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イノサンスフェンリル  作者: 泉 燈歌
第1章 派遣奴隷編
29/35

山田太郎④

ようやくお暇ができると思ったら今度は免許取らなきゃならん……。


というわけでなかなか話が進みません。

週一くらいで上げていきたいっすねぇ。

「――ッ!?」

「どうした?」

「……なんでも、ない。ですよ?」

「そうは見えないんだけどなぁ……?」


 黄金《ゴールデン》騎士団《ナイツ》って人たちが入ってきた瞬間、フェリになにかあった。

 なにがあったのかはよくわからないが、雰囲気が変わったって言うのかな。急に大人びた、そして冷たく突き刺すような鋭い眼になった。

 視線の先には悪趣味な金の鎧と……腰に差した剣?


「……まさかこんなところでアレが見つかるなんて。初回にしては際物過ぎるけど……でも、これはこれで回収の手間が省けていいのかもしれないわね……?」

「なにぶつぶつ言ってんの?」

「なんでもないわよ、ご主人様」

「嫌なニュアンスの『ご主人様』だねぇ……」


 ガラの悪い騎士に怯えて俺の背中にくっ付いてるミーニャちゃんの頭をモフる。

 あぁ……癒されるぅ~。


「あれが噂の……」「黄金貴族の今代当主様だぜ」「なんでこんなところに」「あそこの領地からは早くても一ヶ月はかかるんじゃないのか?」「いやそれとも……」


 わいわいがやがやと騒ぎ立てている冒険者たち。

 真ん中の一番偉そうにしている金騎士が一歩前に出て、にらめつけるようにして見渡すと、ギルドに再び沈黙が訪れる。


「ふんっ……雑魚共が」


 まぁ、そんな外野はどうでもいい。

 なんで獣人ってこんなにも気持ちいいんだろうなぁ。

 ミーニャちゃんをモフって俺が幸せになって俺にモフられてミーニャちゃんが幸せになってまた俺がミーニャちゃんをモフって幸せが倍増されてさらに俺にモフられてミーニャちゃんが幸せ激増して……うーん、なんという幸せスパイラル。ツインドライブシステムなんて目じゃねぇぜ!


「おい、なぜ俺様の道を塞いでいる平民」

「へ?」


 やべぇ話聞いてなかった。なんで絡まれてんの俺。

 どう答えようか迷っていると横からフェリにつつかれた。


「受付に用があるみたいだから退いてあげなさい」

「あ、うん。悪かったな」


 そう言って道を譲ると金騎士はなぜかプルプルと身体を震わしこちらを睨んでいる。

 貴族っぽいし言葉遣いが悪かったのかな?


「この俺様に向かって『悪かったな』だと……!? 何様のつもりだ、平民」

「自由民です?」

「なんでそこお前が答えるんだよ」

「ご主人様だと『別にただの平民ですけどなにか?』って言いそうですから」

「うん……そうだろうけど。あ、じゃあ対応は任せるよ」


 フェリとこそこそ話し合っていると金騎士の機嫌がさらに悪くなっていく。

 まぁ、目の前でこんなことされたら誰だっていい気はしないよな。

 自覚はあるが、改めるつもりはない。

 だって、典型的なクソ貴族臭がプンプンしてくるんだもんっ!


 ……もんっ、はありえないな。うん。

 礼儀作法の”れ”の字も知らない俺が受け答えなんかしたら即不敬罪で捕まりそうだし。

 そもそも、不敬罪ってこっちでもあるのか?


