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銀河連邦学術士官ユーリ・フォイルの、剣と魔法のフィールドワーク  作者: ハヤケン


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第27話 マナ粒子視認観測プログラム

 数日後。早朝の村の井戸の前で――


「そんなに面白いもんじゃあないよ? あたしは学がないから本なんてこれしかないしさ」


 ユーリとよく話してくれるふっくらとした女性が、本を手渡してくれる。


「いえいえ、何でも構わないんですよ。どうもありがとうございます」


 ユーリは本を受け取りながら、ニコニコとしてお礼を言う。

 村の皆に呼び掛けて、持っている本を見せて貰っているのだ。

 アークが文字も翻訳できるようにするためである。


 『MS-1人語翻訳プログラム』を文字にも対応させるアップデートだ。

 アルカの魔道書はアルカに読んで貰えはするのだが、アルカ自身の認識違いや細かな解釈違いなどから魔法が使えていない可能性もあるので、厳密に読み込める状態にする必要がある。


「ちなみに何の本なんですか?」

「料理の本だよ、うちのお祖母さんが料理好きでさ。秘伝のレシピって奴を纏めてたのさ」

「へぇ……じゃあこの世に一冊しかない貴重な本じゃないですか! そんな大切なものをありがとうございます!」


 これは内容的にも見逃せない本なのではないだろうか。


「おぉ。懐かしいな、ナディアのお祖母さんの料理本じゃないか」


 と、笑顔を見せているのはレティーナだ。


「ええ。こればっかりは手放せなくて、ガルドラス島にも持って来ちまいましたよ」

「ナディアは城の料理番をしてくれていたんだ。私に料理も教えてくれたりしてな。その料理本を見て、よく練習をしたよ」

「そうなんですか、じゃあ凄くいい事が書いてある本ですね! レティーナさんの作ってくれる料理はとても美味しいですし」


 これは内容的にも見逃せない。

 いずれアークに料理用のプログラムを開発して貰う事があったら、そのベースとなり得る本である。

 それから調理中のレティーナの動きを記録して解析する必要もあるだろうか。


「ふふ、そうか? そう言ってくれると作りがいがあるな」

「ありがとうよ、うちのお祖母さんを誉めてやってくれてさ」

「アーク。後でこれを読んで、内容も記録しておこうね!」

「了解です、ユーリ」


 アークは井戸に取り付いて、浄水化機能をフル稼働させている最中だ。

 それは以前と同じなのだが、アークの近くには井戸を半分囲うようにしてソーラーパネルが展開されている。

 ユーリが宇宙船から引っ張り出してきた外付けの光発電モジュールだ。

 これでアークの予備バッテリーを充電している。

 本体バッテリーの残量が減ってきたら取り替えるローテーションで、ここ一週間くらいは村の飲み水の供給を間に合わせる事が出来ている。

 ただし、アークがここに張り付いている必要が出てきてしまうのが問題 といえば問題だった。


「ほらウィル、あんたも何か無いのかい? ユーリちゃんにはお世話になってるんだからこういう時くらい協力しなよ! 若いんだからいかがわしい本の一つや二つあるだろ!」


 ナディアおばさんの息子は門番のウィルである。

 だからその言動には遠慮が無い。


「な、何を言ってんだよ母ちゃん! そんなもんねえよ! 姫様の前で変な事を言うなよな、失礼だろうがっ!」

「ゴホン。わ、私ももう姫ではなく単なる村娘だからな……気遣いは無用だぞ」

「レティーナさん。いかがわしい本って何の本ですか?」


 ユーリはきょとんとしてレティーナに尋ねる。


「えぇ……っ!? わ、分からないのかユーリ?」

「ええ。麻薬の製造とか、貨幣の偽造の方法とかが書かれているんですか?」

「い、いや。こ、これは苦労しそうだな……だがそういうところも可愛い、か――」


 レティーナは何やらぶつぶつと呟いている。


「? 誰が何をです?」

「い、いや私がな、そのう……」


 とレティーナは口ごもってしまってそれ以上は言ってくれない。


「?」

「と、とにかく姫様、母ちゃんが無遠慮で済みません!」


 ウィルが申し訳なさそうにレティーナに頭を下げる。


「で、でもちゃんと本は持ってきたからな! ほらユーリ」


 話題を変えようとしてか、焦った様子で本を差し出す。


「ありがとうございますウィルさん。これは何の本なんですか?」

「教本だよ。城の兵士の訓練用のな」

「ああ、なるほど……これも貴重なものですね!」

「お城の兵士になれて嬉しかったからな。結構宝物なんだ」

「そんなものをありがとうございます。大事に扱いますね!」


 そして本を集めたり談笑したりする賑やかな井戸の近くで、アルカが魔法の訓練をしている。


「えいっ! えいえいえいっ!」


 ぽんぽんとその手から放たれるのは照明の魔法だ。

 ただし――普通のシンプルな白色光と共に、赤や青に色づいた綺麗な色の照明が混ざっている。


「うん……! 今日は調子いいかも!」


 アルカは気合いの入った様子で、うんうんと頷いている。


「へぇ! 違う色の照明も出せるんだね、綺麗だなあ」

「俺達にはあれは出来ないんだよなあ」


 ウィルが不思議そうに呟いている。


「そうなんですね。レティーナさんにも出来ないんですか?」

「私は赤い色だけなら出来るな。だがあんなに色とりどりなのは無理だぞ」


 言っている間にアルカは黄色や緑やピンクの光も生み出している。


「あれが出来てるのに他の魔法が一切使えないって言うのは、確かに不思議だよなあ」

「体内マナ粒子の動作良好。他の方に比べてマナ粒子の運動速度、運動量共に良好です」

「うん。後で見比べてみようね」

「その件ですがユーリ。リアルタイムに状況を把握できるよう、マナ粒子の動作観測用のプログラムを作成しました。『マナ粒子視認観測プログラム』ですがダウンロードしますか?」

「わ! うんうん、その方が速いかも知れないね。ありがとうアーク、早速お願い!」

「では開始」


 アークから近距離無線通信でユーリの体内インプラントにデータを送って貰い、早速インストールしてプログラム起動。

 ユーリの視界にマナ粒子の動作キャプチャと同じ映像が映るようになった。

ここまで読んで下さりありがとうございます!


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『ユーリくん!』


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