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イノサンスフェンリル  作者: 泉 燈歌
第1章 派遣奴隷編
28/35

山田太郎③

そろそろ自由に使える時間が増えてくるだろーなーと思っていた時期が昔の私にもありました。


就活? いえ、知らない子ですね?(´・ω・`)

「あのー……ちなみにこのフェリっておいくらなんですか?」

「ぬ? ……そういえば、決めてないな」

「そうですね。基本レンタル料から換算すると……約6億ウェンくらいですかね」

「ぶふっ!!」


 吹いた。

 それ広い土地とか豪邸が買えるんじゃね?

 現代日本だったらそのまま起業できるんじゃね? 中小企業なら丸ごと買い取って乗っ取れるんじゃね?

 個人でそれだけのお値段がつくとかどんだけぶっ飛んでんのこの子。


「いちおう戦闘民族で戦略兵器みたいな存在の絶滅危惧種ですから」

「んなもん奴隷にしていいのか!?」

「ばれなきゃいいんですよ」


 当の本人がそう言うのであれば俺が文句を言うのもおかしい……のか?

 ミーニャちゃんとあっちむいてほいをして遊びながら俺と会話するフェリを見る。いまのところフェリが全戦全勝しているようだった。涙目になってるミーニャちゃん可愛い。

 これが6億とか……ちょっと実感湧かないわ。桁が違いすぎる。100万がいくつよ?

 100万が600個? やっぱわからんわ。


「もうワイバーン如きに後れを取ることはないはずなので。戦闘はお任せくださいね」

「いやワイバーンとかそんな強い奴をいきなり狩ったりはしないから。まず俺が死ぬ」

「その時は私が盾になりますから、タロー様はその隙に逃げてください」

「俺に構わず全力で逃げてくれ。ミーニャちゃんには死んでほしくない」

「タロー様が死んだら私も死にます。だから死なないでくださいね?」

「お、おう……」


 重い……想いが重いよミーニャちゃん。愛じゃねぇよ。

 まぁ、元から無理をするつもりはこれっぽっちもないけど。

 いくらステータスを強化してたって戦闘経験がロクにない俺の戦闘力なんてたかが知れてるだろ。

 身の程を弁える、それが日本人クオリティ。


「自重と自粛はお国柄ですか? それを美徳だと思っているのは貴方達だけですよ?」

「うるせぇこちとらパンより米派じゃあ」


 つかなんでフェリは俺の考えてることがわかるの?

 俺の母国知ってるのかよと言いたくなるな。じゃあどこだと聞き返されると困るから言わないけど。

 あれか、フェリは超能力者か。PKか。


「そこはせめてESPと言ってほしいですね。混同するのはいけませんよ?」

「いいから俺の思考を読むな。怖いわ」

「それは命令ですか?」

「お願いだよ」

「……承知しました」


 そういえばこの世界に米ってあるのかな?

 醤油と味噌がなかったら香辛料の入ってないカレー並みに味気ない食事をすることに……やべぇ知識チートしてでも作らなきゃ。


「ちなみにお米はありますよ」

「だから先読みはやめろって!」

「さっきパンより米派だって言ったじゃないですか」

「あ、あぁ。そうだったな」

「良かったですね」

「うん……そう、だな」


 こうも簡単に翻弄されてると……不気味だ。

 この可愛い狼少女が得体の知れない怪物に思えてくる。

 ほんと、なんで奴隷なんかになってるんだろう?


「というか、主食類から野菜、魚介類、果物、甘味類もダンジョンからボロボロ出てきますのでこの周辺の食生活は割と豊かですよ。もうすぐチョコダンジョンも解禁されるそうですし」

「へー」


 なんで俺がそれを知らないことを知ってるのかな?

 てかチョコダンジョンってなんだよ。バレンタインですかそうですか。

 思いっきり地球に毒されてるけどここ異世界じゃねぇのかよ!?

 そう問いかける前に先手を打たれて腕を引っ張られる。


「それじゃあ行きましょうか。まずは冒険者ギルドでよろしかったですか?」

「もう行くのか? 用意とか、挨拶とかはしなくてもいいのか?」

「ご主人様が寝ている間に済ませましたので」

「早いなおい。断ってもどのみち俺に付いてくつもりだったのか?」

「さて。どうでしょうね?」


 いったいどこからどこまでが仕組まれているのやら。

 いやまぁ戦力として心強いし助かるんだけどさ。

 ミーニャちゃんだけ事情がわからず首を傾げている。可愛いなぁ。抱きしめたいなぁ。撫でたいなぁ。舐めたいなぁ。食べたいなァ……。


 ――はっ! 危ない危ない。

 危うくトリップするところだった。


[精神領域干渉に抵抗しました]

[神獣……神狼フェンリル種の加護が確認されました]

[メッセージは未確認です]


「じゃ、気が向いたら手紙でも出すよ」

「いってらっしゃいフェリ。くれぐれも、粗相のないように……というのは無理でしょうね。太郎様、どうかフェリのことをよろしくお願いいたします。ミーニャさん、フェリと仲良くしてくださいね」

「はい。ありがとうございました」

「ありがとうございました!」


 善は急げとばかりにさっさと屋敷を出ようとするフェリ。

 エルフっぽいメイドさんと握手してまた会うことも約束した。

 欲を言えば少しくらいは屋敷を見て回りたかったんだが、どうせこんなところの高級奴隷を買うお金は持ってないし、がっぽり稼いだらまた来よう。

 屋敷の人間全員で手を振り見送られるフェリを見ていると人気者だったんだな、と思えた。


「っていうかメイド服のまま旅する気か? 手ぶらだし」

「アイテムストレージがあるので荷物のことはお気になさらず。あとこのメイド服はそこいらの金属鎧よりもよっぽど頑丈ですから」

「……ちなみに、それお値段はいくらくらい?」

「ざっと見積もって……原価だけで700万くらいですかね」

「ななひゃっ!?」


 服の値段じゃねぇよ!

