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イノサンスフェンリル  作者: 泉 燈歌
第1章 派遣奴隷編
25/35

蕎麦

来年もどうか『イノサンスフェンリル』をよろしくおねがいします。


さぁみんなで祝いましょ!「ハッピーニューイヤー!」ってね。

 やあ。

 お久しぶりのウィキフェリちゃんだぜ。

 ベル様とサードが寝てるから仕方なく俺が出てきただけで、最近めっきり出番が減って「あれ俺いらなくね?」と思うこともしばしば。

 サードが鑑定眼《アプレイズアイ》を会得しちゃったからね。俺の分析《アナライズ》がなくても困らなくなったんだ。まぁ、あるに越したことはないから必要ないわけじゃないけど。


 で。

 今日は年末。12月31日だ。

 異世界なのに地球と同じ暦、時間なんだよな。星のサイズとか違うと思うのに。

 そこらへんは神様連中がなにかしているんだろう。たぶん。ファンタジーに細かい不思議を求めるのもいいけど程々にしておかないと消されるぜ?


 さて。そんなことはどうでもいいんだよ。

 なんたって奴隷になってから初めての外出なんだから。

 蕎麦粉を運んでいた商隊がこのバーナの街近くで消息を絶ったらしく、年越し蕎麦が食えないかもしれないという一大事なんだってさ。

 各ギルドが連携してすぐに動ける連中を集めているそうだが、人手は多い方が良い。あとちょうど俺の教育が一通り済んだからこれを実地訓練にしようという計画らしい。

 ティーの身体からそう聞いたってベル様が言ってただけで俺はなんも知らないんだけどな。てか口から聞いたんじゃなくて身体からってどういうことだ……?


 ……深くは考えないようにしておこう。


 今回の捜索任務に同行してくれるのは奴隷の先輩で執事のセバスチャンと同じく料理人のクックさん。最初はなんの冗談かと耳を疑ったが、なんとこれが本名だ。

 ふたりとも戦闘職じゃないのにレベルが40近くあってひよっこ冒険者にも負けず劣らずそこそこ強い。

 特にクックさんはカポエラの使い手らしく「料理人は戦う時に手を使っちゃあいけないんだぜ!」とサッカーみたいなことを言っている。それともおやつの時間みたいな名前の海賊コックの影響かね。


「フェリさん、急ぎますよ。日付が変わる前に帰らなくてはいけませんからね」

「今回俺たちは戦わないから、しっかり守ってくれよ。頼んだぜ」

「お任せください。敵が視界に入る前にアウトレンジで片付けますので」


 セバスチャンとクックさんを守りつつ、早急に商隊を発見し、蕎麦粉を回収するのが俺の仕事だ。


 今回持っていく武器は俺にはまだ少し大きい両手剣。ドラゴンスレイヤーになりかけていて竜殺しの印が薄っすら付いている。ワイバーン戦で使ったアレを再び『破理錬金術』で刀身から作り直して、そこそこの業物になった。ドラゴメタルという謎の金属に変質していて迂闊にどっかへ預けられない危険物だ。

 防具はヤーサン作の巫女服。緋色じゃなくて蒼色のコスプレっぽいひらひらとした衣装だけど防御力は折り紙付きだ。バリスタの直撃を受けても貫通しないとか。衝撃はそこそこ通るけど。

 さらにいまは下着代わりにスク水も着ている。アクアスパイダーという魔物の魔糸で編まれていて装備者に耐水Ⅴと耐物理Ⅲを授けるユニークな防具だ。旧と新、それぞれの白と紺の計4着を受け取ったがバリエーションはまだまだ増えるそうだ。

