第13話 アークの食事
「ははは、大袈裟だなぁユーリは。だが、喜んでくれているようで嬉しいぞ?」
レティーナはにこにことしてユーリを見つめている。
「さあ、まだまだあるからどんどん食べてくれよ? ユーリは皆の命の恩人だ。あのまま水が手に入らなければ、干涸らびていたかも知れないんだからな」
レティーナはサラダやスープも盛り付けて、ユーリに手渡してくれる。
「はい! ああこっちもシャキシャキとしていて美味しい……!」
フォークで野菜をざくりと刺して口に運び、キラキラとした笑顔を浮かべるユーリ。
肉で快感物質まみれになった口の中を、綺麗に洗い流してくれるような感じがする。
そうすればまた新鮮な感覚で、肉を楽しむ事が出来るだろう。
あっちとこっちを行き来する事で、それぞれだけを別々に食べるよりも遙かに上の相乗効果を生むのである。
「こちらもとても優しい味ですね……! 何だか体に染み込むようです……!」
スープを口にしたユーリは、うっとりとため息をつく。
「うん。ちょっと味付けにコツがあるんだ。簡単なものだが、中々だろう?」
言いながら、今度は魚介のパスタを盛り付けて手渡してくれる。
「ええ、とても……! レティーナさんは凄いですね、こんなにも美味しい、素晴らしいものを作り出せるなんて……!」
「姫様はお城でもお料理が上手だって有名だったんだよ? ああ、お肉は久しぶりです。ほんとに美味しい……!」
アルカもお肉を口に運びながら、そう教えてくれる。
「うんうん、分かるよアルカ! きっとこれも美味しいんだろうなぁ……!」
「ん? 二人とも、もう仲良くなったのか? アルカは結構人見知りなのにな」
「あ、はい……ユーリくんは優しいから――」
少々恥ずかしそうに俯くアルカ。
「いえ、アルカは凄く頑張って手伝ってくれましたし、それに色々話も聞かせて貰いましたし、魔道書を見せて貰える約束もしてくれたんですよ!」
「そうか。ふふふ、ユーリがいてくれると何だか雰囲気が明るくなるなあ。アルカに元気が出るのはいい事だ。さ、その魚介のパスタも食べてみてくれ」
「ええ、いただきます!」
と、ユーリはフォークでパスタをくるくると巻き取る――事が出来なかった。
パスタはユーリのフォークを滑り落ち、つるんとお皿に戻ってしまう。
「あれ、滑るなぁ?」
と、何度か試みるのだが、上手く食べる事が出来ない。
「ああ食べ辛いか、ユーリ? ほら、こうだぞ」
と、レティーナはフォークを持ち方を見せてくれる。
ユーリのフォークの持ち方は、ぐっと握り拳で真横にフォークを握る持ち方だった。
いわゆる乳幼児の持ち方である。
フォークやナイフさえ持ち慣れないのが銀河連邦人のスタンダードなのだ。
「おぉ……こう持つんですか?」
「それでこうくるくると――ほら。はいどうぞ、あーん」
と、レティーナはユーリの顔の前にパスタをくるくるしたフォークを差し出す。
「はい!」
ユーリは躊躇いなくそれをぱくんと一口。
「うわああぁぁぁ! これも美味しいぃぃぃっ! つるつるしていて喉にするっと入ってくるし、歯応えも良くて何だか色々な美味しい味もします!」
「うん。魚介を煮詰めたものからソースを作っているからな。味が奥深くなる。気に入ってくれたか?」
「はい、とても!」
「そうか、良かった」
ニコニコと笑顔を浮かべるユーリに、レティーナも嬉しそうに微笑む。
「こうしてこうして――こうですね」
レティーナにお手本を見せて貰ったユーリは、おぼつかないながらも自分でパスタを口に運ぶ。
「うーん、美味しい……!」
これも他の皿の料理と組み合わせる事で、更なる相乗効果を生む。
どんな順番で食べるか、またそれをどの程度で食べるか。
微妙な組み合わせの差異を考慮すると、無限に楽しめるエンターテイメントのようなものだ。
銀河連邦人にとって食を楽しむという概念は希薄なので、これには恐れ入った。
それぞれの料理の栄養素の偏りは凄いものがあるのだろうが、それを補って余りある魅力だと感じる。
効率的に必要十分な栄養素を摂るという目標のために、削ぎ落とされて行った大切なものがここにはあるのだ。
「アークも何か食べないか? よく働いてくれて疲れているだろう?」
と、レティーナはアークの事を気遣ってくれる。
レティーナの解釈ではアークはユーリの使い魔のようなものと考えているようなので、珍しい小動物くらいの認識なのかも知れない。
使い魔と言えば、小鳥や黒猫みたいな小動物というイメージだ。
「お心遣い感謝します。ですが私に食事の必要はありませんので、遠慮いたします」
「そ、そうなのか? 飲まず食わずで平気だと?」
「はい。正確に言うと、皆さんのように食事を行って栄養素を摂取する事が不可能です。勿論、その代わりに燃料の補給は必要ですが。暖炉の薪やランプの油のようなものと考えて下さい」
アークがそう補足する。
「なるほど……生きているように見えるが、生きているわけでは無いと?」
「とはいえ僕専用に特化して、人格にも近い自律思考を構築していますから、ただの暖炉やランプとは違うと僕は思いますけど」
ユーリにとっては家族よりも家族と言える、大切な相棒なのだ。
ここまで読んで下さりありがとうございます!
『面白かったor面白そう』
『応援してやろう』
『ユーリくん!』
などと思われた方は、ぜひ積極的にブックマークや下の評価欄(☆が並んでいる所)からの評価をお願い致します。
皆さんに少しずつ取って頂いた手間が、作者にとって、とても大きな励みになります!
ぜひよろしくお願いします!




