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イノサンスフェンリル  作者: 泉 燈歌
第1章 派遣奴隷編
26/35

山田太郎①

お客さん目線シリーズ始まります。

私が飽きたらすぐに変わります。

 突然だが俺はこの世界の住民じゃない。

 俺の故郷は地球って世界……いや、それは惑星の名前か。あれ、そういや世界の名前って知らないな。いや世界はひとつだと言われていたし知らないのも無理はないんだけど。

 ……まぁ、いいや。


 俺は地球で学生だった。

 ある日、トラックに轢かれそうになっていた猫を助けようとしていた少女を庇おうとしていた男を突き飛ばして助けたら案の定俺だけが死んで神様にチートになりそうな能力を貰ってこの異世界に転移蘇生させてもらったんだ。

 ちなみに生前の趣味はゲームと読書(ラノベとか漫画とかWeb小説を読むのもたぶん読書だろ?)だった。RPGとかファンタジーとか大好物でしたよ。


 あえて言わせてもらおう。はいはいテンプレテンプレ。


 そんで。

 森の中で目覚めて、近くの村に行って、記憶喪失を偽ってとりあえず一泊させてもらって、盗賊団が攻めてきたから迎撃して撃退して、そいつらのアジトを強襲して攫われていた人たちを救出して、多大なる感謝の嵐と僅かばかりの銭を頂いて、商隊に乗せてもらって村を出た。

 そこで拉致られて奴隷にされていた少女を街に連れて行くんだが、都合の良い主人公みたくなんか懐かれた。この流れだとヒロイン一人目かな。俺が主人公だと仮定しておいて。

 うーん……。我ながらなんともまぁ外れようがない王道という名の固定レールを歩んでいるな。順風漫歩と言ってもいいのか。

 もちろん乗るけどさ。このチーレム道の波に。

 チートとハーレムは男の夢だもの。


 ――なんて簡単な回想をしているうちに街の門の前まで来た。


 さてと。まずはここで冒険者になろうかな。

 こういう時は基本を押さえないといけないと思うんだ。俺はまだまだ弱いんだし、リアルな話、少し慎重なくらいが丁度良いだろう。

 ん? 俺のステータスが気になるって? いいぜ。見せてやろう。

 どどんっ!



==========


名前:山田 太郎


性別:男


種族:人族


年齢:18


状態:健康


属性:無


称号:異世界からの来訪者


恩恵技能:技能取得・身体能力自由配分・言語理解(人族)


魔法技能:火魔法Ⅱ・土魔法Ⅱ・水魔法Ⅰ・風魔法Ⅰ


特殊技能:熟練度上昇速度UpⅤ


下位技能:物品鑑定Ⅲ・人物鑑定Ⅱ・剣術Ⅱ・弓術Ⅱ・身体強化Ⅰ・気配察知Ⅰ・隠密Ⅰ


加護:自称転生神(No,SB)の祝福



Lv.5


HP:300/300

MP:30/30


Str:50(+20)

Vit:40(+15)

Int:20(+5)

Dex:27(+12)

Agi:48(+18)

Luk:40



残り獲得ポイント:102

残り強化ポイント:56


==========



 ざっとこんな感じだ。

 名前のことは訊かないでほしい。親が「苗字が山田で名前を太郎にする奴っていろんな見本では多いけど実際にはいなくね?」と思いついて決めたそうだ。ふざけんな。

 でも”太郎”以外の候補が光《ライト》とか星《スタア》とか海《アビス》とかだったらしく、太郎で良かったのかもしれないと思える俺はきっと末期だ。

 ちなみに親は俺が中学生の時にグアムに行ったきり日本に帰ってきていない。俺の知らない妹と弟が大きくなったら帰るって手紙が来たのはいつだったか……あぁ思い出しただけで殺意が芽生える。一度も血の繋がった妹と弟に会うことなく死んじゃったし。

 そもそもあいつらが親になってるってこと自体おかしいんじゃないのかってなんなのあれが人の親とかありえないっての最近は頭の中が子供気分のまま身体ばっか大人ぶった奴が多すぎるんじゃないかって俺は思うわけd――



[……精神が安定するまでしばらくお待ちください……]



 ――さて本題だ。俺は何も言っていない。イイネ?