 背中の下辺りは尻尾に違和感を与えずに外へ出す工夫がされていて特に不快感はない。


 ……どう見てもコスプレですありがとうございます。


 この世界じゃ外見からは想像も付かないほど強力な防具が結構あるから分かる人には分かるいでたちとなっている……らしい。俺にはようわからん。

 あと頭防具って獣人が被れる物があんまりないんだよね。獣耳の邪魔になるから。カチューシャやティアラなんかは平気だけど。


 なんてつらつらと考え思い浮かべ、そのうち上の空。

 本日も曇り也。

 耐氷があるせいか薄着なのに意外と寒くない。余剰魔力を炎に変えて体内で循環させているからかもしれないが。効果はちょっとだけ体がぽかぽかするだけだ。


 荷馬車に乗せられ、がたごとがたごと。

 うーん……暇だ。

 スーラの空間把握や俺の直感で周囲1kmを索敵しているが、見事なまでに獣一匹引っ掛からない。みんな野生をお休みしているんかね。


「……止めます」

「なにかあったか?」


 御者台のセバスチャンが馬車を止めたので俺もクックさんと一緒に外へ飛び出す。

 ……肝心の護衛が馬車で寛いでいていいのかって? いいんだよ仕事はちゃんとやってるんだから。超長距離射撃とかあったら別だけど。少なくともこの世界に実弾銃は存在しないらしいし、作ろうとすると神々に止められるとか。


「道を外れた轍《わだち》がありました。それと複数の足跡も」

「んー、人型っつーことは亜人か盗賊かなこりゃ。どうする?」


 クックさんが俺に尋ねる。

 これは試験だ。油断はできないし迂闊な行動も慎んだ方が良いかもな。

 戦闘痕らしきものもあるので早くしないと手遅れになるかもしれない。


「時間が惜しいので追います。いいですか?」

「構いませんよ」

「よっしゃ。さっさと行こうぜ。これからもっと冷えてくる」


 ちなみにセバスチャンはいつでもどこでも執事服で、クックさんは白衣にエプロンという謎に満ちた服装である。理由を聞いてもはぐらかされて答えてくれない。職業病の一種ってのは嘘だと思うんだが。


 馬車を森の手前で止め、簡易結界を展開して置いていく。積荷を回収できたらまた戻ってくるつもりだ。

 徒歩で森に入り、周囲の警戒に意識を割く。

 先頭が俺、真ん中がセバスチャン、後衛にクックさんと縦一列に並んで進む。


「そういえば、どうして消息を絶ったことを知ることができたのでしょう?」

「中堅層から上の商隊では緊急用に二つで一組の宝玉を持っているのが普通で、その宝玉はどちらかが割れるともう片方も割れるというものなのですが、今回は宝玉の片方がバーナの街の本店に置いてあり、割れたことによって商隊になにかあったのだろうと確認を取り、事件の早期発覚に繋がったと聞いております」

「へー。便利なのか不便なのかよくわかんないね。使い捨てだし」

「便利だと思いますよ? 念話や遠距離通信が可能な魔道具は魔力の消費が激しく使い手も少ないそうですから、誰でも簡単に使えるというのは大きな利点でしょう」


 そういうもんかねぇ。

 ケータイって偉大だと思うぜ。俺自身が使ったことはないけど。

 ポケベルは知らんがな。


(『前方1.5kmに人工物……生命反応はないっす』)


 脳内でスーラが自動でマッピングしてくれる。

 俺は足を速めて現場へと近付く。


「……馬車の、残骸?」

「それと護衛の方々のようですね」

「どうやら一足遅かったみたいだな」


 馬車は2台。どちらも車輪が破壊されていて横倒しになっている。

 積荷は根こそぎ持っていかれていた。

 護衛と思しき男性の死体が5体分、それと商人が1人、従者が2人で計8人分の死体が散乱している。

 女性は連れ去られたのか、それとも元から男しかいなかったのか。

 護衛の武具もきっちり剥ぎ取られている。

 だが、これで亜人の線は消えた。

 亜人、この付近に出没するゴブリン、コボルト、オークなんかは積荷と武具を奪って死体を放っておくなんてことはしない。あいつらは腹が減ってりゃ死体だって食う。ましてやいまは食料が乏しい冬だ。