「貴様……銀狼か」

「フェリと申します。どうも主人が失礼を致しました」

「ふっ……あれが飼い主とは世も末だな」

「否定はしません」

「しろよ!?」


 思わずつっこんでしまった。

 いや、そりゃ俺なんかがフェリみたいな子の主人として相応しいかって問われたらNOだと即答するけどさ。


「……気に入った。貴様、俺様の犬にしてやってもいいぞ。アレには勿体無い」

「は?」


 人様のことをアレ呼ばわりはいけないと思うんだよな。

 勿体無いってのは確かに俺自身そう思うけど。


「おい、そこの猫。貴様もなかなか――」

「ひっ!」

「それ以上ミーニャちゃんに俗物的な視線を向けてみろその腐った魚の目みたいな眼球潰すぞ」


 フェリに対しては俺がどうしようと自力でどうにでもするだろうから放っておくが、ミーニャちゃんは駄目だ。

 盗賊に攫われたトラウマがまだ残っていて、男の邪な視線を向けられるとどうしても怯えて動けなくなってしまうらしい。

 お供らしい二人の騎士が顔を険しくして近付いてくる。


「おい口の利き方に気をつけろ平民! このお方をどなたと――」

「……殺ス」

「ところがぎっちょん」


 ――キンッ!


「ぎっちょんちょんっとね!」


 ――ガガキンッ!!


 お供の騎士が喋り終わる前に金騎士の姿が消え、なにか固い金属が同士が打ち合ったような音がしたと思ったら、俺の目と鼻の先に剣があった。

 これは、金騎士の剣だったはず?

 一度、瞬きをして、改めて状況を確認すると、

 金騎士が俺に剣を振り下ろそうとしていて、俺の目の前にいるフェリが二振りの小刀を頭の上でクロスさせて防いでいた。

 なんか「身長差あってごめんよ」と、背伸びしていてつらそうだったのでそう言いたくなった。


「危ない危ない。腐っていても流石は『陸《ロク》』ですね」

「……ドケ、犬」

「『あんちゃんどいてそいつ殺せない』って言ってくれたら考えてあげても構いませんよ」

「笑えないしどの道退く気ないだろ。退かれたら困るからそのままで頼むけど」

「はい。無論です」


 そういや、フェリの気配が元に戻ってるな。

 シリアスっぽい空気を纏っていたのに。それともそれは俺の気のせいか?


「ちなみに奴隷の主人を殺せば奴隷はフリーになるので寝取り放題なんですよ」

「殺されたら寝取りもなにもないと思うのは俺だけか。死んでたらもうすでに終わってるよ」

「盗られることに変わりはないですね。命も女も」

「ドけよどケよどけヨォォォ!」


 ――ガキンガキンガキンッ!


 目にも留まらぬ速さで振るわれる剣を涼しげな顔でパリィし続けて捌くフェリ。

 あれ、チートってなんだっけ?

 い、いや。俺はまだ大器晩成型で本気とか出してないだけだし(震え声)。


「所詮、剣に取り憑かれて剣を振り回すだけのケダモノですよ、こんなもの。技能と剣の性能に引っ張られていて、本来の基礎的な能力値なんてゴミみたいなものです」

「オォォォォ!」


 ガガガガガと音が繋がって連続して響いているようにしか聞こえないのだが、そのひとつひとつがオーバーキル気味に一撃で俺の命を刈り取れるんだろうな。


「ほら、掴まえた」

「離セぇっ!」


 剣を持っている両腕をがっちりと拘束してギルドの壁に叩きつける。

 叩きつける叩きつける叩きつける叩きつける叩きつける蹴り込む叩きつける叩きつける、一度手を離したと思ったら相手が反応する前に無詠唱の魔法かなにかで空中に打ち上げ回し蹴り、壁にぶつかって反動で戻ってくるところを再び蹴り上げ拳を連打連打連打。


 ……格ゲーか!

