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銀河連邦学術士官ユーリ・フォイルの、剣と魔法のフィールドワーク  作者: ハヤケン


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第26話 アルカと魔法

「うん。でもアルカは魔法が使えないわけじゃないと思うんだ、絶対」

「? どういう事? あ、明かりの魔法だけは使えるから? それとも他の魔法の契約だけは出来てるから?」

「いや違うんだ。まだ原因ははっきりしないけど――ここの皆さんから集めさせて貰った魔法のデータを観測してたら、面白い事が分かってね。魔法って魔法を使う人の体内のマナ粒子を使うでしょ?」

「あ、うんそうだね。粒子って言う言い方はせずに、普通にマナだけど」


 頷くアルカ。レティーナも同じく頷いてユーリの話を聞いている。

 アークが取ったマナ粒子キャプチャを解析してみると、皆自分の体内にマナ粒子を溜め込んでおり、魔法を使う際にはそれを体外に放出して魔法という超自然現象に変換しているのが分かった。

 そして大気中に浮遊しているマナ粒子を時間をかけて呼吸と共に体内に取り込み、消費した分を再び補充するというサイクルになっているようだった。


「つまり体内に溜め込んだマナ粒子が多ければ多い程、その人の魔法の力は強いって事になると思うんだ。それを僕達は『体内マナ粒子濃度』って呼ぼうと思うんだけど――」

「うん。マナを多く持ってる人の魔法の力が強いのは当たり前だね」

「正確に測る事は私達には出来ないが、ユーリとアークになら出来るという事だな?」

「はい。それで皆さんに魔法を使って貰ったデータから数値を割り出すと、村人の皆さんは大体5%から10%。門番のウィルさんが15%という所です」

「ウィルは明かりだけでなく簡単な攻撃魔法も扱えるからな。門番として十分な能力を持っているよ」

「引退はしてらっしゃるのでしょうが、元魔法兵のハッサムおじいさんが21%」

「おぉ、高いんだな」

「ハッサムお爺ちゃんってやっぱり凄いんだ……」

「そしてレティーナさんが33%」

「む?」

「姫様、もっと凄いです!」


 レティーナは実際剣に炎を纏わせて魔物を一刀両断したり、ヤムヤムを襲いに来る魔物にも対抗する魔法を放とうとしていたし、魔法剣士として力量十分という感じだ。

 体内マナ粒子濃度が高いのも納得であるし、逆にレティーナのような人物の数値が高く出るということはこの数値にも信用が置けるという事にもなる。

 数値と実態が見合っている。


「何だか面映ゆい気もするな。まあ日頃の鍛錬を認めて貰ったという事にしようか」


 そう言って少々照れくさそうに微笑むレティーナ。


「で、ここからが本題です。この『体内マナ粒子濃度』なんですが――アルカは51%あります」

「「ええぇぇっ!?」」


 レティーナとアルカが吃驚して声を揃える。

 アルカの場合照明の魔法しか使えないのだから5%かそれ以下になると思っただろう。

 実際にはそうではなく、この村の誰よりもアルカは魔法の才能がありそうである。

 魔法の行使に必要な契約の儀式が色々な魔法で出来たというのも、アルカの才能がゆえだろう。決して間違った判断ではないという事だ。


「じゃ、じゃあアルカは私よりも魔法の才能があると言うことでいいんだな? いいんだよな、ユーリ!?」

「ええ。その通りだと思います。つまる所燃料は十分、なのに現象が起きないというのは途中のプロセスに問題があるんだと思います」


 それが解決できれば、アルカは誰よりも強く魔法が使えるはずだ。

 データ観測の結果としては、そうとしか思えない。


「だけどプロセスの問題を解き明かすには、まだまだ情報が不足していますしアルカ自身の協力も必要です。だから――僕と一緒にやってみない? 魔法が使えない問題の課題研究」


 ユーリはにこりとアルカに微笑みかける。


「わ、わたしが魔法を使えるように……なれる……の?」

「やったじゃないか! きっとアルカは魔法が使えるようになるぞ!」


 アルカは信じられないといった表情で、レティーナは顔を輝かせている。


「ははは、気が早いですよレティーナさん。必ず上手く行くと決まった訳ではないですし」

「いやいや、ユーリがする事なんだからきっと上手く行くさ! なあ、アルカ?」


 レティーナは嬉しそうにアルカを抱き締める。


「ひ、姫様……?」

「私とアルカは幼馴染みなんだ。リューシュの城で姉妹のように育った。皆信じないが、アルカは小さな頃は凄い魔法が使えていたんだ。私は見ていたからな。それが大きくなって修行をはじめたら、いつの間にか……」


 年上のレティーナは妹のようにアルカを見守っていたのだろう。


「だが、アルカが何とか魔法が使えるように努力してきたのは知っている。いつか報われればいいと……本当に良かったな。頑張るんだぞ、アルカ」


 アルカを抱き締めるレティーナの目には、うっすらと涙すら浮かんでいる。

 身の回りの人達を慈しみ心を砕く、優しい人だなと思う。

 ガルドラス島に追放されるような形で故国を追われたレティーナに多くの人々が付き従っているのも、彼女の人柄なのだろう。


「姫様……姫様にそんな顔されたらわたし……ありがとうございます……!」


 アルカも涙ぐんで、レティーナと抱き締め合う。

 その光景は心温まる優しいものだと感じる。

 銀河連邦人はここまで人に対して親身になる人は少ない。

 というよりその必要が無いのだ。

 個々の運動能力や何かは体内インプラントにインストールする動作プログラムによって補正されるため、それ程の差はつかない。

 マナ粒子の生む歪みがなく技術が個人差を平坦にするため、アルカのような悩みは生まれ辛いのだ。


「ユーリ、アルカのことをよろしく頼む」


 レティーナはユーリに向かって深々と頭を下げる。


「お願いします! 頑張ります!」


 アルカもそれ以上に深々と頭を下げてくる。


「ええ、僕も言い出した以上、必ずアルカが魔法を使えるようにして見せます!」


 提案をしただけでここまで喜ばれてしまっては、ぬか喜びにさせてしまうわけにはいかない。責任重大である。


「じゃあこの後でアルカのおじいさんの魔道書を見せて貰っていい? まだ見せて貰ってないから――それに、普段どんな魔法の練習をしていたかとかも知りたいんだ」

「うん! 分かった!」


 そして宴が終わったあとレティーナの家に戻って魔道書を見せて貰うと――


「……読めない!」

「解読不能、解読不能」


 MS-1の言語翻訳プログラムは作成できているものの、それはあくまで話し言葉の話。

 文字はまた別だった。


「あ、わたしが読むね。ええとこれは――」


 文字も翻訳できるように、また情報のインプットが必要そうだった。

ここまで読んで下さりありがとうございます!


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