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イノサンスフェンリル  作者: 泉 燈歌
第0.5章 閑話間章
24/35

繋話一 登録

結局。チートタグを追加することにしました。

強けりゃチートってなんか違う気もしますがね。だからといって最強でも無双でもないちょい強者のお話なので判断に困る。

「ととと当ギ、ギギギギルドにに、ごごととと登録で、ですかかかっ!?」

「うむ」

「はーい」


 金髪でとにかく平凡で普通な人相の男と白銀の髪をツインテールのように結って身体に巻きつけている美少女がいた。

 そしてそのふたりを前にして異常なほど慌てふためいている女性こそはバーナの街にある冒険者ギルド職員の新入りである。名前は規則により非公開とさせていただく。

 なぜこの新米ギルド員がこれほど取り乱しているのかといえば、つい数分前の出来事が理由だ。




「邪魔するぞ」

「こんにちはー」


 時刻は昼前。

 多くの冒険者が集うギルドに見慣れぬ顔が現れた。

 それだけならいちいち気にすることではないのだが、その場にいたほとんどの人間の目を惹きつけたのが白銀に輝く長髪をたなびかせる少女だ。

 その頭頂部には狼を思わせる獣の耳があり、少女が獣人族である証明となっていた。

 銀系統の獣人は非常に希少価値が高く、種族によっては奴隷としての値段は家が買えるほどである。

 その少女の首には戦闘奴隷だと示す為の青い剣のマークが入ったペンダントが付いた白いチョーカーがあった。

 チョーカーの色はその奴隷の値段帯を示す役割を持つ。

 とりあえず5万ウェンあたりまでが黒、

 5万~20万ウェンまでが赤、

 20万~50万ウェンまでが橙、

 50万~100万ウェンまでが黄、

 100万~500万ウェンまでが緑、

 500万~1000万ウェンまでが青、

 1000万~5000万ウェンまでが藍、

 5000万~1億ウェンまでが紫、

 1億ウェン以上からは白、となっている。

 ただの目安として着けているだけの場合も多いが、青あたりから上は厳密な審査によって価値を定められていることがほとんどである。


 そしてマークが示すのは奴隷の種類。

 性奴隷はハート、

 戦闘奴隷は剣、

 職業奴隷は杖、

 犯罪奴隷は十字、といった具合だ。

 兼用する場合はどれかひとつで構わないし、複数付けるのもありだ。犯罪奴隷は十字固定だが。

 マークの色は上記のチョーカーの色に基づいたチョーカー自体の値段であるため、少女のチョーカーはそれ単体で500万~1000万ウェンの価値があるということである。


 ちなみに。職業奴隷とはある分野において知識や経験に長けて手に職を持つ奴隷のことであり、研究者や生産系の職に就いている者が該当する場合が多い。


 そうして見ると、少女の戦闘奴隷身分は見た目から受ける印象としてはとても不釣合いだった。

 その少女は花と共に愛でるためにあるのだと、世にいるほとんどの男は思うことだろう。

 ……相手が女性でもそう思わせるだろうから性別は関係ないが。


「ふん。我がここに来るのは久々だが……フェリ。どうだ?」

「んー……なんだかみんな弱っちいですね。正直言ってこれじゃ期待はずれです」

「この時間ではそれも仕方の無いことだ。日暮れか夜明け前ならもう少しマシな者がいるのだろうがな」


 登場早々失礼な物言いである。

 冒険者とは前人未到とされている危険地域の調査から薬草の採取、果てにはおつかいや探し物など街の便利屋紛いのことまでする職業であり、平均的な戦闘力なら傭兵の方が遥かに強い。


「傭兵って荒くれ者が多いイメージじゃないですか。私そういうのはちょっと遠慮したいなー、なんて思いまして。だからこっちにしたのです」

「冒険者も似たり寄ったりだと思うのだがな」

「それはそれ、これはこれです。ファンタジーといえば傭兵よりも冒険者なのですよ、ご主人様。幸いなことに傭兵ギルドと冒険者ギルドはランクが一段下がるとしてもほぼ共有してるんですし」

「フェリの言い分は理解に苦しむ」

「でしょうね」


 なぜ分けられているのか、その理由は不明である。

 数千年もそうして続いてきたのだから今更変えようとは誰も思わないようだった。このあたりは、思考制限の影響をもろに受けている。

 対魔物戦の冒険者、対人戦の傭兵と認識されているが、依頼で冒険者が盗賊の相手をすることもあるし、傭兵が魔物の群れと戦うこともよくあることなので理由としては弱い。それによって両者のブッキングは永遠になくならないのだった。