「……思っていたよりも大きな集団ですね」

「だな。この量を一回で運べる人員がいるとすりゃあ俺たちだけだと厳しいかもしれねえ。他の連中が来るのを待つか?」

「いえ、きっちり殲滅しますよ?」

「いくらお前さんが強くたって数が多いと取り逃がすかもしれねえ。焦るなよ」

「たかが盗人風情、なんの問題もありません。お二人は馬車の所まで戻って結界内で待機していてください。ちょっとひとっ走りして盗賊団を皆殺しにしてきてみせましょう」

「いや、何人かは生かしておけよ」

「了解です」


 山の麓に小さな洞窟がいくつもあるそうなのでそっちを探ることにする。この季節、屋外での生活はただの人間には不可能だと思うからな。凍死するわ。

 俺はスーラの一部を黒い板状にしてセバスチャンに渡す。スマホっぽい形だけど液晶画面はない。


「じゃ、いってきます」

「行ってらっしゃいませ」

「気をつけろよー!」


 エールを背に、全力で駆け出す。

 森での高速機動は久々だが、ファインの村にいた頃よりも動きが良くなっているような気がする。

 ギルドに登録してからは座学だけじゃなくて戦闘訓練もたっぷりやらされたからな。猫助の相手は疲れたなぁ……だってあいつ滅茶苦茶速いし。しょっちゅう「残像だにゃ」とか言われて後ろに回りこまれて手痛いバックアタックを受けた。まぁそのあと魔法で弾幕張って数十倍にしてお返ししたけど。


(『600m先、1時の方向に生体反応っす』)


 スーラの報告を受け、若干速度を落とし姿勢を低く保つ。

 俺くらいの背丈だと普通に警戒していても見落としやすくなるからな。

 重心が低くてリーチが短いのはこの先ちょっとつらくなりそうだけど。


 草陰から人の気配がする方向の様子を探る。

 ……洞窟の前に見張りが二人、かな?

 雑談をしていて注意散漫、さぼってるなこりゃ。

 聞き耳を立てて情報収集。これ基本ね。


「――ったくよぉ、いくらおれらが手柄を上げたってイイ女はお頭が持ってちまうなんてひどくねぇか?」

「でもよぅ、お頭が言うことに間違いはなかったろぅ? 今回もうまいこと女と”ソバコ”? とやらが盗れたんだしよぅ。おこぼれにだってありつけるかもしれねぇじゃねぇかよぅ」

「ハッ、あんなよくわかんねぇ粉よりもおれぁゴハンが食いてぇよ。ギンシャリっての? あれぁ黒パンなんかとは比べモンになんねぇくれぇうまいんだぜ。あとおれはショジョチューだ」

「おめぇさんの言葉は難しくってよくわかんねぇよぅ」

「バッカ、おめぇ頭のデキが違ぇんだよ頭のな」




 ……うん。

 まぁ。

 殺っちゃっていいかな。

 少なくとも善人じゃなさそうだし。

 物凄く馬鹿っぽいけど俺がそのまま素通りさせてもらえるほど馬鹿じゃないだろうし。

 でも蕎麦粉を駄目にしちゃうほどの愚か者共じゃなくてよかった。そんなことをしていたら死すら生温い地獄の入り口が開いちゃうところだったぜ。

 開けるのはベル様だけどな!


 コミカルな思考を端に寄せて、草木と同化して足音を殺しつつ接近。


 ――一閃。


 悲鳴も断末魔も、自分の死すらも認識させずに首を刎ねる。

 ドラゴメタルになってから異常な強度を獲得したツヴァイハンダーは俺の魔力と気を纏わせることで切れ味をアップさせることができるのだよ。結構疲れるから斬る瞬間に発動してすぐに収めないといけないんだけどな。


 空間把握によって洞窟内のマッピングを開始……完了。

 速っ!?

 俺の演算と情報処理能力は今日も張り切っています。

 どうやら山の裏手に逃げ道が繋がっているようなのでスーラを転送しておく。生身でこの距離を転移すると危ないけど核のない状態のスーラなら問題ない。


 洞窟に入ると少しだけ生まれ故郷のことを思い出した。

 シリアスでアンニュイな気持ちになる前に長らくお風呂とご縁の無さそうな人間の悪臭が鼻についてそれどころじゃなくなったが。

 元は坑道だったのだろうか。とりあえず枝道は土魔法で檻となるように地面天井壁のいたるところから杭を作りまくって硬化させる。どうせ大物は奥にいるんだ。こっちの雑魚は生かしておく分として放っておこう。

 奥からやってきた人間は気付かれる前に接近して首を刎ねるか土の杭で串刺しにしていく。お尻から脳天まで貫けば必然的に喉が潰れるので声も出ない。金属製の鎧だったらガシャガシャ音が鳴って厄介だっただろうが盗賊は革装備の軽装と相場は決まっている。大丈夫だ。

 複数人固まっていたところで不意打ちなら十分に対処可能だ。

 盗賊って個として強い奴なんてある程度大きな組織の幹部から上あたりにしかいないんだろうね。強いのならそもそも盗賊に成り下がることなんてないだろうし。

 弱いから群れて動くのさ。

 なんて。狼の獣人である俺がなにを言うのかとね。


「げごっ!?」

「おっとしくじった」


 うっかり絶命時に声を漏らさせてしまった。

 まぁもうそろそろばれるだろうと思っていたところだ。

 いくら戦利品と酒で酔っていても不穏な空気ってのは隠せない。


 ……いや。


 違うな。

 俺の戦意と殺意が駄々漏れなんだよな。


 でもさ。だってさ。

 年末だぜ?