 うまく説明できるか心配だ。てか俺は誰に向けて言ってるんだ? ……いや、気にしないでおこう。なんか寒気がするから。

 俺の恩恵技能にある『技能獲得』と『身体能力自由配分』はRPGなんかでお馴染み、特化させるも万能化させるも自由の手動割り振りシステムだな。身体能力の極振りはリアルでやるとピーキー過ぎて危なっかしいし早死にする気がするからやらない。

 最初、盗賊団とやり合った際に攻撃力と素早さっぽいところを多めに振り込み、その後残りみっつに振っておいた。万能型よりもちょっとアタッカー寄りのソロとしては普通の割り振りだろう。ちなみに括弧内が割り振って上げた数値な。

 先を見据えて振っていかないと後悔しそうで怖い。リセットくらいあってもいいと思う。

 だが、それよりも肝心なのは『技能獲得』の方だ。

 これは俺が直接見たことがある技能をポイントを消費して取得することができるものだ。ちなみにポイントの初期値は神様のサービスで両方100Pだった。ポイントは加齢やレベルアップによって増えるみたいだな。

 人物鑑定みたいな半パッシブ技能はすれ違うだけで勝手に取得可能になるだろうから街なんかに行ったら一気に候補が増えるだろうな。そしてアクティブ技能を使っていなくても人物鑑定でステータスを覗き見れば取得可能になるという。

 そして『熟練度上昇速度Up』。これも神様のサービスだ。火魔法と土魔法、剣術のⅡは村人から取得したⅠが勝手に上がったのだ。さりげないチート加速ありがとうございます。


「タロー様? どうかしましたか?」

「ん、いや。なんでもないよ」


 俺に膝枕をしながら呼びかけてきたのは一人目の嫁候補ことミーニャちゃん。黒髪に生える黒い猫耳と尻尾が可愛い俺と同い年の少女。撫で心地も最高だ。だが盗賊団に攫われた際に家族を失ったかわいそうな子でもある。

 早く奴隷から開放してあげないとね。


「次の馬車~」

「お、ようやく呼ばれたな」


 門番に呼ばれて商隊の荷馬車が進み始める。

 商隊の人が門番となにやら話をして、ミーニャに滞在証明書のようなプレートを渡す。ローマ字によく似た字で『Ba-Na』と書かれている。この街の名前だな。ちなみに入門料(?)とやらはすでに支払ってもらっているそうな。

 乗せてもらっている商人に聞くとこの街では奴隷を人間扱いしているようで、亜人などにも寛容な”地方独立都市国家”であるそうな。ミニ独立国とは違うのかね?


 ともあれ、何事もなく街に入れた。

 近くの停車場に着くと俺とミーニャちゃんは馬車から降りる。

 商隊の人たちとはここでお別れだ。


「それでは。タローさん、あなた方にヘルメス様のご加護がありますように」

「はい、ありがとうございました。お元気で」

「ありがとうございました!」


 互いに手を振り、空いた方の手でミーニャちゃんの手を掴む。できれば指を絡めたい……けどそれはまだ早い。普通に歩くことにした。

 別れ際に聞いた商人さんの言葉はたぶん「旅の神クロンの追い風を!」みたいな意味だと思う。ヘルメスってギリシア神話の神様だっけ?

 異世界なのに?


 ……まぁ、いいか。深くは考えないでおこう。


 えーっと。

 そうだ、奴隷商館に行こう。

 ミーニャちゃんを解放してあげないとね。


「あの~、奴隷商館ってどこにあります?」

「右、右、左っ! 右、右、左右ッ!」

「ど、どうもありがとう」


 ……遊び途中の猫耳の少女に訊いた俺が悪かったのかな。

 でもさ。だってさ。可愛いかったんだもん。お話してみたいと思うのは男として当然だろう?


