第7話 暗鳴の円卓 黒祓会幹部会議
光さえも侵入を拒む、東京の地下深く。
そこには、地上とは真逆の物理法則が支配する広大な空洞が存在していた。
中央に置かれた巨大な黒石の円卓。その真ん中では、ドロドロとした黒い液体のような「霊の塊」が、心臓のようにドクンドクンと不気味な拍動を繰り返している。
円卓を囲むのは、異形の存在たち。
【黒祓会】の最高幹部、通称「WAR Shock」。彼らこそが、この世の理を書き換え、霊を兵器へと変える諸悪の根源である。
■幹部紹介:五人の「WAR Shock」
円卓に座る五人の幹部。彼らが口を開くたび、空気が物理的な重圧となって押し寄せる。
① 甘美の魔女:シュガリア(砂糖の悪霊)
ドレスの裾から砂糖の粒子を零しながら、椅子に深く沈み込む少女。
能力:快楽依存支配
ターゲットの「幸せ・安心・愛情」といったポジティブな感情を強制的に増幅させ、過剰な幸福感に依存させて精神を内側から溶かす。
本質: 「戦う意味」そのものの破壊。
癖: 自分の指先に溜まった甘い粉を舐め取り、「ねえ、溶けてみる?」と残酷な笑みを浮かべる。
② 暴力の権化:セイユ
全身に太い鎖を巻き付け、常に周囲の空間を重力で押し潰している大男。
能力:純粋戦闘特化
物理、霊体、そして「斬れない」といった概念すらも拳一つで粉砕する。
本質: 「考えない。壊すだけ」。
癖: 常に歯を剥き出しにして笑い、円卓を指先でなぞるだけで石材を粉々に粉砕する。
③ 知将:ミソスープ
穏やかな笑みを絶やさず、常に温かい湯気を纏った漆黒の法衣を着る男。
能力:戦場支配・情報戦
戦況全体を「料理」と捉え、敵の感情を「調味料」として扱うことで、敵の連携を味方の毒に変える。
本質: 状況の最適化と支配。
癖: 常に懐から扇子を取り出し、優雅に仰ぎながら「……隠し味が足りませんね」と呟く。
④ 魔の巣:Nest
全身がボロボロの包帯と影で覆われ、空間に溶け込んでいる不定形の存在。
能力:空間支配
対象を出口のない無限迷宮に閉じ込め、戦うほどに絶望へ沈める。
本質: 帰還不能の領域。
癖: 空間のあちこちに無数の「目」を出現させ、まばたき一つせずに観察を続ける。
⑤ 塩の精霊:ソルト
円卓の末席に座る、透き通るような白銀の髪を持つ少年。魁斗の異父弟。
能力:完全浄化(制御型)
魁斗と同系統の力を持ちながら、それを「選別」として意図的に使いこなす。不要と判断した存在は、一瞬でこの世から消去される。
本質: 魁斗の「完成形」。
癖: 感情を完全に排除した瞳で一点を見つめ、一切の無駄を嫌う。
「実験体《口裂け女》の消失について」
ミソスープが扇子を閉じ、円卓の中央にホログラムを投影した。
そこには、冥の斬撃と、レンの論理的なハックによって霧散していく口裂け女の姿が映し出されている。
「ふぅん……壊されたのね、あれ」
シュガリアが指先を舐め、愉悦に瞳を細めた。
「せっかく“契約”でガチガチにルールを固定してあげたのに。壊し方が無作法だわ」
「“破壊”ではありません。……“無効化”です」
ミソスープが冷静に訂正する。
「特級除霊師・神楽坂冥。そして白城レン。この二名の連携は、我々の“契約”を脅かすバグになりつつあります」
「ガタガタうるせえよ」
セイユが円卓を殴りつけた。衝撃で黒石に亀裂が入る。
「理屈だのルールだの、そんなもんまとめて俺が握り潰してやる。次は俺を出せ」
「いいえ。あなたは“後半”です」
ミソスープは動じない。
「第一刺客には、ぬらりひょんを差し向けました。すでに彼らの“日常”には、毒が回り始めています」
「気づかれない戦いは、嫌いじゃない……」
円卓の影から、ぬらり、と老人のような声が響く。そこにいるのに誰の意識にも残らないバグ。
その時、シュガリアが映像の隅に映る「ある人物」に目を止めた。
「ねえ……これ、なに? この、塩をぶちまけてる無様な男。ゴミかしら?」
映像には、震えながらモップを振るう魁斗の姿。
ミソスープが眉を寄せた。
「解析不能。理論の枠組みに該当しません。ただのイレギュラーか、あるいは――」
「その必要はない」
ソルトが、静かに立ち上がった。
全員の視線が、無機質な少年に集まる。
「彼は“例外”ではない。……未完成なだけだ」
シュガリアが面白そうに身を乗り出す。
「あら、知っているの? その『塩のバカ』のこと」
「当然だ」
ソルトは冷たい風を纏い、氷のような瞳で兄の姿を見つめた。
「彼は私の兄だ」
沈黙。
セイユが「は?」と声を漏らし、Nestの無数の瞳が一斉に開く。
ミソスープですら、初めてその声を揺らせた。
「……血縁、ですか」
「異父だがな。彼は“失敗作”。私は“完成形”。……不純物まみれの彼では、この先の世界には耐えられない。私が、消去する」
シュガリアが、堪えきれないといった様子で高笑いした。
「あら最高! 兄弟殺し! 見てみたいわぁ、その子が絶望して砂糖みたいに溶けるところ」
ミソスープは手帳に筆を走らせ、静かに結論を下した。
「計画修正。……四六死苦魁斗は、観察対象に格上げ。必要に応じて、回収。あるいはソルトによる処刑を許可します」
地下の闇が、より一層深く、重く閉ざされた。
最凶の刺客「ぬらりひょん」が放たれ、冥と魁斗の日常は、音もなく崩れようとしていた。
_____________
WAR Shockは和食から来てます。
5人の幹部は和食の味をきめる。
さしすせそ
砂糖・塩・酢・醤油・味噌から名付けました。