 閑話休題《そんなことはどうでもよくて》。


 これだけ好き勝手に言われて黙っていられないのが冒険者というもので。

 もちろん、そんな短気な人間はそう多くはないが、どう見ても自分たちよりもひ弱そうな少女に言われたという状況がその数を劇的に倍増させる。


「おいっ! 俺たちがお前みたいなチビよりも弱いってのか!」

「うん」


 即答。

 違和感や実力差を感じ取れる賢明な者や少女に馬鹿にされたくらいでそこまで大人気なくはなれない紳士的な者たちはそそくさと端に逃げ、舐められるわけにはいくまいと血気盛んな者たちはフェリと呼ばれた少女とその主人である男を取り囲むようにして部屋の中央に集まる。


「前言撤回するなら今のうちだぞ」

「ご主人様! ただの荒くれだと思っていた人たちが前言撤回なんて言葉を知ってることに私は驚きを隠せません!」

「……フェリの感心の基準が解らぬ」

「気分によって乱高下します」

「聞いてんのかてめぇ!」

「……フェリ、ミッション43だ。死者と重傷者を出さずに我と自らの身に指一本触れさせずにこの場を制圧しろ」

「かしこまり~!」


 指示された少女の姿が消え、

 次の瞬間、


「――あ?」


 包囲網が吹き飛ばされた。


「『狼爪《ろうそう》・臥衝包転破《がしょうほうてんぱ》』」


 爆心地のように人が開けた中心に立つ少女は先ほどと変わらずそこに立っていた。

 違うのは、囲んでいた人間が壁際で倒れていることだけ。


「これは……新技か」

「はい。殺さないように衝撃だけを軽く全方位に放ってみました」

「使い勝手は?」

「無駄が多くて疲れます。没ですね。名前も即興の適当なものですし」

「……そうか」

「あ、髪が長いから動きの効率が悪かったのかも? リボンリボン~っと」


 サイドテールやポニーテール、色々な髪型を試している少女を侮る者はもうここには誰一人としていない。

 結局、ツインテールにして自分の身体に巻きつけていた。


「フェリ、行くぞ」

「はい」




 そしてふたりは受付に辿り着き、話は冒頭へと戻るのだった。




「ギルドマスターはいるか?」

「しょ、しょしょ少々おおお待ちをっ!」


 落ち着きなく駆け出し、奥へと消えていった。そしてドタドタと裏の方から騒がしい音が響いてくる。

 あんなのでこれから先うまくやっていけるのか、彼女の将来が心配になってくるフェリ。その元凶が自分であるということには気付いていない。

 しばらく待ち、受付の奥にある扉から現れたのは寅猫の獣人。


「忙しいってのに俺様を呼ぶ悪い子は誰かにゃ~ん……って、ご主人じゃにゃいか!」

「変わりないな、猫助」

「へっへー、俺様は元気だけが取り柄ですんで」


 どうやらここのギルドマスターは元奴隷で、その時の主人がこの男らしい。

 言動はふざけているが、足取りや目線から只者ではないと気を引き締めるフェリ。傍から見るとただの人見知りだと思われそうな変化だが。


「最近ご主人がご執心な銀狼の小娘ってのはこいつのことかにゃー?」

「ああ。フェリ、こやつは猫助だ」

「……フェリです」

「どうもどうもー猫助だにゃー」


 猫助が右手を差し出してきたので握手しようとするフェリ。

 だが掴むと同時に手に掛かる力は常人なら骨が砕けるほどの威力を秘めていた。

 フェリはそう認識すると同時に気と魔力による複合身体強化を施し、猫助よりも僅かに強く握り締め返す。


「……随分なご挨拶ですね?」

「うっそ~ん……これでもそこそこ力入れてたんだけどにゃ~?」

「フェリ、猫助、やめろ」


 主人の言葉を受けてようやく互いに手を離す。

 フェリの華奢な手は全体的に少し赤くなっていたが、それだけだった。

 そして猫助の手は見たところなにも変わっていないが、あれ以上続けていたら骨にひびが入っていたかもしれなかった。


「ふぃ~、俺様の手のほうが痛むっておまえどんなバケモンだにゃ」

「次やったらその耳を引き千切って尻尾を引っこ抜きますからね」

「あー怖い怖い。ちょっと試してみただけだってのににゃ~」