 なにも面倒事は今日じゃなくたっていいじゃないか。

 いや、明日でも嫌なんだけどさ。

 年末年始くらいは悪行をお休みしなさいよ悪党共。


「誰だッ!」

「敵さっ!」


 律儀にも答えてしまったが、まぁもういいや。

 閉鎖空間なので炎は厳禁。

 土ばっかりってのも飽きたから氷でいってみよう!


「冷気よ、風となりて吹き荒べ【MA-DAL-TO】」


 広間になっている空間を氷嵐で切り刻み凍りつかせる。

 ん? 人質?

 ちゃんとそれっぽいのは避けるように細心の注意を払って発動させたからたぶん平気だと思う。

 少しくらい当たってても死んでなきゃ回復さえればいいんだよ。

 たとえ死んでいたって原型を留めていれば蘇生させられるけど。


「わっはっはー。成☆敗!」


 たとえそこに蕎麦粉があっても蕎麦粉は冷気に強いから大丈夫だぜ。

 温度が低すぎても品質悪化があるから微妙な気もするが。

 燃やしたり土にまみれるよりはずっといいだろう。


 広間を覗き込むと死屍累々。

 どれも全身に切り傷を負い、傷口が凍りついて絶命している。

 予想よりかはグロくない。惨いけど。


「ぅ……あ、貴女は?」


 生存者を発見! って被害者っぽかったから生かしただけなんだけどな。正解なようでなによりだ。

 やはり女性だった。20代前半といったところか。下着姿で縛られているところを見るとまだ致してはいないようだ。セフセフ。


「フェリと申します。蕎麦粉と生存者の回収に参りました。遅くはなりましたが、最低限、間に合って良かったです」

「……そぅ、ありがとう」


 お仲間が殺されて盗賊に誘拐されたのに間に合ったと言うのもデリカシーに欠けるかとふと思ったが、これでも相当早く助けに来た方だし? 他の連中はそろそろ森の手前で待機している馬車に追いつく頃のはずだ。

 後ろ手に縛っている縄をナイフで切り、ホットポーションを飲ませる。

 冬限定、生姜味のポーションだ。割とレアなダンジョンドロップ品である。相変わらずダンジョンから出てくる物品が謎に満ち満ちているな。

 それでも寒そうだったので黒地のローブを羽織らせた。市場調査で適当に買っただけの量産品なのでそのままあげよう。


 彼女が落ち着くのを待とうかと思ったが、その前に蕎麦粉やその他商品を回収しなくては。

 空間魔法はそこそこ珍しいので、それを隠すためにいつも持ち歩いているアイテムポーチに小物を放り込んでいく。大物は一旦戻って他の冒険者たちに任せればいいだろう。


 俺が入ってきた通路と反対側の通路からスーラが空間を飛び越えて戻ってきた。手で受け止め再び同化させる。ちょうど彼女がこっちを見ていない時を見計らってやったのでなんの問題もない。

 うーんなんという完璧な俺。

 ミスのひとつやふたつ、あってもいいんじゃないかな。


 ……そうそう、たとえばまだ盗賊に生き残りがいるとか。

 枝道に隔離した奴じゃなくて、ココにいる奴の。


「きゃっ」

「動くんじゃねぇッ!」


 男が短剣を首筋に当てて俺を睨んでいる。ガクブル状態で見つめられてもときめかないぜ?

 他のよりも少しは強そうだし、お頭ってのはこいつのことかな?

 表面の体温が低くて生きているのか死んでいるのかわからなかった、なんてことはないはずだけど。生命反応くらいは確認したぜ?