 日本の一般的な車よりも遥かに高いわ!


「ミーニャさん」

「はい、なんですか?」

「貴女も冒険者になるんですか?」

「そう……ですよ。タロー様の足手まといにならないよう、頑張ります」

「……まぁ、ご主人様ならうまいこといけそうだし、いいかな」

「なにか言いました?」

「いいえ、なにも」


 金銭感覚が狂いそうになってる俺を差し置いてふたりでなに話してるんだろう?

 気にはなったが、ガールズトークに男が入っても碌なことにならない。

 友好を深め合ってくれているなら良いことじゃないか。


「着きました。ここが冒険者ギルドです」

「おぉー!」


 いかにも『ギルド』って感じの建物だ。他の建造物よりも階数が多く、高く広い造りになっている。

 中に入ると好奇の視線が集まってきたが、フェリが一歩前に出ると途端に誰もが大人しくなって目を逸らす。


「なんだ……?」

「私はここでは顔がよく知られているのです。それだけのことですよ」

「そう、か?」

「えぇ。ちょっと待っててくださいね。すぐ呼びますから。猫助~!」


 大声でカウンターの奥へと呼びかけるフェリ。

 すぐに寅猫の獣人が出てきた。ちっ、男か。

 名前で予想はしていたけど。猫耳と尻尾って男でも意外と似合うな。


「忙しいってのに俺を呼ぶ悪い犬っころはフェリかにゃ~ん?」

「言葉を慎めよまたたび下戸助」

「ぐっ、まだ言うのかにゃー……一生の不覚だにゃ」

「ご主人様とミーニャさんの登録に来たから仕事してくれる? ランクは『参《さん》』からでお願い」


 フェリがそう言うと猫助の薄目がさらに細まり、ちょっと怖くなる。


「ご主人様……こいつがかにゃ?」

「うん」

「あんまり強そうには見えないんだけどにゃー?」

「これから強くなるよ」

「俺っちよりもかにゃ?」

「……なるよ。きっとね」

「ふぅん………………にゃははははは。面白いにゃ」


 じっと見つめてきたかと思えば突然笑い出した。

 あれ、まったく話に入れないんだけど。

 流され系主人公は遠慮したいよ?


「おっけーおっけー。ランクは『参』で良いんだにゃ?」

「うん。それでおねがいね」

「ほいほいーっと」


 ガッチャンガッチャンなんだかよくわからない機械音とほわーんとかみょいーんとかいった名状しがたいファンタジック(?)な稼動音がどこからともなく聞こえてきた。


「あいよっと。魔力を流せば認証完了にゃ」

「さんきゅー。はい、ご主人様、ミーニャさん」

「あ、うん」

「は、はい」


 手のひらサイズのカードを手に持つとほんのり光り、消えた。


「【ギルドカードオープン】と唱えれば出てきますよ。それがあれば街の出入りや国境を越える際に必要な身分証になります」

「へぇ~。ファンタジーだなぁ」

「ふぁんたじぃ?」

「あ、いやこっちの話」


 小さな声で呟いただけなのにミーニャちゃんが反応した。結構聴力高いよね。獣人だからかな?

 ……だとすると猫助やフェリにも聞こえていたことになるんじゃないか?

 そう思ってフェリの方を見ると、


「ん? 中堅にもなれない低ランクの新人潰し先輩に出会うテンプレフラグは粉々に砕け散っていますよ? 私がいるので。残念でしたね」

「訊いてねぇよ言ってねぇよ」


 残念とか思ってないから。

 むしろそんな面倒なイベントこっちから回避させてもらうわ。


「……あー、と思うじゃん?」

「なんだよ?」


 急に意見を反転させるフェリ。

 視線の先は……ギルドの入り口?


「ご主人様は素晴らしい運命を持っていますね。私の予想よりも大きいのを引き当てるなんて」

「は?」

「猫助」

「察しの通り、ランク『陸《ろく》』だにゃ。だが、弱くはにゃいぜ?」

「猫助と比べたら雑魚に変わりはないでしょ」

「否定はしないけどにゃー」


 話がさっぱり見えてこない。

 横を向くとミーニャちゃんと目が合う。

 目と目が逢う~瞬間……じゃねぇよ!


「どういうことだ?」

「今に分かります」


 はぐらかすフェリを問い詰めようとした時、


 バンッ! と、かなり乱暴に扉が開いた。


「ふん……相変わらず汚い小屋だ」


 入ってきたのは金色の悪趣味な鎧を着た騎士がふたりと、それと同じ金色の鎧にさらにチェーンなどを巻きつけた青年だった。

 あれを本気でかっこいいと思っているのだとしたらセンスが壊滅的だと思う。

 フェリに目線で「誰だよ」と尋ねると「さぁ?」と返された。ような気がする。大体合っているだろうからそれで問題ないけど。


「黄金《ゴールデン》騎士団《ナイツ》だ……!」


 冒険者の誰かが呻くようにそう言った。

 その声は、シンと静まり返ったギルド内にいやに響いた。


(……で、結局誰なんだよ)


1話分書くのに最低でも2~3日必要なので連日投稿とかに憧れます。

平行して別大陸での新シリーズ書いている途中ですが、こっちも頑張りますので。


設定とか増えていくのに話が薄い……誰か助けてぇぇぇ。


15/2/22修正 フェンタジー → ファンタジー

とりあえず”F”はフェとするように打ち慣れてしまったのが悪い。

つまりフェリが悪い(横暴)

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