 しかも空中に上げてからのエリアルと壁を使ったハメ技が鬼畜過ぎる。無詠唱で追撃できるって卑怯としか言いようがない。


「残空――絶破衝雷剣!」


 フェリがとどめとばかりに小刀を両側から首に振り下――


「殺すなよ!?」

「……わかってますよ」


 なんとかギリギリ峰打ちで済んだ。

 バチバチバリバリと放電し、アンモニア臭と肉が焦げる嫌な臭いが漂ってきたが……死んでないならまぁいいか。


「……臭い。清き浄化の熱線【クリーンビーム】」


 フェリがなにやら唱えるとボロ雑巾のような状態の金貴族の身体を紅い光が貫く。

 なんか焦げている範囲が広がっているような気がする。

 しかし、アンモニア臭は確かに消えた。


「むぅ……この組み合わせは没か。技もまだまだ……修行が足りぬ」


 その呟きに反応できるほど余裕のある人間は、ここにはいない。

 おそらく一番の実力者である猫助ですら、唖然として固まっている。


 フェリはそんなギャラリーを無視して金騎士が持っていた剣を拾い上げる。

 それを握った途端、またフェリの雰囲気が変わったような気がした。


「また逢えたね……フリント」


 その表情は、どこか懐かしいものを見るような、旧友と出くわしたかのような、穏やかな顔だった。


「お、おい! そそそ、その剣をどうする気だ! それはゴール家当主が代々継いでいる由緒正しい魔剣なんだぞ!」


 金騎士のお供のひとりがそう言って食って掛かった。

 もう片方は金騎士に回復魔法でも使っているのか、淡い緑色の光に包まれている。


「由緒正しい、ねぇ……? それじゃあ、この子の名前を言える?」

「そ、それは……”すりーえっくすとぅーいー”だ!」

「ふふっ」


 フェリの随分とお淑やかな笑い顔を拝めた。

 っていうか”3X2E”ってなんの暗号だ?


「そう、その程度の解析なのね。コレをたかが魔剣と同じ物として見ているから、そうだろうと思ってはいたけど。せめて擬装解除くらいはできないと」

「い、いますぐそれを返せ!」

「返せ? おかしなことを言うのね。コレは元々こちら側のモノよ」

「この盗人め!」


 あまりに奇天烈な戦闘を目の当たりにしたせいか、彼はまともな思考をできてはいなかった。

 俺に見えるくらいだから金騎士よりもずっと遅い。愚直なまでに一直線にフェリが持つ剣に飛び掛ろうとし――


「目覚めろ【フリントロック】」


 フェリが持つ剣が、形を……いや、姿を変えた。

 薄い蒼色に揺らめく刀身と、剣先から見ると三角形を形作っている三又の白い柄。柄に赤い縞模様が浮かんでいるが、その光の強弱は、まるで生物の鼓動にも見える。

 綺麗だ。

 美しい。そのはずなのに。


(なんで、こんなにも身体が震えるんだ!?)


 俺はいま、きっと恐ろしいものを見ている。

 目に映る姿の裏に、ナニカがある。嫌でもそれが伝わってくる。


[心理防壁意識体にエラーが発生しています]

[緊急支援プログラムが発動しました]

[アップロードは完了しています]

[生命維持強化を取得しました]

[恐怖耐性を取得しました]

[神器鑑定を取得しました]

[情報を更新しています]

[修正が完了しました]

[No,SBよりメッセージが届いています]

[『これを見聞きしたってことは神格持ちか神器の使い手に出会ったってことだね。僕は君が早死にすると少し困るんだ。だから対抗まではできなくとも、逃げて生き延びれる可能性を授けてあげよう。勇者や魔王程度が持つアーティファクト級の武具は能力さえ知っていればどうにかなる物もあるから、頑張ってね』]


 滅茶苦茶微妙なサービスだが、貰える物は貰っておく。

 耐性があっても怖いものは怖いのだが、その恐怖心を押し殺して神器鑑定をする。


==========


【触手剣”XEXEX《ゼクセクス》”】


・『地獄突き』が使えるようになる。

・半自動制御可能。自律機動戦闘可能。

・30本を越える兄弟姉妹剣が存在する?


製作者:破壊神No,EV


==========


 ……なんか、知ってるような気がしてならない名前だな。


 騎士は、ギルドの壁に大穴を開けて外へと吹き飛んでいた。

 やっぱり見えん。フェリが振るう腕の残像すらどういった軌道を描いているのかわからん。


「ふふっ……くっふふふふふふふ」


 ……さて。

 金騎士が瀕死でお供が片方消えてフェリがトリップしているこの状況。

 どう収拾つけようか?


いつの間にかベル様が超重要人物になっています。

神々の時代から生きているので歴史を知る説明役に丁度良いんですよね。


誤字脱字、その他設定の矛盾とか気付いたことがあったら言ってやってください。

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