまた迷惑をかけちゃって……」


 アルカはしゅんとした様子で目を伏せてしまう。


「気にするな。魔力欠乏症は誰にでもある事だし、村の皆のために働いた結果だろう? アルカは何も悪くないぞ、ゆっくり休んでくれ」

「それまでは僕とアークがお水の事は何とかするからね、安心してて」


 ユーリはドンと自分の胸を叩く。


「うん……ありがとうユーリくん」


 そうするとアルカはほっとしたような笑顔を浮かべるのだが――

 そこから二日後。ユーリとレティーナが、アークの浄水化機能で水を配っていた時の事である。


 バキンッ!


 突如アークのボディからそんな音が響き、警告音のブザーが鳴った。


「アーク!? どうしたの!?」


 前のトラブルの時はアークのバッテリーが切れて動作を停止してしまっていたが、今度はアークは宙に浮いたまま、センサーアイの光も落ちてはいなかった。


「ユーリ。浄水化機能の処理モジュールが破損してしまったようです。原因は想定耐用処理量を超えた事による物理的限界です」

「そう……それは仕方ないね、部品の寿命だね」


 あくまでアークの持つ浄水化機能は緊急時のサバイバル用。しかも対象は少人数だ。

 集落全体の給水を担う事など想定されておらず、これだけの高負荷を掛ければこうなっても仕方がない。

 だが問題は――


「でもまずいね、浄水化機能の処理モジュール部分には換えがないよ」


 この間宇宙船に戻った時に確認してきたが、在庫は切らしていたのだ。


「ユーリ! アークは大丈夫なのか……!?」

「レティーナさん。いえ、すみません、もうアークは給水が出来なくなってしまいました。壊れたパーツの換えがないんです」

「えぇっ!? そ、そうか……だがまずい事になったな。アルカの魔力欠乏症はまだ治らないし、最近雨も降っていない――」


 ユーリが村にやって来る前の水不足が再燃してしまった形だ。


「ま、また水が手に入らなくなっちまったのかい……!?」

「いやでも、アルカが治ればまた――」

「それまで何とか俺達で凌げば……!」

「「「姫様! 何か私達に今できる事はありませんか!?」」」


 事態を把握しても村人達に大きな混乱は無い様子だ。

 出来る事をしようという姿勢にはレティーナもほっとした様子である。


「ありがとう、みんな。どうするかは考えてみるから、今日の所は待機していてくれ」


 レティーナの一言でその場が解散し、皆が家に引き上げていく。


「さて、どうしたものかな……」


 物憂げなレティーナに対し、ユーリもやや表情を引き締め口を開く。


「レティーナさん。僕、試してみたい事があるんですが――」

「ユーリ? 何か考えがあるのか?」

「はい! 居候をさせて貰っているんですから、アークの浄水化機能が壊れてしまったのなら別の形でお役に立たないとけません!」


 真剣ながらも目を輝かせ、ユーリはぐっと拳を握った。

ここまで読んで下さりありがとうございます!


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