 とりあえず言われたとおりの順番に道の交差点を曲がる。

 この街は区画整備されているからとても分かりやすい。

 しばらく歩くと大きな屋敷が「デデンっ!」と擬音を出しそうな気配と共に見えてきた。門には『イース奴隷商館』と書かれた看板が。


「ほんとに着いたよ!?」

「疑っていたのですか!?」

「いや、だって……」


 あの言い方は適当すぎると思う。

 最後の「左右」なんてフェイント風に言ってたし。


「客か?」

「あ、はい。そうです」


 厳つい大男の門番が応対するの? お客さん逃げちゃうよ?

 ミーニャちゃんも怯えて俺の背中にくっついてる。そこそこ大きな胸が、俺の背に、当たる……! 門番さんGJ《グッジョブ》です!


「……ついてこい」

「は、はい」


 甘い空気を醸し出している俺らを一瞥して屋敷へ歩き出す門番さん。

 声の出所が高いくせに音が低いから滅茶苦茶怖い。

 あ、そういや『人物鑑定』してないや。見てみよ。



==========


名前:アラン=モード


性別:男


種族:人族


年齢:31


状態:健康・奴隷


属性:力


称号:脳筋


特殊技能:肉体言語Ⅶ・筋力強化Ⅵ


下位技能:身体強化Ⅶ・拳術Ⅵ・剣術Ⅴ・威圧Ⅴ・槍術Ⅲ



==========



 ……うわぁ。ガチの武闘派だ。


 能力値の方のステータスは見えない。俺のレベルが低いからか?

 名前がフランス風に見えるのは気にしないでおこう。


「お客様ですか?」

「ああ。主様は今?」


 すぐに執事っぽい人が屋敷から出てきた。

 名前は……セバスチャンだと!? 執事になるために生まれてきたかのような人だな。他人の名前を笑えないのが俺だけど。


「丁度、暇を持て余していますよ。私が案内いたします」

「頼む」

「お客人、こちらです」


 セバスチャンに連れられて屋敷の中に入る。

 門番さんことアランさんはまた門の方へと戻っていった。あんたここまで来る必要あったのか?

 もちろん、口には出さない。俺はまだ死にたくない。


「タロー様、タロー様。このカーペットは土足で踏んでしまっても良いのでしょうか?」

「踏まないと歩いて進めないだろ?」

「でも……私みたいなのがこんな高そうな物を汚してしまうのは……」


 俺だってできれば踏みたくない。

 でもセバスチャンは慣れているのか平気な顔してるし、チラチラと視界の端に見えるメイドさんたちも特に気負うことなく床を踏みつけている。

 ここではこの程度のことは気にするもんじゃないんだろう。

 価値観の違いから涙目になって躊躇しているミーチャちゃんをさてどうしようかと考えていると、


「待ちなさいフェリ!」

「待てと言われて待つ奴は死神に捕まっちまうのさ!」

「私は死神ですか!?」

「どうだ恐れ多いだろう!」

「それはたしかにそうですけど……って、あ。こら! そこのじゃじゃ馬娘! 逃げていないで早く諦めて止まりなさーい!」

「やなこったー!」


 なんか来た。

 騒がしく2階から飛び出してきたのは白銀。

 思わず見惚れてしまうほどの輝きを放っている、その髪。

 金色の瞳が俺を捉え、


 それは急速に近付いてきて、




 ――ゴンッ!!




 俺は頭部に痛みを感じて、意識を落とした。


「いった~いッ!」

「お客様!?」

「タロー様!?」

「お客人!?」




 後の英雄、山田太郎と奴隷フェリのファーストコンタクトである。


名前とか自分で考えるの大変だわ……。

彼もそこそこチートってるのですが、フェリはその上を突き抜けます。そんな様子を書きたくて書いてみた新年一発目。


誤字やその他、気になったことなどあったら書いて言ってくださいな。


1/10 恩恵技能に言語理解(人族)を追加。いちおう英語とロシア語とフランス語が入り混じったような異世界言語が主流の世界なのです。日本語は裏でこっそり暗号などに使われていたり?


あと山田太郎君はそれなりチートキャラなんでチートタグ付けてても良くなったね!(つい今しがた気がついた作者)

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