「どうして死んでいないのかな?」

「喋るな! こいつがどうなってもいいのか!?」


 えー。

 ぶっちゃけどうでもいい。

 ……けど、特に理由もなく人を見捨てるほど俺はそこまで他人の死に無関心なわけじゃない。むしろ毎度毎度心を痛めているくらいだ。痛ましいね、悲しいね、まぁそれだけなんだけどね。

 だが今回は生存者の保護ってのも任務にあるから、尚更ね。殺させるわけにもいかないな。蘇生も絶対じゃないし、なにより疲れる。


(へへっ、盗ったばかりの護符をいきなり使う羽目になるなんてな)


 ……ほうほう?

 サードさんサードさん、起きたのなら言ってくれよ。

 いきなりアレの思考が流れ込んできてビックリするからさ。


(ん、いま起きました。寝ぼけていたので記憶にございません)

(そうですかそうですか。まぁ謎が解けたからいいけどさ)


 即死回避……じゃあないよな。死んでその場で復活できる護符だったのかな? 使い捨てとはいえなかなか強力な装飾品だよなぁ。


「えーっと、逃げ道などないので諦めて投降しなさーい」

「ふざけるんじゃねぇ! こいつを殺すぞ!」

「いやぁ! 助けて!」

「はいはーい承りましたー」


 無詠唱で石つぶてを射出、お頭の腕に直撃させ、怯んだところへ土魔法の【ストーンアッパー】で追撃。空中に浮かせてそのまま連続してエリアルコンボ。止めに風魔法の【エアハンマー】で壁際に叩きつけて戦闘終了。内臓をあちこち潰したからもう動けまい。

 生け捕りの方が賞金出そうだから殺しはしない。


「おーい、フェリ~!」

「フェリさーん!」

「はーい?」


 クックさんの声とセバスチャンの声が入り口の方から響いてきた。

 そういや通信するの忘れてたわ。

 ま、その後ろには回収班もいるだろうし、これで俺の仕事はほぼ終わりだな。


「今度こそ安心してください。救助隊が来ましたよ」


 回収班だとは、言わなかった。

 俺がいる以上危険なんてなかったが、人質にしてしまった罪悪感はあるからな。


(どの口が言うのでしょうかね)

(別にいいじゃんかよ、本気でやれば喉を掻っ切るよりも早く鎮圧できたんだし)


 その場合、移動の衝撃で彼女も吹き飛ばしていただろうが。


 セバスチャンとクックさんには怒られた。どうやらお頭の不意打ちを予期できなかったのがマイナス点だったようだ。油断大敵ってわかってたはずなんだけどなぁ。

 被害者の女性は回収班の女性陣に連れられて一足先に外に出て行った。


 さてさて。俺たちも帰るとしますかね。

 収入は一旦全部ご主人様の下へといってから俺のお給金になるから後払いだし。必要量の蕎麦粉さえ先取りしておけばもう用はない。

 ……そういやなんでこの世界には大晦日と正月があるんだ?





 ……という感じで、年末の蕎麦粉行方不明事件は速攻解決した。最後の疑問はきっと神様でもわからないと思うから保留で。

 今回のは事件と言うほどのことじゃなかったはずなんだが、時期が時期だけに仕方のないことだったんだろう。気分の問題だろうが。


「かき揚げはザクザク派? それとも汁に浸したフワフワ派?」

「「中間ですね」」

「ザクザクだろ」

「フワフワだな」


 ティーお姉さまとセバスチャンは真ん中、クックさんはザクザク、ご主人様はフワフワと見事に好みが分かれている。

 俺? 俺はかき揚げとかどうでもいいから汁と麺だな。

 素うどんとか好きだぜ? あえて乗せるなら油揚げだけど。狐じゃないのにな。狼だからって肉うどんが好きとは限らないのさ。


(なら代わりなさいよ)

(もうちょっと、もうちょっとだけ食べさせてくださいよ!)

(あと一口ね)

(白湯を入れたら私が飲みますので)

(それ俺にもくれよ)

(嫌です)

(そこをなんとか!)


 わいのわいの。




 ふと。今年は色々あったな、なんて。

 この一年を振り返ってみる。

 村を出て、いろんな人たちに会って、奴隷になって。


 ……最後がどうも字面にするともの悲しい。


 まぁ、それでも。フェリちゃんは今年も元気でした。


 来年は、どんな年になるんだろうな。

 わくわくするな。



(ちなみに初夢って2日~3日に見る夢のことなんだぜ)

(誰に向けて言っているのですか……?)

1/8 少し追記

やっぱ話数書くのはやめました。

ナンバリングとかどうしよ……。

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