再会
嬉しくないおそろいの他にも、私たちには意外な共通点があるようだった。
まず、メイは私と同じ歳……16歳であるということ。
出身地が同じこと。
母親の他に周りで初めて人が死んだのが、4歳のときであること。
不思議なこともあるものだねと話していると……気づけば、髪が三つ編みにされていた。
「なに勝手に結ってるのさ?」
「ふふ、せっかくきれいな赤い髪だから、かわいくしようと思って。」
満足そうな顔で手を放す。根本以外を何にも留められていなかった髪は、さらさらと形を元に戻した。
「色が抜けただけの髪が綺麗、ね……」
「うそじゃないよ?」
そう言ってにこりと笑う。その目に、嘘をついているような感情は見えない。
つくづくへんなやつだなあ……と、思った時だった。
通学路を歩く小学生が、一人もいないことに気づいた。
おかしい、今は通学時間のはずだ。
「マイちゃん、あれ……!」
嫌な胸騒ぎとともに、指さされた方を見る。
__やはり、居た。
山羊のような角を携えた異形が、道の反対にぽつりと立っている。
前回と違い、それは何かを語る様子も動く様子もない。
じっくりと、それを観察する。
黒いローブを深くかぶっているため顔はよく見えないが、あまり若々しさを感じる風貌ではない。言うなれば、小柄な老婆のような雰囲気だ。
ローブを突き破り、大きな山羊角がのぞいている。そしてやはり……どこか、懐かしさを漂わせている。
「ねえ、あなた……」
メイが異形に声をかける。異形は動かない。
「もしかして、わたしたちを知ってるの?」
その問いかけに、異形は応じなかった。
代わりに、ほんのわずかに顔をあげ、言った。
「呪い達よ、何処へ帰る?」
「だから、よくわからないこと言ってんじゃ……!」
怒り、ナイフを抜いた時だった。
__全身を、知らない感覚が駆け巡った。
懐かしさではない。そんな、心地のいいものではなかった。
こわい。
子供のようだが、そう感じた。
まるで、死が差し迫っているような恐怖。
「アンタ、ホントに何者なの……」
異形は、怯える私の方を向き、口角をにいっとあげて笑う。
「知りたいか?」
その不気味さに、思わずメイの手を引いた。
「逃げよう、メイ。」
「……」
メイは黙りこくっている。
「どうした?」
「ううん……マイちゃん。」
「何?」
「わたし、知りたい。」
メイはそれ以上語らなかった。
「呪いの始まり。そして、終わり。」
異形は呟き、手を合わせる。
「可哀想に。それでも、幸せそうに在るなら、私は……」
それ以降を異形は語るのをやめた。
風の音だけが耳に届く。
しばらくして。気づくと、異形はいなくなっていた。代わりに、手帳が一冊落ちていた。
「何だ、これ?」
表紙には文字が書かれている。それがタイトルなのだろうが、私は漢字を読むことができない。
難しい顔をしながら手帳を眺めていると、横からメイがのぞき込んで言った。
「母子手帳……?」
メイは字が読めるらしい。この場でこの手帳を持つには彼女のほうがふさわしいだろうと、メイに手帳を渡した。
ぱらぱらと手帳をめくる。手書きの字で、数字や文字がびっしりと書かれている。
しかし、違和感があった。
日付の進み具合に対して、おそらく大きさや推定体重であろう欄の数字の増加が少ないのだ。
そして字体の違うメモ欄は、日付が進むにつれ文字数を増していく。
ふと、メイがページをめくる手を止めた。
メモ欄らしき欄には、一言。震えた字でこう書かれていた。
「この子たちだけは幸せにする」