 これだけの相手となると新米いびりは無理そうだと猫助は早々に心の中の要注意人物リストにフェリの名を書き足した。ちなみにフェリで37人目である。


「そっちから絡んできたんじゃないですか」

「悪かったにゃ。もうしないから許してちょーだい?」

「条件があります」

「おぉ~! 心が広くて助かるにゃー」

「登録したらランクを適正まで上げてください。私は奴隷ですし勝手におつかいとかできませんので、さっさと上げて稼げるようにしておきたいのです」

「オッケーオッケ~。そのくらいお安い御用だにゃー」


 冒険者の中でもそこそこ強くないと就けない立場のギルドマスターである猫助を相手にし、それを歯牙にも掛けない実力者を下位に留めて腐らせる余裕はないのだ。

 フェリの戦闘力は十二分にある。

 使えるものはなんであろうと使っていかねば、ギルドマスターなどやってられない。


「当冒険者ギルドの説明は必要かにゃ?」

「お願いしまーす」


 すでにティーとの授業で学んだのだが、やはり生の声で説明してもらいたいというフェリの希望である。


「テンプレよろしく街の人たちを助けるついでに生活費なんかを稼ぐ人たちが集まる混沌とした組合が我らが所属する冒険者ギルドだにゃ。傭兵ギルドや探索者ギルドなんかとも連携してるにゃ。いろんな人から依頼を集めて適性のありそうな連中に流すのがお仕事だにゃ。薬草の採取や魔物の討伐、捕獲なんかをメインに受け持ってるにゃ。すでに知ってるだろうけどギルドは他所も含めて基本的にランク制で管理されているにゃ。ランクはギルドカードに刻まれる数字で判別できるにゃ。

 まず一番下が『零《レイ》』。これは街中限定のおつかい系クエストなんかをこなす子供用のランクだからあまり覚える必要性はないにゃ。

 『壱《イチ》』、普通に登録したらここから始まるにゃ。

 『弐《ニ》』、ルーキーを卒業してようやく半人前ってとこだにゃ。

 『参《サン》』、商隊護衛なんかの遠出する任務が増えてくるランクにゃ。

 『肆《シ》』、2,3年も冒険者やってりゃ問題なく普通に上がれるにゃ。おそらくここが一番人数が多いはずにゃ。

 『伍《ゴ》』、ここまで来れたらようやく一人前だにゃ。ここからはソロが減ってパーティー単位で動く連中がほとんどになってくるにゃ。

 『陸《ロク》』、このあたりから二つ名なんかが付けられるにゃ。

 『漆《シチ》』、ここからは才能がないと辿り着けない領域だにゃ。

 『捌《ハチ》』、大型の竜種なんかを相手に戦ったり迷宮の最深ボスと何度もやり合うような連中がいるにゃ。敵として出会ったら選択肢は逃げるの一択だにゃ。

 そして最後に、最高峰の『玖《キュウ》』。人外だにゃ。

 大昔は『拾《ジュウ》』まであったらしいだけどいつの間にか消えたにゃ。理由とか詳しいことは知らないにゃ。

 基本的なこととしては、うちでは依頼を受けたらちゃんと完遂しないと違約金を取るにゃ。上位ランクの依頼には事前に契約金を払ってもらうものもあるにゃ。てかもうめんどいからあとは先輩方に訊けにゃ。ちなみに喧嘩とか抗争で死んでもうちは知らんからそこらへんは自己責任にゃ」


 一気に畳み掛けるようにして喋り終えると満足げに「わかったかにゃ?」とフェリを見る猫助。なぜかドヤ顔だった。


「うん。にゃーにゃーうるさい」

「こ、こんの女《アマ》ぁ! 人が優しく説明してやりゃ調子乗りやがってぇ! 猫族のアイデンティティを否定するとはいい度胸だにゃあ! よろしいならば戦争だにゃあぁぁぁ!」

「静まれぇ!!」


 主人が一喝すると騒いでいたふたりは途端に口を閉ざし獣耳を伏せる。


「「……ごめんなさい」」

「うむ」


 沈静化させられたふたりはその後特にいがみ合うようなことはせず、何事もなくフェリは登録を済ませた。

 ランクは『肆』。

 先ほど吹き飛ばした者たちの中にランク肆が何人かいたので、周囲から文句は出なかった。




 聖暦329年が、終わろうとしていた頃の話だ。

アビスかシンフォニア以上に面白いテイルズがあればやりたいっす。

あとディスガイアもやりたいっす……。

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